314 / 539
第313話 球技大会・一日目 at 1995/11/8
しおりを挟む
どん、どどん――。
校舎裏から学校行事恒例の三段花火が打ち上げられ、立ち並ぶ団地の隅々まで鳴り響いた。
「いいか、てめぇら――?」
サッカーで出場する選手たちを集めた小山田は、一人一人の目を覗き込むようにして言う。
「俺様たちのチームが目指すのはずばり優勝だ。それ以外は認めねえ。そのためにはよ、チーム全員が一丸となって、チカラを合わせて真剣にプレイしないといけねえよな? あぁん!?」
そりゃそうだ。
おっしゃるとおりそりゃそうなんだけど、こうも高圧的で、ぴりついた緊張感が漂ってちゃあ、できるプレイもまともにできやしないと思うんだけど。
なので、おずおずと手を挙げる。
「なんだ? ナプキン王子? なんか文句でもあんのかよ!?」
「も、文句とかじゃないよ! たださ……リラックスして楽しくやろうって、ね?」
「はン! だらだらやってて、いいプレイができるってんなら見せてみろや!」
「い、いやいやいや! だらだらとリラックスってのは違――はぁ、まあやりますってば」
言っている小山田自身が一番緊張して固くなっている気がする。やはり小山田にとって『負ける』ということは、フツーの人間以上の何か特殊な感情を招くものののようだ。僕は続けてこう言った。
「なんたってウチのクラスには、サッカー部キャプテンのダッチとカエルがいるんだ! これ以上頼もしいツー・トップはいないよね? ね? 大丈夫、後ろの守りは僕らに任せてくれよ」
「ダ、ダッチだと……てめ――っ!」
「カ、カエルって……この野郎っ!」
「そ、そう怒るなってば! 前にも言ったろ? あだ名は友好の証だって! 馬鹿にしてるわけじゃないんだってば! プレイ中にも、みんなが気軽に呼べないと、パスも出せないだろ?」
今にも掴みかかられそうなところを両手を掲げた降参のポーズで抗弁すると、小山田と吉川は視線を交わし、渋々うなずいてみせる。仕方ねぇ、そう言っているような顔つきだ。
「……まあ、勝手にしろよ。ただ、これだけは全員に言っておくぞ? いいか、よく聞けよ?」
小山田は、全員に、と口にしながらも、僕の顔を真っ正面から見据えて言い放つ。
「俺様は、てめえらを信用してねぇ。だから、点取ろうだとか余計なことは考えるなよ? 勝つために必要なゴールなら、俺様とカエルできっちり決めてきてやる。だから、守りに徹しろ」
「一点でも取られたら、どうなるかわかってるよねぇー? んー?」
「……いや――取られんのは仕方ねえ。シロート集団なんだからよ」
言うが早いか、ねちっこく手近な生徒にからみはじめた吉川だったが、続く小山田のひとことで、んっ、と呻いたかと思うと慌てて振り返り、愛想笑いをふりまきながらこう言った。
「い、いやいやいや! 取られてもいいとか――!?」
「それ以上、俺様たちが点取りゃあいい。それだけのカンタンなハナシだ。違うか、カエル?」
「ま、まあ、そうだけどねぇ……」
「おい、ナプキン王子?」
僕? と思わず自分を指さして聞き返してしまった。
すると、小山田は横柄にうなずく。
「守りは任せろ、だの、ずいぶんと大層な口利いてたよな? ならよ、てめぇが司令塔をやれ」
「い、いやいやいや……。あ、あの……僕も一応、シロートの部類に入ると思うんだけど……」
「……この前体育の授業中に、たっぷり見させてもらった。こんなかで一番マシなのは……てめぇだった」
意外だった。
他人にはまったく興味がない、俺様野郎だと思っていたのに。でも、一番意外だと思っているのは、案外小山田自身なのかもしれない。どうにもぎこちない口調だった。
「信用したわけじゃねえからな、勘違いするなよ? 吐いたツバはてめぇで呑め、ってことだ」
「はぁ……ま、二人は前で忙しいわけだし、後ろの面倒までは見れないよね……引き受けたよ」
やれやれ、と首を振りながらこたえると、なんとなく周囲の空気が安堵感に包まれた。さすがに強制的にサッカーをやらされた上に、試合中ずっと罵声を浴びせられるのは嫌なのだろう。
「よし。なら、全員手を出せ……目指せ、優勝だ! ファイッ――!」
校舎裏から学校行事恒例の三段花火が打ち上げられ、立ち並ぶ団地の隅々まで鳴り響いた。
