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第258話 波乱ぶくみの運動会(4) at 1995/10/10
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「……ずいぶんと仲良さそうに、二人で何を話してたのカナー!?」
「ま――待って! ちょっと待ってくださいっ、スミちゃん様ぁ!」
ずびしっ! ずびしっ! と、いつもの数倍も鋭く研ぎ澄まされた純美子の白魚のようなたおやかな指によって構成された手刀という名の凶器が、幾度も僕の脇腹に突き刺さりまくっている。
「大したハナシじゃないってば! ホント、怒るようなこととかなにもないんだってー!」
「別にスミは、怒ってなんかないよー? ホントだよー?」
「だ、だって! 痛っ! 怒ってるじゃん絶対! 痛っ!」
肝心の桃月はすでにいなくなっていて、まさか桃月にまでフラグ立ったの!? とか、ほんのちょっぴり――ホントのホントに砂粒レベルで――思いかけていた僕に天罰が下ったらしい。
さすがに大声を出してしまうと、底辺陰キャがいちゃいちゃはしゃぎやがって、という空気が凄いので、周りから見れば一人で椅子の上でひっきりなしに飛び跳ねているヤバい奴である。
「白状したら楽になるカナー?」
「は、白状って……痛っ! ホントだってばぁー! ダ、ダッチと桃月のハナシとかだって!」
「ん? ……小山田君のこと? どんな?」
はぁはぁ。
ようやく純美子の猛攻は収まったようだ。アバラの間とか、絶対人体の急所だと思う。うん。なんとか一息つくことができた僕は、息も絶え絶えになりつつ、今聞いたハナシを聴かせた。
「えっ……! それって……!」
「ね? 変なハナシとかじゃなかったでしょ?」
「っていうか、それ……」
「まあ、むしろそっちの方がよっぽど変なハナシ、か」
今僕の口を借りて聞かされたハナシがかなりショッキングだったらしく、純美子は黙り込む。
「……でもさ? それってたぶん、好きだったからなんじゃないかな、って僕は思うんだ」
「好き……だからいじめるの?」
信じられないという表情を純美子はしてみせたが――ほら、さっきの、とは言わずにおこう。
僕は、徐々にではあったけれど、ようやっと『小山田徹』という不器用で素直に生きることができない少年の本質に、ほんの一歩だけ、近づけた気がしていたのだ。
うん、とうなずき続ける。
「きっとホントはそうじゃなかったんだ。でも……どうしたらいいのかわからなかったんだよ」
「そんなの……伝わらないよ?」
「だろうね。そして、今も伝わってない」
「……え? 今も、ってどういう意味?」
「あ……い、いや、こっちのハナシ」
純美子にも『西中まつり』での占いのことは黙っておいた方がいいだろう。あの時桃月が、誰との仲を占ったのか、ということは。
「……でも、ちょっぴり不思議かも」
純美子は切なそうな哀しそうな表情をして自分の靴先に視線を落とした。
「あんなにいつも仲良さそうに一緒にいるじゃない? でも、そんなことがあったなんて……」
「確かに僕も、そこがちょっとわかんないんだよなぁ……」
もしも自分のことだったなら、自分をいじめていた奴なんかと一緒にいるのはごめんだ。
いじめは今も続いているのだろうか。もしもそれが何かのきっかけでキレイさっぱりなくなったとしても、僕だったなら過去にそんなことがあった奴と一秒たりとも一緒になんていたくない。でも、小山田と桃月のカンケイは違うってことだ。そうじゃない。そうじゃなかった。
(僕にはさっぱりカンケイないハナシなんだけどな……なんとなく気になるんだよなぁ……)
これが、オトナになった、ということなのだろうか。
あれほど嫌いで苦手で仕方なかった小山田のことが、今の僕は、無性に気になって仕方なかったのであった。
「ま――待って! ちょっと待ってくださいっ、スミちゃん様ぁ!」
ずびしっ! ずびしっ! と、いつもの数倍も鋭く研ぎ澄まされた純美子の白魚のようなたおやかな指によって構成された手刀という名の凶器が、幾度も僕の脇腹に突き刺さりまくっている。
「大したハナシじゃないってば! ホント、怒るようなこととかなにもないんだってー!」
「別にスミは、怒ってなんかないよー? ホントだよー?」
「だ、だって! 痛っ! 怒ってるじゃん絶対! 痛っ!」
肝心の桃月はすでにいなくなっていて、まさか桃月にまでフラグ立ったの!? とか、ほんのちょっぴり――ホントのホントに砂粒レベルで――思いかけていた僕に天罰が下ったらしい。
さすがに大声を出してしまうと、底辺陰キャがいちゃいちゃはしゃぎやがって、という空気が凄いので、周りから見れば一人で椅子の上でひっきりなしに飛び跳ねているヤバい奴である。
「白状したら楽になるカナー?」
「は、白状って……痛っ! ホントだってばぁー! ダ、ダッチと桃月のハナシとかだって!」
「ん? ……小山田君のこと? どんな?」
はぁはぁ。
ようやく純美子の猛攻は収まったようだ。アバラの間とか、絶対人体の急所だと思う。うん。なんとか一息つくことができた僕は、息も絶え絶えになりつつ、今聞いたハナシを聴かせた。
「えっ……! それって……!」
「ね? 変なハナシとかじゃなかったでしょ?」
「っていうか、それ……」
「まあ、むしろそっちの方がよっぽど変なハナシ、か」
今僕の口を借りて聞かされたハナシがかなりショッキングだったらしく、純美子は黙り込む。
「……でもさ? それってたぶん、好きだったからなんじゃないかな、って僕は思うんだ」
「好き……だからいじめるの?」
信じられないという表情を純美子はしてみせたが――ほら、さっきの、とは言わずにおこう。
僕は、徐々にではあったけれど、ようやっと『小山田徹』という不器用で素直に生きることができない少年の本質に、ほんの一歩だけ、近づけた気がしていたのだ。
うん、とうなずき続ける。
「きっとホントはそうじゃなかったんだ。でも……どうしたらいいのかわからなかったんだよ」
「そんなの……伝わらないよ?」
「だろうね。そして、今も伝わってない」
「……え? 今も、ってどういう意味?」
「あ……い、いや、こっちのハナシ」
純美子にも『西中まつり』での占いのことは黙っておいた方がいいだろう。あの時桃月が、誰との仲を占ったのか、ということは。
「……でも、ちょっぴり不思議かも」
純美子は切なそうな哀しそうな表情をして自分の靴先に視線を落とした。
「あんなにいつも仲良さそうに一緒にいるじゃない? でも、そんなことがあったなんて……」
「確かに僕も、そこがちょっとわかんないんだよなぁ……」
もしも自分のことだったなら、自分をいじめていた奴なんかと一緒にいるのはごめんだ。
いじめは今も続いているのだろうか。もしもそれが何かのきっかけでキレイさっぱりなくなったとしても、僕だったなら過去にそんなことがあった奴と一秒たりとも一緒になんていたくない。でも、小山田と桃月のカンケイは違うってことだ。そうじゃない。そうじゃなかった。
(僕にはさっぱりカンケイないハナシなんだけどな……なんとなく気になるんだよなぁ……)
これが、オトナになった、ということなのだろうか。
あれほど嫌いで苦手で仕方なかった小山田のことが、今の僕は、無性に気になって仕方なかったのであった。
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