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第304話 襲撃(3) at 1995/10/30
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「おぉおおおう! おっ!? おう!?」
僕と小山田が身をかわした直後、視界がまるでスローモーションの映像のように感じられた。
僕の左手と小山田の右手がしっかりと握っているのは、僕のブレザーの袖。その両端をしっかりと握ったまま、僕と小山田はタツヒコの突進をすんでのところでかわす。
その結果――。
「んぐっ!?!?」
即席のワイヤートラップが見事にタツヒコの顔面を捕らえ、彼のカラダは急制動をかけられてその場で宙を舞った。アクセルを放され操舵手を失った原動機付自転車は、よろよろとよろめきながらグラウンド端のフェンスに激突して横倒しになる。
それまでの短い時間で僕は、後頭部から地面に叩きつけられたタツヒコのカラダにのしかかるようにして動きを封じていた。憤懣やるかたない小山田が僕のカラダを押し退けて腹立ちまぎれの一撃を喰らわせようとするが――僕がおおいかぶさったのはそれも計算してのことだ。
「くっそ! どけっ! どけってんだよ! ナプキン王子!」
「ちょ! ちょっとやめてってば! せっかく捕まえたのに逃げられちゃうって!」
「てめぇ……邪魔すんなって――!」
小山田は怒りの行き場を失って、まだ手にしていた破れかけてところどころほつれてしまった僕のブレザーを放り投げて喰ってかかってきた。あーあ、あれ、直して着れるのかな……。
我慢の限界を超えた小山田は、ついに足元にちょうどよく転がっているタツヒコの頭を――。
「そこまでにしろ! お前ら、何やってる! 赤川! 小山田!」
「よぉう、梅田のおっさーん。ちょっと遅いんじゃねぇの? あやうくこいつらによぉ――」
「ち――っ……」
他の騒ぎをあらかた鎮圧した梅田センセイが現れたおかげで、幸か不幸か、小山田が自慢の右足で華麗なシュートフォームを披露することはなかった。しかし、小山田はそれ以上に失望した表情を浮かべていた。何もしていないのに、また俺まで――そう小山田は思っている。
が、それは違う。
今回に限っては。
「あ……えっと、梅田センセイ? ダッチ――小山田君は、クラスのみんなを助けるために、僕に協力してくれただけなんですよ。誰も殴ってなんかいないし、暴力も振るってません」
「そうか。ええと……お前は古ノ森だな? 保健委員の」
「は、はい。そうです、古ノ森です」
僕は手早く梅田センセイに今の経緯を説明した。一度は差し出された梅田センセイの手が引き戻されるさまを、小山田は困惑した目で見つめ、それから慌てたように口を差し挟んでくる。
「ちょ――ちょっと待てよ!? 俺は……この俺様は……!」
「い、いやいやいや! ホント助かったよ、やっぱり小山田君は、頼りになる僕の友だちだ!」
「い、一体いつからてめぇと俺様が――!!」
「まあ、待て待て待て!」
顔を真っ赤にして怒り狂う小山田だったが、梅田センセイの分厚くてゴツい手がそうはさせなかった。一定の距離を保つように僕と小山田の肩をしっかりと掴んで抑えつけている。
「さすがはサッカーの部キャプテンだな、小山田。お前はここぞという時にチカラを発揮できる、そういう奴だ。いつもは赤川とつるんで暴れたりもするが、それはお前の真の姿じゃない」
「そうそう。そうなんですよねー。ホントは優しいのに、いつも怖いフリしちゃってて――」
さすがに僕の、梅田センセイに調子を合わせたセリフには露骨に嫌そうな顔をする小山田。
「てめぇ……知った顔でぺちゃくちゃと……!!」
「ん? 違うのか? 小山田?」
「……別に、そんなんじゃねえっていうか……くそっ!」
すっかりアテが外れて、居心地悪そうに視線をさまよわせる小山田とは対照的に――。
