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第259話 波乱ぶくみの運動会(5) at 1995/10/10
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「モリケン、何位だった?」
「ん? 三位だったよ」
「えええ!? 凄いじゃん!!」
「あははは……いつもビリか、よくて後ろから二番目だったからなぁ」
なんとも志の低いハナシだけれど、僕は今さっき終わったばかりの徒競走の結果に十分満足していた。十二人同時に走る徒競走で、三位という結果は自己ベストだ。人数が多いのは、やたらと生徒数の多い我が西町田中学ならではのやむにやまれぬ諸事情という奴のせいである。
「そういえばさ? 部活対抗リレーって、ウチは出なくていいの?」
「いいんだそうだ。人数が少ないし、途中から新設された部活だから、ってさ」
「その分、体力使わなくていいから助かるなぁ……おっと」
渋田はついついポロっと口にしてしまってから、今の失言が小山田の耳に届いていないか恐る恐る周りを見回し、それから、ほっ、と溜息をついた。その安堵の顔が苦々しく変化する。
「はぁーあ。勝負事となるとやたらマジになるの、やめて欲しいよなぁ……」
「勝ちにこだわるからね、ダッチは」
そう口に出してから、はてな? と首をひねる僕。
なぜ、そこまで小山田は勝つことにこだわるのだろうか、と。
そのこだわりは、今回の『小山田組VSイケメングループVS僕』のバトルにも通じるものがあるだろう。相手が僕のような底辺陰キャの小物だろうが、イケメングループのリーダー、室生だろうが、きっとどうでもいいし、どちらの勝利の価値が上とかもないのだろう。
勝つこと――それそのものが目的なのだ。
(理由はなんだ? なにが小山田を駆り立てるんだ? 負けたら……なにがあるってんだ?)
ただの意地やメンツにしては度が過ぎている。思えば、校外学習で鎌倉へ行った時もそうだった。『西中まつり』の時も、謎解きというカタチをとってはいたが、終始小山田が口にしていたのは『負けるわけにはいかねぇ』という勝利への執念から出た言葉だった。そうなのだ。
(うーん……。でも、いくら考えても想像すらできないな……。いつか、聞いてみるとしよう)
一旦忘れよう。
僕は配られたプログラムを熱心に読んでいる佐倉君に尋ねた。
「この後の流れってどんなカンジだったっけ、佐倉君?」
「え、ええと、ですね……」
佐倉君は校舎の二階の、ベランダ側に取りつけられている丸時計と手元を見比べながら言う。
「徒競走はもうすぐ二年生が終わって、三年生まですべて終わるのが一〇時〇〇分の予定です。その後はお昼までに三〇分刻みで四つ競技があって、最後の四つ目が二年生の棒倒しですね」
「ウチの部で出る人、いるっけ?」
「い、いないですよぅ……なにせ、血の気の多い人ばかり集められてる競技ですし――」
合法的に殴ったり蹴ったり、好き放題できる! という物騒な出場理由もあるんだそうだ。
「お昼を食べ終えて、午後の部は十三時からスタートですね! そこからは、だいたい一時間おきに二年生の競技が回ってきますよ? 問題の騎馬戦は……学年対抗リレーの一つ前です」
「セミ・ファイナル・マッチ、ってところか……。ありがとう、佐倉君」
ならば、騎馬戦の模擬練習と最終確認ができるのも、せいぜい午前中いっぱいというところだろう。それを部員のみんなに伝えようとして――ん? ハカセが――五十嵐君がいない?
