ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第248話 負けられない戦い(なお練習につき) at 1995/9/25

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「よ……よし! 女だからって手加減なんかしないからな!」

「あらあら、カッコイイことゆーじゃん? かかって来な!」


 カッコイイか、これ。
 むしろ、悪役が口にしそうなセリフ、ベスト5には入りそうなんだが。

 ふと冷静になって客観視してみると、向かい合うように三〇センチメートルの距離で並べられた跳び箱の上にまたがって、柔道の試合よろしくどちらも相手を威嚇するかのように両手を高々と掲げ構えている。その姿はまるで『ドキッ! 丸ごと水着、女だらけの水泳大会』恒例の、水の上の丸太にまたがり、ソフトな棒で相手を殴りつけて落としたら勝ち、の格闘ゲームのようでもあり、真剣なのにどことなく間の抜けた印象が拭えない。誰のアイディアだ、これ。


「あれあれあれー? 口ばっかじゃんか。ぜんぜん手ぇ出してこないし。……びびってんの?」

「ちょ――! ここ、バランス悪いんだって! そういうロコだって、待ちの一手じゃんか!」

「ふーん、こっちから攻めてもいいのー? 一瞬で決まっちゃうよー?」

「はっはーん! そうは行くかって! いくらロコがフィジカルお化けでもだな――」



 ――ひょいっ。



「んー? なんか言った? あら? あたしの手の中に、いつの間にかケンタのハチマキが!」

「んぐぐぐぐぐ! くっそ! もう一回だ! もう一回!!」


 ぽい、とゴミでも捨てるかのように雑な仕草で放り投げられたハチマキをキャッチする。

 いや、いくらなんでも動きが早すぎるだろ……。
 今の、ほとんど目で追えてなかったんだけど!

 今度こそ、と、きっちりとハチマキを締め直し、僕は再び余裕しゃくしゃくのロコを睨んだ。


「うっわ……引くくらい顔がマジなんだけど。でも、そんなもんで怖がると思ったら大間違い」

「うっせ! せいぜいいい気になってるがいいさ! こういうのはムキになった方が負け――」



 またしても――ひょいっ。



「あっれー? おかしいなー? ムキになってるのはケンタの方なんじゃなーい? くすくす」

「かっちーん! あーあ! お前、僕を本気にさせたことを後悔させてやる! ……か、返せ」


 ぺちん、とさらに挑発するかのように、僕の顔目がけてハチマキが投げ返されてきた。

 この時点で僕はまったく冷静ではないし、なんなら悔しさのあまり跳び箱上面のクッション部分をばんばん叩いていた。四〇にもなって……と言われそうだが、相手も四〇なのである。


「こうなったら秘策を使うしかないな……。これだけは最後までとっておきたかったんだけど」


 さっきよりもさらにきつく、締めすぎて脳が耳と鼻から漏れるんじゃあるまいかと思うくらいに念入りにハチマキを締め直した僕に、負ける要素などひとつもない、とロコがうそぶく。


「なーんか真剣みが足りないんじゃなーい? ご褒美のひとつでもあればやる気出るのかしら」

「あーはいはい、言ってろ言ってろ。こう見えて、僕だってこれ以上ないくらい真剣なんだ! だって、もし負けたら、ロコをムロに取られちゃうんだからな! ――!」

「は――はぇ? ………………あぁっ!?」





 ――がしっ!





「よっし! とったどぉおおおおお!!」

「えっ、えっ? ええええええぇー!?」


 まさか本当に、この僕ごときにハチマキを取られるとは思っていなかったのか、顔じゅうを真っ赤に染めて放心状態になったロコは驚きのあまり叫び声をあげている。ざまあみろだ。

 まあ、驚いているのは、無我夢中で手を伸ばしたら取れてしまった僕も同じだ。秘策とか言ってみたものの、別にこれといった作戦なんて何もない。なんとなく言ってみただけである。


「ちょ――ちょっと! 今のは! 今のはナシだからっ! だって……だって……!」

「はーっはっはっはー! 見苦しいぞ、ロコ! これぞ僕の実力だ!」

「ナシったらナシだって! 高笑いしてないで、ハチマキ返しなさ――きゃあああああぁ!」


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