ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

文字の大きさ
316 / 539

第315話 球技大会・三日目(1) at 1995/11/10

しおりを挟む
「すごいね、ケンタ君たち! 次は準決勝だね!」


 履き古しのスニーカーの紐を、もう一度しっかりと結び直しながら、僕は純美子を見上げる。


「ありがとう、スミちゃん。応援の声、ちゃんと聴こえてるよ」

「えっ! あ……や……ホ、ホント!? 恥ずかしいよぅ……」

「は、恥ずかしいことはないでしょ! う、うれしかったな……」

「う――うん。よかった……!」


 結局、『電算論理研究部』からサッカーに出場することになったのは、僕だけだった。本来であれば、佐倉君はその足を生かした貴重な戦力になってくれるはずだったのだけれど、まだ完全復活には至らない、と医師のストップがかかってしまったのだ。だが、安心した僕がいる。


「き、今日は厳しいですね、古ノ森リーダー……。だ、大丈夫です?」

「ありがとう、佐倉君。まあ……不安でいっぱい、ってのが本音だなぁ」


 今日、十一月十日の『西中球技大会』最終日で、準決勝から決勝、そして二つのトーナメントを勝ち上がった二チームによる最終戦、計七試合が行われることになっていた。

 そこでポイントになってくるのがスタミナだ。

 いかに温存して、次の試合に臨むか。トーナメントごとの決勝戦のあと、勝者同士の最終戦が行われることになるのだが、一応そこだけは少し長めのインターバルが設けられていた。だがそれでも、完全優勝で終えるためには、今日一日で最大三試合をこなさなければならない。


「モ、モリケン! 呼ばれてるよ!」

「お、サンキュー、シブチン」


 やはりサッカーが盛んな街、ということもあり、この最終日に他の競技は準決勝戦と決勝戦だけを行う予定になっていた。なので、ほとんどの生徒たちはこれからはじまるサッカーを観戦するらしい。閑散としていた昨日までとは違って、ひとだかりと活気のある自軍のベンチエリアに小走りで急ぐ。


「おせぇぞ、ナプキン王子!」

「ご、ごめん」


 まわりを見ると、僕が合流したあとも集まっていない選手がちらほら駆け寄ってくる。が、キャプテン・小山田から怒鳴りつけられたのは僕だけだ。なんという仕打ちか。畜生め。


「ほら、とっととこっち来いよ!? 作戦会議やってんだからよ?」

「さ、作戦会議、って……。そんなの、昨日までやってなかったじゃないか」

「さすがにもう、この先は無策で勝てる相手じゃねえんだよ! そんくらい、頭使えって!」


 おっと意外。そして、学年・逆一、二位の学力をキープする小山田に『頭を使え』とどやされるこの皮肉。まあ、案外悪くはない。無論、とはいえ気持ちのいいものでもないんだけれど。


「いいか? 準決勝の相手は、三年七組だ」


 小山田は、ほこりっぽい地面に指をこすりつけてフォーメーション図を描いていく。


「この三年七組には、とっくに引退したとはいえ、レギュラー級の選手が四人いる。FWフォワードに二人、MFミッドフィルダーに二人だ。こいつらに一気に攻め込まれたらアウトだぞ? だからよ――」


 小山田の指が自陣の両サイドの選手を丸で囲み、敵陣の2トップに向けて矢印を伸ばした。


「サイドの室生ムロ荒山キヨは、相手のFWフォワードに張り付いてくれ。この野郎の指示で動いてる感じ、なかなかよかったからな。アレをもっと徹底するんだ。……だが、そうなるとだな――?」

「――守りが弱くなる、だろ? 運動量の豊富な二人が抜けたらさすがに厳しいからね」

「……はン、わかってるじゃねえか。なら、どうする? てめぇならよ?」


 僕はしばし考え込む。
 それから地面にそろりそろりと指を這わせた。


「……守備ラインを上げてプレッシャーをかけたいところだけれど、正直、僕を含めた他のメンバーはそんなに技術力がないからね。逆に突破されるのがオチだよ。戻って守るしかない」

「全員守備、ってことか?」

「えと……リトリートって言うんじゃなかったっけ? まあ、それは置いといて……ボールを取られたら、DFディフェンダーは急いで戻って攻撃に備える。FW二人とサイド二人は前に残ってプレスだ」

「で……うまく防げたらカウンターってことか……。ふン、悪かねぇな、それで行こうぜ!」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

処理中です...