「くっそぉ……古ノ森……ケンタァ……。うひひっ、その名前……覚えたからなぁ……」
僕と小山田が身をかわした直後、視界がまるでスローモーションの映像のように感じられた。
僕の左手と小山田の右手がしっかりと握っているのは、僕のブレザーの袖。その両端をしっかりと握ったまま、僕と小山田はタツヒコの突進をすんでのところでかわす。
その結果――。
「んぐっ!?!?」
即席のワイヤートラップが見事にタツヒコの顔面を捕らえ、彼のカラダは急制動をかけられてその場で宙を舞った。アクセルを放され操舵手を失った原動機付自転車は、よろよろとよろめきながらグラウンド端のフェンスに激突して横倒しになる。
それまでの短い時間で僕は、後頭部から地面に叩きつけられたタツヒコのカラダにのしかかるようにして動きを封じていた。憤懣やるかたない小山田が僕のカラダを押し退けて腹立ちまぎれの一撃を喰らわせようとするが――僕がおおいかぶさったのはそれも計算してのことだ。
「くっそ! どけっ! どけってんだよ! ナプキン王子!」
「ちょ! ちょっとやめてってば! せっかく捕まえたのに逃げられちゃうって!」
「てめぇ……邪魔すんなって――!」
小山田は怒りの行き場を失って、まだ手にしていた破れかけてところどころほつれてしまった僕のブレザーを放り投げて喰ってかかってきた。あーあ、あれ、直して着れるのかな……。
我慢の限界を超えた小山田は、ついに足元にちょうどよく転がっているタツヒコの頭を――。
「そこまでにしろ! お前ら、何やってる! 赤川! 小山田!」
「よぉう、梅田のおっさーん。ちょっと遅いんじゃねぇの? あやうくこいつらによぉ――」
「ち――っ……」
他の騒ぎをあらかた鎮圧した梅田センセイが現れたおかげで、幸か不幸か、小山田が自慢の右足で華麗なシュートフォームを披露することはなかった。しかし、小山田はそれ以上に失望した表情を浮かべていた。何もしていないのに、また俺まで――そう小山田は思っている。
が、それは違う。
今回に限っては。
「あ……えっと、梅田センセイ? ダッチ――小山田君は、クラスのみんなを助けるために、僕に協力してくれただけなんですよ。誰も殴ってなんかいないし、暴力も振るってません」
「そうか。ええと……お前は古ノ森だな? 保健委員の」
「は、はい。そうです、古ノ森です」
僕は手早く梅田センセイに今の経緯を説明した。一度は差し出された梅田センセイの手が引き戻されるさまを、小山田は困惑した目で見つめ、それから慌てたように口を差し挟んでくる。
「ちょ――ちょっと待てよ!? 俺は……この俺様は……!」
「い、いやいやいや! ホント助かったよ、やっぱり小山田君は、頼りになる僕の友だちだ!」
「い、一体いつからてめぇと俺様が――!!」
「まあ、待て待て待て!」
顔を真っ赤にして怒り狂う小山田だったが、梅田センセイの分厚くてゴツい手がそうはさせなかった。一定の距離を保つように僕と小山田の肩をしっかりと掴んで抑えつけている。
「さすがはサッカーの部キャプテンだな、小山田。お前はここぞという時にチカラを発揮できる、そういう奴だ。いつもは赤川とつるんで暴れたりもするが、それはお前の真の姿じゃない」
「そうそう。そうなんですよねー。ホントは優しいのに、いつも怖いフリしちゃってて――」
さすがに僕の、梅田センセイに調子を合わせたセリフには露骨に嫌そうな顔をする小山田。
「てめぇ……知った顔でぺちゃくちゃと……!!」
「ん? 違うのか? 小山田?」
「……別に、そんなんじゃねえっていうか……くそっ!」
すっかりアテが外れて、居心地悪そうに視線をさまよわせる小山田とは対照的に――。
「くっそぉ……古ノ森……ケンタァ……。うひひっ、その名前……覚えたからなぁ……」
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