ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第277話 恒例のアレ(中間テスト向け) at 1995/10/13

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 そして金曜日。

 いつものように『電算論理研究部』の部室に集まった僕らだったが、目的は部活ではない。

 そう、もはや恒例となったテスト前の勉強会のためだ。


「しっかし……運動会にさんざん時間割いといて、もう来週の水曜からは中間テストって……」

「うーん……一応、テスト勉強期間は一週間あるから、ってことなんじゃないの、ケンタ君?」

「いや、そうなんだけどね」


 さほど大きくないちゃぶ台の反対側で、五十嵐君を中心に、ああでもない、こうでもない、と熱い議論を交わしている仲間たちを一瞥いちべつする。その中心にあるのは、社会科の教科書だ。


「一部授業が運動会練習に変更されたせいで、まだやってない範囲が出るってどうなんだ……」

「ああ! 古ノ森リーダー! ちょうど良かったです。ここのことなのですが――?」

「はいはい――うん――うんうん――い、いや――たぶん、その考え方で大丈夫だと思うよ」


 さすがの頭脳明晰な五十嵐君も判断につきかねて、暇そうな僕にアドバイスを求めてきた。それに迷うことなくこたえる僕を見て、純美子はくすくすと笑っている。


「笑いごとじゃないんだってば、スミちゃん。イキナリ振られるこっちの身にもなって欲しい」

「あ。それで笑ってたんじゃないよ? あたしの彼氏クンって、頼れる部長さんなんだなって」

「だったら! 余計に、なんで笑うのさ、もー……」

「だってね?」


 純美子は一人一人を順番に眺めてから、もう一度僕の顔を見つめて笑ってみせた。


「このクラスに決まった四月には、こんな風ににぎやかに過ごしてるだなんて思っていなかったんだもの。みんな、それぞれひとりぼっちで、顔を見かけてもかろうじて挨拶するかしないか、ってくらいの仲。それを、ケンタ君が変えちゃったんだよ? キミ一人のチカラでね?」

「それは……違うよ、スミちゃん」


 僕はとぼけた表情を浮かべ、肩をすくめながら首を振った。


「僕に、この僕に、そんな大それたチカラなんてない。僕は、みんなのココロの声を聴いただけだから。こうなりたい、ああしたい、こうしたい……そういう声を聴いて、みんなのための場所ときっかけと、ほんのちょっぴりのチャンスを作っただけなんだ。それだけのことだって」

「またまた。カッコいいセリフ、言っちゃって、もー」

「あは。わかっちゃった? 今思いついたんだよねー」





 ――ばしぃん!!

 突如、窓際の文机の上に、てのひらが思いきり叩きつけられて、部室の中が静まり返った。





「……うるさい。勉強の邪魔だから」


 ロコだ。
 長年の付き合いである僕ですら、生まれてこの方見たことのない真剣な表情をしている。


「ご、ごめんな、ロコ……そ、そんなに怒らなくってもさ……」

「別に怒ってない。もうちょっとで解けそうなところで、ちょっとイラついちゃっただけだし」

「そ、そっか。ご、ごめん……」


 僕が謝るより早く、ロコは元の姿勢に戻って、顔をしかめて目の前の問題を睨みつけている。僕と純美子は慌てて緊急ひそひそ会議をはじめることにした。


(……おいおいおい。大丈夫か、アレ? ロコが誰にも言われず、誰にも聞かずに勉強してる)

(ケ、ケンタ君、馬鹿にしすぎじゃない? でも、確かに珍しいかも。なんかあったのかな?)

(なんかって……むしろ心配なのは病気とかじゃないか? どこかで頭打ったりしたとか……)



 と、次の瞬間。



「しゃぁあああああっ!! 解けたぁあああああっ!!」

「うわびっくりしたっ! ……やるな、ロコ、ひとりで解いたのか! ん? どれどれ……?」

「うひひー、最後の横の八が埋まらなくってさ! で、閃いたの! 『』だって!」

「お前……っ! クロスワードパズルやってないで、勉・強・し・ろ・よ・っ・! 馬・鹿・娘・っ!」


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