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第287話 誰が猫の首に鈴をつけるか? at 1995/10/21
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「タツヒコをどうにかする方法、ねぇ……」
僕のハナシを黙って聞いていたロコが、開口一番に言ったのはそんな呆れセリフだった。
「まーた、余計なトコロに首ツッコもうとしてるんじゃないの、ケンタ?」
「あははは……かも、しれないな」
――毎週土耀に行われる『リトライ者』定例会議。
時巫女・セツナ=コトセは、事情が事情だけに、参加できる時とできない時があるのだけれど――まあ、どちらにしてもスマホ越しの音声だけなのだが――場所に関しては、土曜日も仕事で両親が家を空けていることもあって、僕の家とロコの家を交代で使うようにしている。一応断っておくが、これはロコからの提案だ。おかげで部屋の掃除が面倒で面倒でたまらない。
『奴は極めて厄介な少年だな。行動に一貫性がなくて読めない……』
「だろ? そうなんだよ、セツ――コトセ。行き当たりばったりというか、衝動的というか」
『しかし、なぜ奴を排除する必要がある? その必要性について説明できるのか、古ノ森?』
「ケンタ、で良いって」
あいかわらず堅苦しい口調のコトセにやんわりと釘を刺す。まあ、僕も僕で『コトセ』と呼ぶことには、まだしばらくなれそうにないんだけど。
「……必要かどうかと問われれば、正直どっちでもいいんだろうな。けどね? あいつ――タツヒコがいる限り、僕らのスクール・ライフは、殺伐とした曇天模様のままだと思わないか?」
「そうだけど……。かといって、サクッと始末しちゃう! とかできるわけじゃないでしょ?」
「い、いやいやいや! さすがにそんな大それたことは考えてないから! 阿呆か!」
『む? そうなのか? いくつか思い当たったのだが……聞くだけ聞いてみるかね?』
「おいおいおい。思い当たるなよ……」
こいつらの頭の中はどうなってるの?
めちゃめちゃ恐いんだけど……。
僕はただ、どうしても小山田徹という不器用でひねくれた少年のことを見捨てる気になれないだけだ。だがしかし、このふたりにそれをカミング・アウトしたところで、僕の方の頭の具合を心配されるだけだろう。なにせ、僕とは目下敵対関係にある派閥のリーダーなのだから。
なにより僕が引っかかっていたのは、僕の記憶の片隅にあった、小山田徹の頼れるリーダーとしての姿だった。しかし、ロコにそのことを打ち明けると、困惑しきった顔付きを返された。
「はぁ? あのダッチが? 少なくとも、あたしにはそんな記憶ないんだけど……」
「あ、あれ? そ、そうなの? おかしいな……?」
コトセの言葉を鵜呑みにするのなら、僕とロコの『リトライ』は今回がはじめてのはずだ。であるならば、僕の持っているその『かすかな記憶』は、現実に過去体験した事実に基づくものであるはずなのだ。
(あれほど毛嫌いしていた小山田に、この僕がそんなおかしな幻想を抱くワケもないし……)
嫌な記憶がフラッシュ・バックすることはあっても、過度に美化された虚像を作り上げ、自らを騙して事実を歪めてしまうほどの甚大な精神的外傷を負わされたワケでもない。いたって僕は正常だ、と、少なくとも自分自身ではそう思っている。
(なら、それは小山田と同じクラスだった、この一年間で起こった出来事に起因するはずだ)
(それはつまり、残り五ヶ月ちょっとの期間の中の、どこかで絶対に起きるはずのことなんだ)
しかし、わからないのであれば、今はただ、その時を待つしかない。
『しかしだな? 極めて難しいぞ、古ノ森。奴には、チカラも正攻法も、小細工も通用しない』
「だよなぁ……。センセイたち、オトナが抑止力になるわけでもないしなぁ……」
なにかうまい手は……と頭をフル回転させようかと思った矢先に、ひとつの考えが浮かんだ。
