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第337話 球技大会・最終戦・アフター at 1995/11/10
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「ということはさ……ということはだよ……?」
「ああ、勝負は室生たちの勝ち、ってこったな……くそっ」
急にどっと疲れが出た僕は、同じくへたりこんだ小山田と並んで体育座りのまま、朝礼台の上で最優秀選手の賞状を受け取る室生の姿を眺めていた。
よくよく思い起こしてみれば、球技大会で最優秀選手に選ばれること、と決めたものの、競技はサッカーだけじゃないし、それに限る、と明確に定めていたわけでもなかった。学校側のルールだって、ひとり何種目でも出場していいことになっているわけで。完全に作戦勝ちだ。
「こいつは……まんまとしてやられたな……盲点だった」
「あんなナリして、一番厄介なんだよな、ムロはよ……」
そんなことをお互いひとりごとのようにつぶやき、あっけなく決着のついてしまった勝負の勝利者、室生が賞状を受け取るさまをぼんやりみていると――突然、室生がマイクを握った。
『……あー』
そう言ってスイッチがオンになっていることを確かめた室生は、僕と小山田に向けて、きっぱりとこう言い放った。
『これで僕の二勝で勝利……と言いたいところだけど、僕は、この勝負、降りさせてもらうよ』
「お――おいっ! ムロッ! そりゃどういうことだ!?」
『僕は何も、君たちに勝ちたかったわけじゃないからね。僕の出した条件、覚えているだろ?』
忘れるわけがない。
(僕が勝ったら、ロコに男子テニス部のマネージャーになってもらう。そっちは退部だ――)
でも、ロコが辞めるだなんて、ひとことも聞いてない。僕は部長だ。幼馴染で、同じ『リトライ者』でもあって、他にもいろいろあって――ともかく言いづらかったとしても、僕が何も聞いてない、聞かされてないなんておかしい。
反射的に前の方に並んでいる荻島センセイの顔を少しきつめに睨みつけると、たちまち驚いたような顔になって、首をぶんぶん振りかえされた。
「ぼ、僕、何も聞いてないんだけど!?」
『……うーん。いちいちモリケン、君に許可をもらわないといけない理由なんてあるのかい?』
「だ、だって! 僕は『電算論理研究部』の部長だから――!」
『はははっ! なんだ、そっちか! 悪い悪い!』
一瞬、あの人たらしで誰にでも分け隔てなくにこやかに接する室生の表情が、見たこともないくらい険しくしかめられた。
が、すぐに元通りの爽やかな笑顔を取り戻した。
そして言う。
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
不吉な予感のするバイブレーション。
『僕は、ロコと付き合うことに決めたんだよ。だから、これ以上争う必要がなくなったのさ』
………………え!?
そのひとことで頭が真っ白になった。
たちまち校庭に集まっていた女子生徒たちの口から、悲鳴のような叫びが上がる。しかし、室生はほんのちょっぴりすまなさそうな顔をしただけで、堂々と胸を張ってこう続けた。
『君たちとの勝負、本当に楽しかったよ。でも、僕が欲しかったのは、名誉や栄光じゃない。これは、僕にとっての最高のエンディングなんだ。君も祝福してくれるだろ、モリケン?』
僕は――何も言葉が出なかった。
(――変わらないものだってあるよ)
夜の公園でロコが言ったセリフを思い出す。
(――だからあたしは、こうすることに決めたんだ)
僕はとっさに振り返る。
だが――いつもそこにいる、いてくれるはずの、ロコの姿はどこにもなかったのだった。
「ああ、勝負は室生たちの勝ち、ってこったな……くそっ」
急にどっと疲れが出た僕は、同じくへたりこんだ小山田と並んで体育座りのまま、朝礼台の上で最優秀選手の賞状を受け取る室生の姿を眺めていた。
よくよく思い起こしてみれば、球技大会で最優秀選手に選ばれること、と決めたものの、競技はサッカーだけじゃないし、それに限る、と明確に定めていたわけでもなかった。学校側のルールだって、ひとり何種目でも出場していいことになっているわけで。完全に作戦勝ちだ。
「こいつは……まんまとしてやられたな……盲点だった」
「あんなナリして、一番厄介なんだよな、ムロはよ……」
そんなことをお互いひとりごとのようにつぶやき、あっけなく決着のついてしまった勝負の勝利者、室生が賞状を受け取るさまをぼんやりみていると――突然、室生がマイクを握った。
『……あー』
そう言ってスイッチがオンになっていることを確かめた室生は、僕と小山田に向けて、きっぱりとこう言い放った。
『これで僕の二勝で勝利……と言いたいところだけど、僕は、この勝負、降りさせてもらうよ』
「お――おいっ! ムロッ! そりゃどういうことだ!?」
『僕は何も、君たちに勝ちたかったわけじゃないからね。僕の出した条件、覚えているだろ?』
忘れるわけがない。
(僕が勝ったら、ロコに男子テニス部のマネージャーになってもらう。そっちは退部だ――)
でも、ロコが辞めるだなんて、ひとことも聞いてない。僕は部長だ。幼馴染で、同じ『リトライ者』でもあって、他にもいろいろあって――ともかく言いづらかったとしても、僕が何も聞いてない、聞かされてないなんておかしい。
反射的に前の方に並んでいる荻島センセイの顔を少しきつめに睨みつけると、たちまち驚いたような顔になって、首をぶんぶん振りかえされた。
「ぼ、僕、何も聞いてないんだけど!?」
『……うーん。いちいちモリケン、君に許可をもらわないといけない理由なんてあるのかい?』
「だ、だって! 僕は『電算論理研究部』の部長だから――!」
『はははっ! なんだ、そっちか! 悪い悪い!』
一瞬、あの人たらしで誰にでも分け隔てなくにこやかに接する室生の表情が、見たこともないくらい険しくしかめられた。
が、すぐに元通りの爽やかな笑顔を取り戻した。
そして言う。
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
不吉な予感のするバイブレーション。
『僕は、ロコと付き合うことに決めたんだよ。だから、これ以上争う必要がなくなったのさ』
………………え!?
そのひとことで頭が真っ白になった。
たちまち校庭に集まっていた女子生徒たちの口から、悲鳴のような叫びが上がる。しかし、室生はほんのちょっぴりすまなさそうな顔をしただけで、堂々と胸を張ってこう続けた。
『君たちとの勝負、本当に楽しかったよ。でも、僕が欲しかったのは、名誉や栄光じゃない。これは、僕にとっての最高のエンディングなんだ。君も祝福してくれるだろ、モリケン?』
僕は――何も言葉が出なかった。
(――変わらないものだってあるよ)
夜の公園でロコが言ったセリフを思い出す。
(――だからあたしは、こうすることに決めたんだ)
僕はとっさに振り返る。
だが――いつもそこにいる、いてくれるはずの、ロコの姿はどこにもなかったのだった。
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