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第371話 きっと、嵐は来る at 1995/12/15
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「ええと……悪かったな……邪魔しちゃったみたいで、さ?」
「……しかたないだろうが」
隣のブランコに座り言葉とは裏腹に、むすり、と憮然たる表情を浮かべているのはコトセだ。
どうやら毎週金曜日の夜には、五十嵐君と電話でデートをするのがお決まりだったらしい。その時間をズラしてまで、こうして出てきてくれたのである。しかも、琴世ちゃんからコトセに交代するという最大の難関をクリアした上で、だ。
でも、薄着なのはあいかわらずで、またもや僕から借りたダウンジャケットをシンプルすぎる白いワンピースの上にはおっていた。
「だが……まあ、この貸しは、たんまりと利子をつけて返してもらうつもりだからな、ククク」
と思ったら、例によって例のごとく、邪悪でマッドな昏い笑いが響き渡った。いつもの月並みな感想だけれど、本当にこの中身――いや、外身?――あの水無月さんで間違いないのだろうか。
「けど……やっぱり呆れてるよね……?」
「……いいや。そうでもないぞ?」
二週間前の『リトライ者』会議の時には、ひとりでなんとかしてみせる! と言い切ったのだ。何もできないまま、結局頼ってしまった僕に小言のひとつでもあるかと思ったのだけれど。
「こうして相談はされたがな、どうするか? も、誰がやるか? も、ひとりでやるから、と言うのだ、文句のつけようがないだろう? だが……やるにしても、かなりリスクが高いぞ?」
「わかってる……つもりだよ、コトセ」
「誰かが、必ず傷つく。それだけはどうやっても避けようがない。ちゃんと理解しているか?」
「うん――」
「……だといいんだが」
はぁ、とブランコに揺られながら、コトセは切なげな吐息を漏らした。
「おおかた、その『誰かが』を自分で引き受けてしまえばいい、とでも思っているんだろう?」
う……っ。
さすがにコトセの目までは騙せなかったらしい。
「……だと思った。お前のように、自分の命を軽く見ている奴をみると、ムカムカしてくるよ」
「ご、ごめん……そんなつもりじゃ……!」
「ふン――」
コトセは仏頂面を浮かべたまま、そっぽを向いてブランコを大きく揺らす。水無月琴世=コトセは、中学二年生でその生涯を終える身だ。僕のように無茶をしても結局生きながらえる命と、大事に抱え込んで守っても失われていく運命にある命。不公平だと言われてもしかたない。
ざっ――と、コトセの足が揺れるブランコを強引に止めた。
「……ともかくだ。冬休み前に解決しなければならないということについては私も同意見だよ。元の歴史、過去には起こり得なかった事態だ。このままにすれば、いずれ大きな変動が起こる」
「地震の原理と同じ――だったっけ?」
「おおむね、な?」
あくまで比喩だと繰り返し釘を刺しながら、両の手のひらを顔の前で水平に突き合わせる。
「わずかな変化やズレ、それそのものは大きな変動を生まないかもしれないが、そのゆがみとひずみは着実に蓄積しているのだ。それが一定値まで達すれば――ぽーん、と一気に跳ね返る」
「それだけは避けないと」
「すでに、とっくに、起こりはじめているのかもしれない。それについては誰にもわからない」
概念的なモノを考えるのに具現化された物量で推しはかるのは無茶なハナシだが、どの程度の負荷に耐えうるものなのか、どのくらいの期間持ちこたえるものなのか誰もわからないのだ。
「もし相手が誘いに乗ってこなかったらどうする?」
「……いいや、それは心配ないよ」
きっと今の僕は。
僕自身でも見たことがないほど、邪悪な表情を浮かべている、はずだ。
「この三日間ずっと僕は、犯人に向けた犯人だけがわかるメッセージを送り続けてるんだから」
「……しかたないだろうが」
隣のブランコに座り言葉とは裏腹に、むすり、と憮然たる表情を浮かべているのはコトセだ。
どうやら毎週金曜日の夜には、五十嵐君と電話でデートをするのがお決まりだったらしい。その時間をズラしてまで、こうして出てきてくれたのである。しかも、琴世ちゃんからコトセに交代するという最大の難関をクリアした上で、だ。
でも、薄着なのはあいかわらずで、またもや僕から借りたダウンジャケットをシンプルすぎる白いワンピースの上にはおっていた。
「だが……まあ、この貸しは、たんまりと利子をつけて返してもらうつもりだからな、ククク」
と思ったら、例によって例のごとく、邪悪でマッドな昏い笑いが響き渡った。いつもの月並みな感想だけれど、本当にこの中身――いや、外身?――あの水無月さんで間違いないのだろうか。
「けど……やっぱり呆れてるよね……?」
「……いいや。そうでもないぞ?」
二週間前の『リトライ者』会議の時には、ひとりでなんとかしてみせる! と言い切ったのだ。何もできないまま、結局頼ってしまった僕に小言のひとつでもあるかと思ったのだけれど。
「こうして相談はされたがな、どうするか? も、誰がやるか? も、ひとりでやるから、と言うのだ、文句のつけようがないだろう? だが……やるにしても、かなりリスクが高いぞ?」
「わかってる……つもりだよ、コトセ」
「誰かが、必ず傷つく。それだけはどうやっても避けようがない。ちゃんと理解しているか?」
「うん――」
「……だといいんだが」
はぁ、とブランコに揺られながら、コトセは切なげな吐息を漏らした。
「おおかた、その『誰かが』を自分で引き受けてしまえばいい、とでも思っているんだろう?」
う……っ。
さすがにコトセの目までは騙せなかったらしい。
「……だと思った。お前のように、自分の命を軽く見ている奴をみると、ムカムカしてくるよ」
「ご、ごめん……そんなつもりじゃ……!」
「ふン――」
コトセは仏頂面を浮かべたまま、そっぽを向いてブランコを大きく揺らす。水無月琴世=コトセは、中学二年生でその生涯を終える身だ。僕のように無茶をしても結局生きながらえる命と、大事に抱え込んで守っても失われていく運命にある命。不公平だと言われてもしかたない。
ざっ――と、コトセの足が揺れるブランコを強引に止めた。
「……ともかくだ。冬休み前に解決しなければならないということについては私も同意見だよ。元の歴史、過去には起こり得なかった事態だ。このままにすれば、いずれ大きな変動が起こる」
「地震の原理と同じ――だったっけ?」
「おおむね、な?」
あくまで比喩だと繰り返し釘を刺しながら、両の手のひらを顔の前で水平に突き合わせる。
「わずかな変化やズレ、それそのものは大きな変動を生まないかもしれないが、そのゆがみとひずみは着実に蓄積しているのだ。それが一定値まで達すれば――ぽーん、と一気に跳ね返る」
「それだけは避けないと」
「すでに、とっくに、起こりはじめているのかもしれない。それについては誰にもわからない」
概念的なモノを考えるのに具現化された物量で推しはかるのは無茶なハナシだが、どの程度の負荷に耐えうるものなのか、どのくらいの期間持ちこたえるものなのか誰もわからないのだ。
「もし相手が誘いに乗ってこなかったらどうする?」
「……いいや、それは心配ないよ」
きっと今の僕は。
僕自身でも見たことがないほど、邪悪な表情を浮かべている、はずだ。
「この三日間ずっと僕は、犯人に向けた犯人だけがわかるメッセージを送り続けてるんだから」
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