「ツッキー? ハカセはどこに行ったのか知ってる?」
「え……? ち、ちょっとわかりませんね……どこだろう……?」
水無月さんの浮かべている不安そうな表情が、僕のココロをざわつかせる。
まあそれでも、僕らのハカセこと五十嵐君のことだ。荒事や面倒事に巻き込まれそうになっても『君子危うきに近寄らず』の精神とお得意のアルカイックスマイルでうまくかわすだろう。だが。
「……ちょっと散歩がてら探してくるよ。あ、すれ違いにならないように気を付けないとね」
「ん? 三位だったよ」
「えええ!? 凄いじゃん!!」
「あははは……いつもビリか、よくて後ろから二番目だったからなぁ」
なんとも志の低いハナシだけれど、僕は今さっき終わったばかりの徒競走の結果に十分満足していた。十二人同時に走る徒競走で、三位という結果は自己ベストだ。人数が多いのは、やたらと生徒数の多い我が西町田中学ならではのやむにやまれぬ諸事情という奴のせいである。
「そういえばさ? 部活対抗リレーって、ウチは出なくていいの?」
「いいんだそうだ。人数が少ないし、途中から新設された部活だから、ってさ」
「その分、体力使わなくていいから助かるなぁ……おっと」
渋田はついついポロっと口にしてしまってから、今の失言が小山田の耳に届いていないか恐る恐る周りを見回し、それから、ほっ、と溜息をついた。その安堵の顔が苦々しく変化する。
「はぁーあ。勝負事となるとやたらマジになるの、やめて欲しいよなぁ……」
「勝ちにこだわるからね、ダッチは」
そう口に出してから、はてな? と首をひねる僕。
なぜ、そこまで小山田は勝つことにこだわるのだろうか、と。
そのこだわりは、今回の『小山田組VSイケメングループVS僕』のバトルにも通じるものがあるだろう。相手が僕のような底辺陰キャの小物だろうが、イケメングループのリーダー、室生だろうが、きっとどうでもいいし、どちらの勝利の価値が上とかもないのだろう。
勝つこと――それそのものが目的なのだ。
(理由はなんだ? なにが小山田を駆り立てるんだ? 負けたら……なにがあるってんだ?)
ただの意地やメンツにしては度が過ぎている。思えば、校外学習で鎌倉へ行った時もそうだった。『西中まつり』の時も、謎解きというカタチをとってはいたが、終始小山田が口にしていたのは『負けるわけにはいかねぇ』という勝利への執念から出た言葉だった。そうなのだ。
(うーん……。でも、いくら考えても想像すらできないな……。いつか、聞いてみるとしよう)
一旦忘れよう。
僕は配られたプログラムを熱心に読んでいる佐倉君に尋ねた。
「この後の流れってどんなカンジだったっけ、佐倉君?」
「え、ええと、ですね……」
佐倉君は校舎の二階の、ベランダ側に取りつけられている丸時計と手元を見比べながら言う。
「徒競走はもうすぐ二年生が終わって、三年生まですべて終わるのが一〇時〇〇分の予定です。その後はお昼までに三〇分刻みで四つ競技があって、最後の四つ目が二年生の棒倒しですね」
「ウチの部で出る人、いるっけ?」
「い、いないですよぅ……なにせ、血の気の多い人ばかり集められてる競技ですし――」
合法的に殴ったり蹴ったり、好き放題できる! という物騒な出場理由もあるんだそうだ。
「お昼を食べ終えて、午後の部は十三時からスタートですね! そこからは、だいたい一時間おきに二年生の競技が回ってきますよ? 問題の騎馬戦は……学年対抗リレーの一つ前です」
「セミ・ファイナル・マッチ、ってところか……。ありがとう、佐倉君」
ならば、騎馬戦の模擬練習と最終確認ができるのも、せいぜい午前中いっぱいというところだろう。それを部員のみんなに伝えようとして――ん? ハカセが――五十嵐君がいない?
「ツッキー? ハカセはどこに行ったのか知ってる?」
「え……? ち、ちょっとわかりませんね……どこだろう……?」
水無月さんの浮かべている不安そうな表情が、僕のココロをざわつかせる。
まあそれでも、僕らのハカセこと五十嵐君のことだ。荒事や面倒事に巻き込まれそうになっても『君子危うきに近寄らず』の精神とお得意のアルカイックスマイルでうまくかわすだろう。だが。
「……ちょっと散歩がてら探してくるよ。あ、すれ違いにならないように気を付けないとね」
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