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第247話 特訓はお姫様と at 1995/9/25
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「で……? それでどうしてあたしが呼び出されたのか、もう一度説明してもらってもいい?」
「い、いや、だからさ――」
僕が、まったく仕方ない奴だなぁ、とついさっき口にした言葉を繰り返そうとしたところで、怒ったように唇をとがらせて頬をふくらませたロコはばっさりとそれを断ち切ってみせた。
「違うっつーの! もう一回言えって意味じゃないわよ!? なんであたし? ってことよ!」
興奮気味のロコの叫びに似た声が、僕ら『電算論理研究部』のメンバー以外には誰もいないがらんとした体育館中にこだまする。思わず首をすくめた陰キャ男子たちを睨みつけながら、なおもロコはこう続けた。
「あんたたち、騎馬戦に出るメンバー四人は無事集まれたんでしょ? だったら、男子だけで練習なり、特訓なり、気が済むまで気が済むようにやったらいいじゃないって言ってるのっ!」
「ちょ――そんなに興奮するなって。そりゃ、僕らだけでも練習はできるんだけどさ」
「じゃあ、やればいいじゃんか!」
「い、いや、できるよ? できるんだけど……」
僕はロコの視線にいささか怯みながら、うしろにいる男子部員をちらと振り返る。
「騎馬戦って、四人で騎馬を作って、縦横無尽に動けたら、それでオッケー! って競技じゃないじゃんか。ハカセは軍師役で、その場の状況にあった作戦を立てられる。佐倉君は目が良いし足も速い、いわばレーダーとエンジンだ。シブチンは……まあ、タフで頑丈な壁役だし」
「……僕の扱いだけひどくない、モリケン?」
「探せばもっといいところあるんだろうけど、とっさに思いつかなかったんだって! ……ともかくだな、僕らの騎馬なら他の連中にも引けを取らない自信がある。けど、問題は……僕だ」
「はぁ? ケンタが?」
「自慢じゃないけど、僕は背も大きい方だから、今まで馬役しかやったことがないんだって。でも今回は、僕が上に乗って、敵の将からハチマキを奪い取らなきゃいけない。わかるよな?」
「はぁ……で?」
「はぁ、って……、だ、だからさ、仮想敵との戦い方を特訓しないと! ってことなんだよ」
そこまでちゃちゃを入れながらも辛抱強く耳を傾けていたロコの不満が爆発する。
「だーかーらー! そこでなんであたしにその特訓相手を頼むの、って聞―てんのっ!」
「そ、そりゃだって、ウチの『電算論理研究部』で、一番戦闘力が高いのロコじゃんか」
「あのね……あたし、これでも、今回の『お姫様』役なんだと思うんだけど? 違う?」
「……そうです」
「その『お姫様』に、あなたをお救いするためにぜひ稽古相手になって欲しい! って頼む馬鹿がどこにいるのよ!」
「………………すみません」
「あーもー! ったく、頼りがいのない『騎士』だわねー!? ホント、やんなっちゃう!」
そう言って髪の毛をがしがしと掻きむしったロコだったが、このままでは埒が明かないと思ったのか、渋々歩み出て、手を合わせたお願いポーズをしている僕と対峙するカタチになる。
「で? どうすんの? どうやって特訓とやらをするつもり?」
「やってくれるのか! 助かるよ!」
「やんないと帰れない流れじゃん……」
明かに僕よりテンション駄々下がりのロコは、あらかじめ僕らが用意しておいた二つの向かい合うように置かれている飛び箱の一つに、制服のスカート履きのまま颯爽と飛び乗った。
「ほら、たまたま今日は体育館が空いてる日なんだから、とっとと済ませて帰るわよ」
「よ、よし! よろしくお願いします!」
僕はもう一つの跳び箱に急いでまたがった。
二つの跳び箱の間の距離は、三〇センチメートルもない。これは五十嵐君考案の、仮想騎馬上での戦いを再現するための秘策だ。普通に立ったままでやろうとすると、ただの喧嘩のようになってしまって、実際の騎馬戦でのやりとりとは程遠いものになってしまう。跳び箱にまたがることで下半身の動きを制限し、上半身、それも主に腕捌きだけで相手から頭に巻いたハチマキを奪い取らなければならないこの方法は、確かに理屈にかなっている。
