ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

文字の大きさ
274 / 539

第273話 波乱ぶくみの運動会(19) at 1995/10/10

しおりを挟む
「どう……だった、かえでちゃんの容態ようだいは?」

「!? ……ロコか。おどかすなよ」


 僕自身の気持ちが沈んでいたせいもあるのだろう。不意に昇降口で声をかけられた僕は、不必要にどきりとしてしまい、ごまかすように大袈裟なリアクションでこたえた。それから言う。


「保険室の鈴白センセイの見立てでは、やっぱり捻挫ねんざだけで骨折まではしていないだろう、ってことだったよ。けど、無理を言って、病院で検査を受けさせてもらうようお願いしておいた」

「そっか……。でも、よかった」

「……最後まで佐倉君は、ロコを守るためなら怪我なんて、って抵抗してたよ」

「そっか……」


 さすがに僕も堪えたのだろう。今すぐ戻る気にもなれず、スニーカーに履き替えた足はその場に貼り付いたように動かない。ついに、細く長く溜息を吐いてその場に座り込んでしまった。


「大丈夫、ケンタ?」

「……大丈夫なわけないだろ」


 僕は隣に寄り添うように座るロコの問いかけを一蹴する。


「僕らのせいで、僕らがこの時代にタイムリープしたせいで、んだ……。佐倉君から、大好きなテニスを奪い取るところだったんだ……くそっ!」


 僕は背を丸めて座り込んだ足の間に、とげとげしい言葉を吐き捨てる。


「僕らが来なければ、きっと起こらなかったことだ! 僕らと出会わなければ、みんな平和で静かに暮らせていたのに! 僕らの身勝手なエゴのせいで、五十嵐君や佐倉君に……くそっ!」

「……でもさ、ケンタ?」


 僕の右肩の上に、ふわり、とやわらかなポニーテールがのせられ、はっ、とする。


「その人生を選んだのは、ケンタじゃないよ。ケンタがみんなに押しつけたんじゃない。ハカセもかえでちゃんも、みんな自分の意思で選んだんだよ? そうなりたい、そうしたい、って」

「そう……かもしれない。けど――!」



 ロコのセリフにうなずくのはカンタンだっただろう。
 ココロの底からそう思えたのなら、どんなに楽だっただろう。

 しかし、どうしても許せない、自分を許せない気持ちが膨れ上がっていくのを止められない。



 けれど、その迷いを祓うようにポニーテールが、とん、とん、と僕の肩を叩く。


「そうかも、じゃないの。そうなんだよ? それに、みんなその選択を楽しんでるじゃない? 誰ひとり、後悔なんてしてないし、これからもしないと思う。ケンタはチャンスをあげただけ」

「チャンスを……あげただけ?」

「そ。ツッキーに言ったこととおんなじ」


 とん――ポニーテールはうなずいてこう続けた。


「変わりたい、って望めば、誰でも変われるんだって。その、ほんのちょっぴりの手助けを、ケンタがしてあげたってだけなんだ。その結果は、それぞれがきちんと背負う。それでいいの」

「それで……いいのかな?」

「いいの。冒険に、危険はつきもの、でしょ? だからこそ、ステキで、楽しいんじゃない!」

「……そんなもんか?」

「そんなもんなの!」


 いつまでもぐずぐずはっきりしない僕の態度にしびれを切らしたロコは、肩の上で飛び跳ねるようにして僕に顔を向ける。横を向くと、もう鼻と鼻がこすりあうほどの近さで見つめていた。



 思わず――どきり――とした。

 息が――止まる。
 心臓が――跳ねる。



 その僕をますます落ち着かない気持ちにさせる、真夏の向日葵ひまわりのような笑顔は僕に囁くのだ。


「あんたはみんなのヒーローなの! 先輩ヒーローのあたしが言うんだから間違いないって!」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...