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第329話 球技大会・最終戦(3) at 1995/11/10
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「みんな、悪ぃが集まってくれ。……休みながらでいい、後半の相談をしてぇんだ」
前半戦が終わり、一旦敵味方にわかれてフィールドから去っていくと、間髪入れずに小山田がみんなに声をかけた。いつもなら陰で不満のひとつでもこぼしそうなものだったが――小山田の口調の変化に気づいたようで、水筒のボトルをひったくるように手にして駆け寄っていく。
「……すまねぇ。あんだけ大きな口叩いててこのザマだ。二年一組の守備は堅ぇ。ムロとキヨにもチカラ貸してもらってるが、三人がかりでもこのままじゃ突破は難しい。そこで――だ」
小山田が肩越しにうしろを振り返ると――グラウンドの端に植えられているこぶりな針葉樹の影からひとりの生徒が緊張した面持ちで姿を現した。佐倉君だ。
「だ――大丈夫なの? 佐倉君?」
「は、はい、古ノ森リーダー」
佐倉君はしっかりとうなずき返した。
「さ、さっきも言いましたけど、後半の三〇分だけなら出てもいいよ、ってお医者さんに行ってもらえましたから。ま、まあ、どうしても出たいんです! って僕が無理言ったんですけど」
「あ、あのな? 佐倉?」
「は、はい?」
なんだか妙にぎこちない口調で小山田が呼びかけると、佐倉君はわずかに表情を強張らせた。
「……少しでもキツかったら、遠慮せずに言ってくれよな? 俺様は、チカラを貸してくれる、それだけですげぇ嬉しいんだ。まだ病み上がりで本調子じゃねえんだろ? 無理だけはすんな」
しばし、ぽかん、とあっけに取られていた佐倉君だったが、
「うん! わかったよ、小山田君! 僕、がんばるからね! 無理しないって約束もする!」
内股気味の、実にかわいらしいガッツポーズで佐倉君がこたえる。
すると背後から声が。
「まさか……あのダッチまで僕のかえでちゃんに恋しちゃった、とかないよね、モリケン?」
「……いいかげん、その不埒な妄想から離れろってば。咲都子に言いつけるぞ?」
男の子だし、お前のじゃないし、というツッコミすら面倒なのでスルー。
本人不在とはいえ、自分のせいで怪我をさせてしまったことをいまだに負い目に思っているのだろう。とかく小山田は、そういった義理人情的な感情を重んじる任侠寄りの男なのだ。
それつながり、というわけじゃないが、僕はあることが気になっていた。
それを口に出す。
「そろそろ磯センから連絡入ったりしてないのかな? ダッチも、カエルの様子が心配だろ?」
「お――おう。ちょっと聞きに行くか。おぅ、こら……てめぇも来いや」
「い、いや、ぼ、僕は……あー、はいはい! 行きます行きますってば!」
やけにむっつりと顔をしかめた小山田のあとを仕方なくついていく僕。梅田センセイの姿を探して校舎脇を歩いていると、ちょうど職員室の窓の前を歩いていた時、中から手招きされた。
「――ええ。それそれは。では、とりあえず問題なし、ということですね? わかりました」
のんびりとした口調の主は、荻島センセイだ。校庭側から入れるドアを開けた僕たちに、荻島センセイは、ちょい、ちょい、としきりに手招きしてくる。近づくと、手にしていた受話器が小山田に向けて差し出された。俺? と無言で尋ね返すと、はい、とうなずかれた。
「あー……もしもし、小山田です。……あ、はい。そっすか……! ありがとうございます!」
しばし小山田は少しぎこちない口調で受け答えをする。どうやら相手は磯島センセイらしい。ひとしきりやりとりを終えると、小山田は一礼して、荻島センセイに受話器を手渡した。
「――はいはい。ええ、問題ないですよ。吉川君にも伝えてあげてください。きっと勝つ、と」
そう締めくくってていねいに電話を切った荻島センセイは、とまどっている僕らに椅子ごとくるりと向き直ると、悪戯っ子のようなくりくりした瞳を輝かせてこう言うのだった。