「よし……! じゃあ、はじめるぞ! いつまでも弱い弟子のままだと思うなよ、ロコ!」
「い、いや、だからさ――」
僕が、まったく仕方ない奴だなぁ、とついさっき口にした言葉を繰り返そうとしたところで、怒ったように唇をとがらせて頬をふくらませたロコはばっさりとそれを断ち切ってみせた。
「違うっつーの! もう一回言えって意味じゃないわよ!? なんであたし? ってことよ!」
興奮気味のロコの叫びに似た声が、僕ら『電算論理研究部』のメンバー以外には誰もいないがらんとした体育館中にこだまする。思わず首をすくめた陰キャ男子たちを睨みつけながら、なおもロコはこう続けた。
「あんたたち、騎馬戦に出るメンバー四人は無事集まれたんでしょ? だったら、男子だけで練習なり、特訓なり、気が済むまで気が済むようにやったらいいじゃないって言ってるのっ!」
「ちょ――そんなに興奮するなって。そりゃ、僕らだけでも練習はできるんだけどさ」
「じゃあ、やればいいじゃんか!」
「い、いや、できるよ? できるんだけど……」
僕はロコの視線にいささか怯みながら、うしろにいる男子部員をちらと振り返る。
「騎馬戦って、四人で騎馬を作って、縦横無尽に動けたら、それでオッケー! って競技じゃないじゃんか。ハカセは軍師役で、その場の状況にあった作戦を立てられる。佐倉君は目が良いし足も速い、いわばレーダーとエンジンだ。シブチンは……まあ、タフで頑丈な壁役だし」
「……僕の扱いだけひどくない、モリケン?」
「探せばもっといいところあるんだろうけど、とっさに思いつかなかったんだって! ……ともかくだな、僕らの騎馬なら他の連中にも引けを取らない自信がある。けど、問題は……僕だ」
「はぁ? ケンタが?」
「自慢じゃないけど、僕は背も大きい方だから、今まで馬役しかやったことがないんだって。でも今回は、僕が上に乗って、敵の将からハチマキを奪い取らなきゃいけない。わかるよな?」
「はぁ……で?」
「はぁ、って……、だ、だからさ、仮想敵との戦い方を特訓しないと! ってことなんだよ」
そこまでちゃちゃを入れながらも辛抱強く耳を傾けていたロコの不満が爆発する。
「だーかーらー! そこでなんであたしにその特訓相手を頼むの、って聞―てんのっ!」
「そ、そりゃだって、ウチの『電算論理研究部』で、一番戦闘力が高いのロコじゃんか」
「あのね……あたし、これでも、今回の『お姫様』役なんだと思うんだけど? 違う?」
「……そうです」
「その『お姫様』に、あなたをお救いするためにぜひ稽古相手になって欲しい! って頼む馬鹿がどこにいるのよ!」
「………………すみません」
「あーもー! ったく、頼りがいのない『騎士』だわねー!? ホント、やんなっちゃう!」
そう言って髪の毛をがしがしと掻きむしったロコだったが、このままでは埒が明かないと思ったのか、渋々歩み出て、手を合わせたお願いポーズをしている僕と対峙するカタチになる。
「で? どうすんの? どうやって特訓とやらをするつもり?」
「やってくれるのか! 助かるよ!」
「やんないと帰れない流れじゃん……」
明かに僕よりテンション駄々下がりのロコは、あらかじめ僕らが用意しておいた二つの向かい合うように置かれている飛び箱の一つに、制服のスカート履きのまま颯爽と飛び乗った。
「ほら、たまたま今日は体育館が空いてる日なんだから、とっとと済ませて帰るわよ」
「よ、よし! よろしくお願いします!」
僕はもう一つの跳び箱に急いでまたがった。
二つの跳び箱の間の距離は、三〇センチメートルもない。これは五十嵐君考案の、仮想騎馬上での戦いを再現するための秘策だ。普通に立ったままでやろうとすると、ただの喧嘩のようになってしまって、実際の騎馬戦でのやりとりとは程遠いものになってしまう。跳び箱にまたがることで下半身の動きを制限し、上半身、それも主に腕捌きだけで相手から頭に巻いたハチマキを奪い取らなければならないこの方法は、確かに理屈にかなっている。
「よし……! じゃあ、はじめるぞ! いつまでも弱い弟子のままだと思うなよ、ロコ!」
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