「そっか……」
「ん?」
「僕らの誰も、タツヒコのことをよく知らない。まずはあいつの理解者を探してみるか」
僕のハナシを黙って聞いていたロコが、開口一番に言ったのはそんな呆れセリフだった。
「まーた、余計なトコロに首ツッコもうとしてるんじゃないの、ケンタ?」
「あははは……かも、しれないな」
――毎週土耀に行われる『リトライ者』定例会議。
時巫女・セツナ=コトセは、事情が事情だけに、参加できる時とできない時があるのだけれど――まあ、どちらにしてもスマホ越しの音声だけなのだが――場所に関しては、土曜日も仕事で両親が家を空けていることもあって、僕の家とロコの家を交代で使うようにしている。一応断っておくが、これはロコからの提案だ。おかげで部屋の掃除が面倒で面倒でたまらない。
『奴は極めて厄介な少年だな。行動に一貫性がなくて読めない……』
「だろ? そうなんだよ、セツ――コトセ。行き当たりばったりというか、衝動的というか」
『しかし、なぜ奴を排除する必要がある? その必要性について説明できるのか、古ノ森?』
「ケンタ、で良いって」
あいかわらず堅苦しい口調のコトセにやんわりと釘を刺す。まあ、僕も僕で『コトセ』と呼ぶことには、まだしばらくなれそうにないんだけど。
「……必要かどうかと問われれば、正直どっちでもいいんだろうな。けどね? あいつ――タツヒコがいる限り、僕らのスクール・ライフは、殺伐とした曇天模様のままだと思わないか?」
「そうだけど……。かといって、サクッと始末しちゃう! とかできるわけじゃないでしょ?」
「い、いやいやいや! さすがにそんな大それたことは考えてないから! 阿呆か!」
『む? そうなのか? いくつか思い当たったのだが……聞くだけ聞いてみるかね?』
「おいおいおい。思い当たるなよ……」
こいつらの頭の中はどうなってるの?
めちゃめちゃ恐いんだけど……。
僕はただ、どうしても小山田徹という不器用でひねくれた少年のことを見捨てる気になれないだけだ。だがしかし、このふたりにそれをカミング・アウトしたところで、僕の方の頭の具合を心配されるだけだろう。なにせ、僕とは目下敵対関係にある派閥のリーダーなのだから。
なにより僕が引っかかっていたのは、僕の記憶の片隅にあった、小山田徹の頼れるリーダーとしての姿だった。しかし、ロコにそのことを打ち明けると、困惑しきった顔付きを返された。
「はぁ? あのダッチが? 少なくとも、あたしにはそんな記憶ないんだけど……」
「あ、あれ? そ、そうなの? おかしいな……?」
コトセの言葉を鵜呑みにするのなら、僕とロコの『リトライ』は今回がはじめてのはずだ。であるならば、僕の持っているその『かすかな記憶』は、現実に過去体験した事実に基づくものであるはずなのだ。
(あれほど毛嫌いしていた小山田に、この僕がそんなおかしな幻想を抱くワケもないし……)
嫌な記憶がフラッシュ・バックすることはあっても、過度に美化された虚像を作り上げ、自らを騙して事実を歪めてしまうほどの甚大な精神的外傷を負わされたワケでもない。いたって僕は正常だ、と、少なくとも自分自身ではそう思っている。
(なら、それは小山田と同じクラスだった、この一年間で起こった出来事に起因するはずだ)
(それはつまり、残り五ヶ月ちょっとの期間の中の、どこかで絶対に起きるはずのことなんだ)
しかし、わからないのであれば、今はただ、その時を待つしかない。
『しかしだな? 極めて難しいぞ、古ノ森。奴には、チカラも正攻法も、小細工も通用しない』
「だよなぁ……。センセイたち、オトナが抑止力になるわけでもないしなぁ……」
なにかうまい手は……と頭をフル回転させようかと思った矢先に、ひとつの考えが浮かんだ。
「そっか……」
「ん?」
「僕らの誰も、タツヒコのことをよく知らない。まずはあいつの理解者を探してみるか」
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