「いいか、てめぇら――?」
サッカーで出場する選手たちを集めた小山田は、一人一人の目を覗き込むようにして言う。
「俺様たちのチームが目指すのはずばり優勝だ。それ以外は認めねえ。そのためにはよ、チーム全員が一丸となって、チカラを合わせて真剣にプレイしないといけねえよな? あぁん!?」
そりゃそうだ。
おっしゃるとおりそりゃそうなんだけど、こうも高圧的で、ぴりついた緊張感が漂ってちゃあ、できるプレイもまともにできやしないと思うんだけど。
なので、おずおずと手を挙げる。
「なんだ? ナプキン王子? なんか文句でもあんのかよ!?」
「も、文句とかじゃないよ! たださ……リラックスして楽しくやろうって、ね?」
「はン! だらだらやってて、いいプレイができるってんなら見せてみろや!」
「い、いやいやいや! だらだらとリラックスってのは違――はぁ、まあやりますってば」
言っている小山田自身が一番緊張して固くなっている気がする。やはり小山田にとって『負ける』ということは、フツーの人間以上の何か特殊な感情を招くものののようだ。僕は続けてこう言った。
「なんたってウチのクラスには、サッカー部キャプテンのダッチとカエルがいるんだ! これ以上頼もしいツー・トップはいないよね? ね? 大丈夫、後ろの守りは僕らに任せてくれよ」
「ダ、ダッチだと……てめ――っ!」
「カ、カエルって……この野郎っ!」
「そ、そう怒るなってば! 前にも言ったろ? あだ名は友好の証だって! 馬鹿にしてるわけじゃないんだってば! プレイ中にも、みんなが気軽に呼べないと、パスも出せないだろ?」
今にも掴みかかられそうなところを両手を掲げた降参のポーズで抗弁すると、小山田と吉川は視線を交わし、渋々うなずいてみせる。仕方ねぇ、そう言っているような顔つきだ。
「……まあ、勝手にしろよ。ただ、これだけは全員に言っておくぞ? いいか、よく聞けよ?」
小山田は、全員に、と口にしながらも、僕の顔を真っ正面から見据えて言い放つ。
「俺様は、てめえらを信用してねぇ。だから、点取ろうだとか余計なことは考えるなよ? 勝つために必要なゴールなら、俺様とカエルできっちり決めてきてやる。だから、守りに徹しろ」
「一点でも取られたら、どうなるかわかってるよねぇー? んー?」
「……いや――取られんのは仕方ねえ。シロート集団なんだからよ」
言うが早いか、ねちっこく手近な生徒にからみはじめた吉川だったが、続く小山田のひとことで、んっ、と呻いたかと思うと慌てて振り返り、愛想笑いをふりまきながらこう言った。
「い、いやいやいや! 取られてもいいとか――!?」
「それ以上、俺様たちが点取りゃあいい。それだけのカンタンなハナシだ。違うか、カエル?」
「ま、まあ、そうだけどねぇ……」
「おい、ナプキン王子?」
僕? と思わず自分を指さして聞き返してしまった。
すると、小山田は横柄にうなずく。
「守りは任せろ、だの、ずいぶんと大層な口利いてたよな? ならよ、てめぇが司令塔をやれ」
「い、いやいやいや……。あ、あの……僕も一応、シロートの部類に入ると思うんだけど……」
「……この前体育の授業中に、たっぷり見させてもらった。こんなかで一番マシなのは……てめぇだった」
意外だった。
他人にはまったく興味がない、俺様野郎だと思っていたのに。でも、一番意外だと思っているのは、案外小山田自身なのかもしれない。どうにもぎこちない口調だった。
「信用したわけじゃねえからな、勘違いするなよ? 吐いたツバはてめぇで呑め、ってことだ」
「はぁ……ま、二人は前で忙しいわけだし、後ろの面倒までは見れないよね……引き受けたよ」
やれやれ、と首を振りながらこたえると、なんとなく周囲の空気が安堵感に包まれた。さすがに強制的にサッカーをやらされた上に、試合中ずっと罵声を浴びせられるのは嫌なのだろう。
「よし。なら、全員手を出せ……目指せ、優勝だ! ファイッ――!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2026.2.22)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる