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第315話 球技大会・三日目(1) at 1995/11/10
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「すごいね、ケンタ君たち! 次は準決勝だね!」
履き古しのスニーカーの紐を、もう一度しっかりと結び直しながら、僕は純美子を見上げる。
「ありがとう、スミちゃん。応援の声、ちゃんと聴こえてるよ」
「えっ! あ……や……ホ、ホント!? 恥ずかしいよぅ……」
「は、恥ずかしいことはないでしょ! う、うれしかったな……」
「う――うん。よかった……!」
結局、『電算論理研究部』からサッカーに出場することになったのは、僕だけだった。本来であれば、佐倉君はその足を生かした貴重な戦力になってくれるはずだったのだけれど、まだ完全復活には至らない、と医師のストップがかかってしまったのだ。だが、安心した僕がいる。
「き、今日は厳しいですね、古ノ森リーダー……。だ、大丈夫です?」
「ありがとう、佐倉君。まあ……不安でいっぱい、ってのが本音だなぁ」
今日、十一月十日の『西中球技大会』最終日で、準決勝から決勝、そして二つのトーナメントを勝ち上がった二チームによる最終戦、計七試合が行われることになっていた。
そこでポイントになってくるのがスタミナだ。
いかに温存して、次の試合に臨むか。トーナメントごとの決勝戦のあと、勝者同士の最終戦が行われることになるのだが、一応そこだけは少し長めのインターバルが設けられていた。だがそれでも、完全優勝で終えるためには、今日一日で最大三試合をこなさなければならない。
「モ、モリケン! 呼ばれてるよ!」
「お、サンキュー、シブチン」
やはりサッカーが盛んな街、ということもあり、この最終日に他の競技は準決勝戦と決勝戦だけを行う予定になっていた。なので、ほとんどの生徒たちはこれからはじまるサッカーを観戦するらしい。閑散としていた昨日までとは違って、ひとだかりと活気のある自軍のベンチエリアに小走りで急ぐ。
「おせぇぞ、ナプキン王子!」
「ご、ごめん」
まわりを見ると、僕が合流したあとも集まっていない選手がちらほら駆け寄ってくる。が、キャプテン・小山田から怒鳴りつけられたのは僕だけだ。なんという仕打ちか。畜生め。
「ほら、とっととこっち来いよ!? 作戦会議やってんだからよ?」
「さ、作戦会議、って……。そんなの、昨日までやってなかったじゃないか」
「さすがにもう、この先は無策で勝てる相手じゃねえんだよ! そんくらい、頭使えって!」
おっと意外。そして、学年・逆一、二位の学力をキープする小山田に『頭を使え』とどやされるこの皮肉。まあ、案外悪くはない。無論、とはいえ気持ちのいいものでもないんだけれど。
「いいか? 準決勝の相手は、三年七組だ」
小山田は、ほこりっぽい地面に指をこすりつけてフォーメーション図を描いていく。
「この三年七組には、とっくに引退したとはいえ、レギュラー級の選手が四人いる。FWに二人、MFに二人だ。こいつらに一気に攻め込まれたらアウトだぞ? だからよ――」
小山田の指が自陣の両サイドの選手を丸で囲み、敵陣の2トップに向けて矢印を伸ばした。
「サイドの室生と荒山は、相手のFWに張り付いてくれ。この野郎の指示で動いてる感じ、なかなかよかったからな。アレをもっと徹底するんだ。……だが、そうなるとだな――?」
「――守りが弱くなる、だろ? 運動量の豊富な二人が抜けたらさすがに厳しいからね」
「……はン、わかってるじゃねえか。なら、どうする? てめぇならよ?」
僕はしばし考え込む。
それから地面にそろりそろりと指を這わせた。
「……守備ラインを上げてプレッシャーをかけたいところだけれど、正直、僕を含めた他のメンバーはそんなに技術力がないからね。逆に突破されるのがオチだよ。戻って守るしかない」
「全員守備、ってことか?」
「えと……リトリートって言うんじゃなかったっけ? まあ、それは置いといて……ボールを取られたら、DFは急いで戻って攻撃に備える。FW二人とサイド二人は前に残ってプレスだ」
「で……うまく防げたらカウンターってことか……。ふン、悪かねぇな、それで行こうぜ!」
履き古しのスニーカーの紐を、もう一度しっかりと結び直しながら、僕は純美子を見上げる。
「ありがとう、スミちゃん。応援の声、ちゃんと聴こえてるよ」
「えっ! あ……や……ホ、ホント!? 恥ずかしいよぅ……」
「は、恥ずかしいことはないでしょ! う、うれしかったな……」
「う――うん。よかった……!」
結局、『電算論理研究部』からサッカーに出場することになったのは、僕だけだった。本来であれば、佐倉君はその足を生かした貴重な戦力になってくれるはずだったのだけれど、まだ完全復活には至らない、と医師のストップがかかってしまったのだ。だが、安心した僕がいる。
「き、今日は厳しいですね、古ノ森リーダー……。だ、大丈夫です?」
「ありがとう、佐倉君。まあ……不安でいっぱい、ってのが本音だなぁ」
今日、十一月十日の『西中球技大会』最終日で、準決勝から決勝、そして二つのトーナメントを勝ち上がった二チームによる最終戦、計七試合が行われることになっていた。
そこでポイントになってくるのがスタミナだ。
いかに温存して、次の試合に臨むか。トーナメントごとの決勝戦のあと、勝者同士の最終戦が行われることになるのだが、一応そこだけは少し長めのインターバルが設けられていた。だがそれでも、完全優勝で終えるためには、今日一日で最大三試合をこなさなければならない。
「モ、モリケン! 呼ばれてるよ!」
「お、サンキュー、シブチン」
やはりサッカーが盛んな街、ということもあり、この最終日に他の競技は準決勝戦と決勝戦だけを行う予定になっていた。なので、ほとんどの生徒たちはこれからはじまるサッカーを観戦するらしい。閑散としていた昨日までとは違って、ひとだかりと活気のある自軍のベンチエリアに小走りで急ぐ。
「おせぇぞ、ナプキン王子!」
「ご、ごめん」
まわりを見ると、僕が合流したあとも集まっていない選手がちらほら駆け寄ってくる。が、キャプテン・小山田から怒鳴りつけられたのは僕だけだ。なんという仕打ちか。畜生め。
「ほら、とっととこっち来いよ!? 作戦会議やってんだからよ?」
「さ、作戦会議、って……。そんなの、昨日までやってなかったじゃないか」
「さすがにもう、この先は無策で勝てる相手じゃねえんだよ! そんくらい、頭使えって!」
おっと意外。そして、学年・逆一、二位の学力をキープする小山田に『頭を使え』とどやされるこの皮肉。まあ、案外悪くはない。無論、とはいえ気持ちのいいものでもないんだけれど。
「いいか? 準決勝の相手は、三年七組だ」
小山田は、ほこりっぽい地面に指をこすりつけてフォーメーション図を描いていく。
「この三年七組には、とっくに引退したとはいえ、レギュラー級の選手が四人いる。FWに二人、MFに二人だ。こいつらに一気に攻め込まれたらアウトだぞ? だからよ――」
小山田の指が自陣の両サイドの選手を丸で囲み、敵陣の2トップに向けて矢印を伸ばした。
「サイドの室生と荒山は、相手のFWに張り付いてくれ。この野郎の指示で動いてる感じ、なかなかよかったからな。アレをもっと徹底するんだ。……だが、そうなるとだな――?」
「――守りが弱くなる、だろ? 運動量の豊富な二人が抜けたらさすがに厳しいからね」
「……はン、わかってるじゃねえか。なら、どうする? てめぇならよ?」
僕はしばし考え込む。
それから地面にそろりそろりと指を這わせた。
「……守備ラインを上げてプレッシャーをかけたいところだけれど、正直、僕を含めた他のメンバーはそんなに技術力がないからね。逆に突破されるのがオチだよ。戻って守るしかない」
「全員守備、ってことか?」
「えと……リトリートって言うんじゃなかったっけ? まあ、それは置いといて……ボールを取られたら、DFは急いで戻って攻撃に備える。FW二人とサイド二人は前に残ってプレスだ」
「で……うまく防げたらカウンターってことか……。ふン、悪かねぇな、それで行こうぜ!」
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