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第278話 月夜の邂逅(1) at 1995/10/14
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『お前と上ノ原広子、二人きりでこれから言う場所に、今夜来られるか――?』
突如鳴り響いたスマホから聴こえたのは、時巫女・セツナの堅く張り詰めたセリフだった。
「……わかった。なんとかしてみる」
僕は、このところ『リトライ』対策で毎週土曜日に必ず二人きりで会う時間を作るようになったロコと目くばせをしてうなずきあい、答えた。そして、渋い顔をしてこう付け加える。
「けどな? なんでそんな遅い時間なんだよ? 中学生のがきんちょに、夜の一〇時に家を抜け出してこい、ってのは結構無理な注文だと思わないのか? だいたい、お前の方だって――」
『わかっている。しかし、こうでもしなければ、お前たちには直接会うことができないのだよ』
「お、おい……今、直接――会う、って言ったのか!?」
さすがの僕も驚きを隠せない。もう一度隣に並んで座っているロコの方を見たが、ロコはロコで、緊張のためか警戒心の表れか、固く引き締められた怒ったような表情をしていた。
無理もない。
ロコにとっての『時巫女・セツナ』とは、かつての『敵対者』であり、この『リトライ』を引き起こした黒幕だったのだから。今でこそすべては誤解だったのだと訂正・上書きされていようとも、かつてそうだったのだ、という『記憶』と『意識』までが消えるわけではない。
それが、まさかあの子だと知ったらロコは――。
そう思ったらとっさに言葉が飛び出してきた。
「あ、あのな、ロコ――?」
『……やめろ、古ノ森健太。それは直接会った時に、私の口から言いたい。言わねばならない』
鋭く制されても僕は止まれない。二人のために。
「い、いや! し、しかし、だな――!」
『覚悟は……できている』
「お前……」
『覚悟』とまで言われてしまったら、僕だって手出しができなくなる。思わず口から溜息が漏れた。チカラなく首を振りつつ、ふと浮かんだ疑問をぶつけてみる。
「わかったよ、この頑固者め。僕はどうなっても知らないからな。……でもだな? どうしてそれほどのリスクを負ってまで、僕たちに直接会おうって言い出したんだ? 教えてくれよ?」
しばしの沈黙。
『もう、時間がないからだ』
「お、お前、それってまさか!?」
『……会った時に話す。ハナシは以上だ――』
そうして、一方的に通話は途切れてしまったのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
時巫女・セツナが指定してきたのは、咲山団地群の中にぽっかりと広がった緑地だった。
木曽根と咲山をつなぐ大規模な横断歩道橋がスーパー『三徳』へとつながる地点、その咲山団地商店街のはじまる場所から、計画道路の上にかけられた忠生の方へと続く橋に至るまでの小道がそれである。
途中、七つばかりの岩が円形状に並べられていることから、一部の住民からは『ストーンヘンジのある公園』と呼ばれることもあるようだ。
予想していた通り、水無月さんたち一家の暮らす3ー3号棟からは、歩いて五、六分程度だ。
(ホントにこんなところまで来れるのか、アイツ…?)
その東西に広がった緑地の端に、幼稚園がある。その前に立っている電話ボックスで待つ。狭い空間にロコと二人で入り込んでしまうと、突如、りん、と電話が鳴り響いた。
『……本当に来てくれたのだな。では、こちらもすぐ向かうとしよう。しばし待っておれよ』
突如鳴り響いたスマホから聴こえたのは、時巫女・セツナの堅く張り詰めたセリフだった。
「……わかった。なんとかしてみる」
僕は、このところ『リトライ』対策で毎週土曜日に必ず二人きりで会う時間を作るようになったロコと目くばせをしてうなずきあい、答えた。そして、渋い顔をしてこう付け加える。
「けどな? なんでそんな遅い時間なんだよ? 中学生のがきんちょに、夜の一〇時に家を抜け出してこい、ってのは結構無理な注文だと思わないのか? だいたい、お前の方だって――」
『わかっている。しかし、こうでもしなければ、お前たちには直接会うことができないのだよ』
「お、おい……今、直接――会う、って言ったのか!?」
さすがの僕も驚きを隠せない。もう一度隣に並んで座っているロコの方を見たが、ロコはロコで、緊張のためか警戒心の表れか、固く引き締められた怒ったような表情をしていた。
無理もない。
ロコにとっての『時巫女・セツナ』とは、かつての『敵対者』であり、この『リトライ』を引き起こした黒幕だったのだから。今でこそすべては誤解だったのだと訂正・上書きされていようとも、かつてそうだったのだ、という『記憶』と『意識』までが消えるわけではない。
それが、まさかあの子だと知ったらロコは――。
そう思ったらとっさに言葉が飛び出してきた。
「あ、あのな、ロコ――?」
『……やめろ、古ノ森健太。それは直接会った時に、私の口から言いたい。言わねばならない』
鋭く制されても僕は止まれない。二人のために。
「い、いや! し、しかし、だな――!」
『覚悟は……できている』
「お前……」
『覚悟』とまで言われてしまったら、僕だって手出しができなくなる。思わず口から溜息が漏れた。チカラなく首を振りつつ、ふと浮かんだ疑問をぶつけてみる。
「わかったよ、この頑固者め。僕はどうなっても知らないからな。……でもだな? どうしてそれほどのリスクを負ってまで、僕たちに直接会おうって言い出したんだ? 教えてくれよ?」
しばしの沈黙。
『もう、時間がないからだ』
「お、お前、それってまさか!?」
『……会った時に話す。ハナシは以上だ――』
そうして、一方的に通話は途切れてしまったのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
時巫女・セツナが指定してきたのは、咲山団地群の中にぽっかりと広がった緑地だった。
木曽根と咲山をつなぐ大規模な横断歩道橋がスーパー『三徳』へとつながる地点、その咲山団地商店街のはじまる場所から、計画道路の上にかけられた忠生の方へと続く橋に至るまでの小道がそれである。
途中、七つばかりの岩が円形状に並べられていることから、一部の住民からは『ストーンヘンジのある公園』と呼ばれることもあるようだ。
予想していた通り、水無月さんたち一家の暮らす3ー3号棟からは、歩いて五、六分程度だ。
(ホントにこんなところまで来れるのか、アイツ…?)
その東西に広がった緑地の端に、幼稚園がある。その前に立っている電話ボックスで待つ。狭い空間にロコと二人で入り込んでしまうと、突如、りん、と電話が鳴り響いた。
『……本当に来てくれたのだな。では、こちらもすぐ向かうとしよう。しばし待っておれよ』
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