ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第272話 波乱ぶくみの運動会(18) at 1995/10/10

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(う……ん……?)


 規則的な振動に、かえでの意識は徐々に覚醒していた。


(え………………も、もしかして僕、気を失ってたんです……?)


 はっ、と身じろぎした瞬間、身を預けていた背中が言った。


「……起きたかい、佐倉君?」

「あ……古ノ森、リーダー……」

「あのさ……ごめんな、守ってあげられなくて……」

「い、いえいえいえ! そ、そんな!」



 なんのことを言っているんだろう?

 
 



「小山田も、このことは知らなかったみたいだ。ひどく慌てていて、佐倉君のこともすごく心配していたよ。どうやら吉川あたりの悪い連中が、勝手に仕組んだことらしくってさ――」

「そ、そうなんですね………………い、痛っっっっっ!」


 突然、ぷらぷらと揺れていた左足が古ノ森のカラダのどこかをかすめたらしく、鋭く重い痛みが全身を駆け抜け、思わずおんぶされたままの体勢でエビのように、びくり、と跳ねた。


「あ、ご、ごめんごめん! ……骨折はしてなさそうなんだけど、かなりひねっちゃってるみたいなんだよ。アイツらが、佐倉君がバトンを受ける時を狙ってスパイクしたみたいなんだよね」


 そう言って古ノ森は、おんぶしているかえでのカラダをなるべくそおっと背負い直した。


「もうすぐ保健室に着くからね。すぐに手当てをしよう。そうすれば、きっとひどくならない」

「……き、騎馬戦はどうするんです?」



 古ノ森はなぜか答えない。
 物言わぬ背中に、かえではもう一度声を荒げて問いかけた。



「ぼ、僕たちの騎馬戦はどうなるんです!? 僕が抜けたら、今まで練習してきた成果が――」

「………………いいんだって、もう」

「ち、ちっとも! よくなんて! ないですっ!! お、降ろして――降ろしてくださいっ!」

「ダメだよ、佐倉君。それだけは聞いてあげられない」

「お、降ろして――お、降ろせ――――――!!」


 かえでは必死に古ノ森の背中に拳を振り下ろした。

 尋常じゃないチカラが込められた拳だ。喧嘩なんて一度もしたことはなかったが、テニスで鍛えた腕力だ、半端ではない。だが、それでも古ノ森は断固としてかえでのカラダを降ろそうとはせず、次々と容赦なく叩きつけられる拳を黙って受け続けた。

 かえではたまらず吼える。


「降ろせ――降ろしてくださいよ! だって、これじゃあなんのためにがんばったのか――!」

「もう……十分だから。もう伝わったからさ」

「言いましたよね!? 僕は、おとこの中のおとこになりたいんです! 大切な人を守れる強い漢に!」

「もう……君は漢さ。誰にも負けない漢だよ」

「だったら――!!!!」

「――それでも、だ」


 かえでの激しい口調を戒めるように、古ノ森は優しく、ひたすら優しく言葉を差し挟んだ。


「僕らは、。僕らは、君からテニスを奪い取ることなんてできないから」

「ぼ……僕の人生は、僕がどうするか決めます! たとえこれが原因で足を故障したって――」

「……ごめんな、佐倉君。本当に………………すまない」





 次の瞬間――。

 古ノ森の手がかえでの痛めた左足に優しく触れ、そして――





「――――――っ!!!!!」


 唐突な鋭くとがった痛みに声も出せないまま、かえでの意識は一瞬で遮断されたのだった。


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