「あららら……。私としたことが、勝つだなんて約束しちゃいましたよ。……どうします?」
前半戦が終わり、一旦敵味方にわかれてフィールドから去っていくと、間髪入れずに小山田がみんなに声をかけた。いつもなら陰で不満のひとつでもこぼしそうなものだったが――小山田の口調の変化に気づいたようで、水筒のボトルをひったくるように手にして駆け寄っていく。
「……すまねぇ。あんだけ大きな口叩いててこのザマだ。二年一組の守備は堅ぇ。ムロとキヨにもチカラ貸してもらってるが、三人がかりでもこのままじゃ突破は難しい。そこで――だ」
小山田が肩越しにうしろを振り返ると――グラウンドの端に植えられているこぶりな針葉樹の影からひとりの生徒が緊張した面持ちで姿を現した。佐倉君だ。
「だ――大丈夫なの? 佐倉君?」
「は、はい、古ノ森リーダー」
佐倉君はしっかりとうなずき返した。
「さ、さっきも言いましたけど、後半の三〇分だけなら出てもいいよ、ってお医者さんに行ってもらえましたから。ま、まあ、どうしても出たいんです! って僕が無理言ったんですけど」
「あ、あのな? 佐倉?」
「は、はい?」
なんだか妙にぎこちない口調で小山田が呼びかけると、佐倉君はわずかに表情を強張らせた。
「……少しでもキツかったら、遠慮せずに言ってくれよな? 俺様は、チカラを貸してくれる、それだけですげぇ嬉しいんだ。まだ病み上がりで本調子じゃねえんだろ? 無理だけはすんな」
しばし、ぽかん、とあっけに取られていた佐倉君だったが、
「うん! わかったよ、小山田君! 僕、がんばるからね! 無理しないって約束もする!」
内股気味の、実にかわいらしいガッツポーズで佐倉君がこたえる。
すると背後から声が。
「まさか……あのダッチまで僕のかえでちゃんに恋しちゃった、とかないよね、モリケン?」
「……いいかげん、その不埒な妄想から離れろってば。咲都子に言いつけるぞ?」
男の子だし、お前のじゃないし、というツッコミすら面倒なのでスルー。
本人不在とはいえ、自分のせいで怪我をさせてしまったことをいまだに負い目に思っているのだろう。とかく小山田は、そういった義理人情的な感情を重んじる任侠寄りの男なのだ。
それつながり、というわけじゃないが、僕はあることが気になっていた。
それを口に出す。
「そろそろ磯センから連絡入ったりしてないのかな? ダッチも、カエルの様子が心配だろ?」
「お――おう。ちょっと聞きに行くか。おぅ、こら……てめぇも来いや」
「い、いや、ぼ、僕は……あー、はいはい! 行きます行きますってば!」
やけにむっつりと顔をしかめた小山田のあとを仕方なくついていく僕。梅田センセイの姿を探して校舎脇を歩いていると、ちょうど職員室の窓の前を歩いていた時、中から手招きされた。
「――ええ。それそれは。では、とりあえず問題なし、ということですね? わかりました」
のんびりとした口調の主は、荻島センセイだ。校庭側から入れるドアを開けた僕たちに、荻島センセイは、ちょい、ちょい、としきりに手招きしてくる。近づくと、手にしていた受話器が小山田に向けて差し出された。俺? と無言で尋ね返すと、はい、とうなずかれた。
「あー……もしもし、小山田です。……あ、はい。そっすか……! ありがとうございます!」
しばし小山田は少しぎこちない口調で受け答えをする。どうやら相手は磯島センセイらしい。ひとしきりやりとりを終えると、小山田は一礼して、荻島センセイに受話器を手渡した。
「――はいはい。ええ、問題ないですよ。吉川君にも伝えてあげてください。きっと勝つ、と」
そう締めくくってていねいに電話を切った荻島センセイは、とまどっている僕らに椅子ごとくるりと向き直ると、悪戯っ子のようなくりくりした瞳を輝かせてこう言うのだった。
「あららら……。私としたことが、勝つだなんて約束しちゃいましたよ。……どうします?」
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