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第386話 マイ・ファースト・パーティー(1) at 1995/12/23
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「えっと、弓之助君! これ、ちょっとお願いできるかな? そこに飾りたいんだけど……」
「ええ、もちろんです。よっと……こう、でいかがですか?」
「うん、いいね! さすが弓之助君だ。いつも助かるよ」
ツッキーパパこと笙さんは、僕たちのパーティーを盛り上げようと、色とりどりのさまざまなオーナメントやデコレーションを、段ボールサイズで大量に準備してくれていた。聞けば、友人の経営する輸入雑貨店で、わざわざ本場フィンランドから取り寄せられた品々だという。
それにもすっかり驚かされたのだけれど。
僕らの目下の話題はそちらではなくって。
(ち――ちょっとちょっと、ハカセ! 笙パパから、もう『弓之助君』って呼ばれてるの!?)
(う……! で、ですが、この僕の名が弓之助であることは周知の事実であって、ですね――)
(ふむふむ。パパ公認! ってカンジがしていいですねぇ。僕なんて『そこのお前!』だもん)
(……それは、渋田サブリーダーの言動に、なんらかの問題があるのでは?)
(そ、そういえば、ツッキーがいっつもそう呼んでますもんねー。うふふー、なるほどですー)
(さ、佐倉君まで……。くっ……。なぜこの僕がこのような……)
噛みしめたくちびるから血も出るイキオイで、冷やかしという名の『屈辱』に耐えている五十嵐君。いやいや、そんなに口惜しそうにしなくても……。喜んだっていいくらいなんだぜ。
「おっと。内緒バナシかい? 僕も男子チームなんだから、ぜひ仲間に入れて欲しいんだけど」
そんな僕らの様子をにこやかに見守りつつも、悪戯っぽい笑顔をスパイスして笙パパが言う。それに慌てたのは当の五十嵐君である。
「い、いえいえいえ! こ、これはそのう……な、なんというか……ですね」
「あのですね、『弓之助君』って呼ばれてるなんて仲がよくて羨ましい、って言ってたんです」
「古・ノ・森・リ・ー・ダ・ー・!」
「あははっ! いいじゃないか、弓之助君! 照れるところも、可愛げがあって実にいいんだ」
「ですよね。僕もそう思います」
ココロから笙パパのセリフに同意した僕だったが――こ、これはマズい……僕らのサイコーにイカす頭脳兼マッドなサイエンティストの五十嵐君はかなりご立腹のご様子である。こうなると社会的にも物理的にもキレイさっぱり始末されてしまう可能性すらありえる。ひいいぃっ。
「なんたって、琴ちゃんの、大のお気に入りだからね! 僕もすぐファンになっちゃったんだ」
「あ――ありがとうございま……す……」
そこまでベタ褒めされたら、僕を怒るに怒れなくなってしまった五十嵐君。
助かった……。
ホッとしたついでに、そろそろ話題を変えてあげることにしよう。僕は、もう一度水無月家のそれぞれの部屋を見回して――うん、やっぱり今日もだった。
「そういえば、あの、以前にもお聞きしたかもしれませんけれど、今まで書かれた絵って……」
「そんなに構えなくっていいよ。この前の時は――ちょっと僕も悪かったかな、って思ってさ」
弱ったとばかりに濃栗色の髪の波間を縫うように、ぽり、と頭をかき、笙パパはバツの悪そうな顔をする。たしかにこの前の時は、妙に神経質で感情に流されてしまった印象すらあった。
「ただ……絵を描くなんて凄い、さぞステキな絵なんでしょうね……そうじゃなくてさ? 僕と琴ちゃんにとっては当たり前の日々の光景を描いているだけなんだ、って伝えたかったんだ」
僕らのような『オトナコドモ』ではない、いわゆる世間一般の『オトナ』たちから言われ続けてきたんだろう。
絵を描くなんて凄い――そんな遊び半分で生活できるだなんてうらやましい! さぞステキな絵なんでしょうね――そんなモノにカネを払う物好きもいるんですね! そんな表裏一体の建前と本音。少数派を異端として蔑むことで、安心感を得る人たち。
実際、もはや一般的な職業だと思っていた『ゲーム会社勤務のSE』という職種でさえ、僕らより『オトナ』たちから見れば同じような『コドモのお遊び』感覚で受け取られることが多かった。
若くて活気のある会社――君みたいな年寄りがよくクビにならないな、だの、ITベンチャーは気楽でいい――うまくいかなきゃ潰しちゃえばいいんだし、だのと、さまざまな言葉を頂戴してはげんなりしたものだ。そこからつながる『俺の若い頃は』云々。飽き飽きだ。
「それはわかっています、笙パパ。でも……だからこそ僕らは、その絵を見るべきだと思うんです。ツッキーは、僕らにとっても大事な仲間で、部活のメンバーで、最高の友だちなんです」
「……そっか。そうだな、うん! でもね……実は、描き終えた絵は、ここにはないんだ――」
「ええ、もちろんです。よっと……こう、でいかがですか?」
「うん、いいね! さすが弓之助君だ。いつも助かるよ」
ツッキーパパこと笙さんは、僕たちのパーティーを盛り上げようと、色とりどりのさまざまなオーナメントやデコレーションを、段ボールサイズで大量に準備してくれていた。聞けば、友人の経営する輸入雑貨店で、わざわざ本場フィンランドから取り寄せられた品々だという。
それにもすっかり驚かされたのだけれど。
僕らの目下の話題はそちらではなくって。
(ち――ちょっとちょっと、ハカセ! 笙パパから、もう『弓之助君』って呼ばれてるの!?)
(う……! で、ですが、この僕の名が弓之助であることは周知の事実であって、ですね――)
(ふむふむ。パパ公認! ってカンジがしていいですねぇ。僕なんて『そこのお前!』だもん)
(……それは、渋田サブリーダーの言動に、なんらかの問題があるのでは?)
(そ、そういえば、ツッキーがいっつもそう呼んでますもんねー。うふふー、なるほどですー)
(さ、佐倉君まで……。くっ……。なぜこの僕がこのような……)
噛みしめたくちびるから血も出るイキオイで、冷やかしという名の『屈辱』に耐えている五十嵐君。いやいや、そんなに口惜しそうにしなくても……。喜んだっていいくらいなんだぜ。
「おっと。内緒バナシかい? 僕も男子チームなんだから、ぜひ仲間に入れて欲しいんだけど」
そんな僕らの様子をにこやかに見守りつつも、悪戯っぽい笑顔をスパイスして笙パパが言う。それに慌てたのは当の五十嵐君である。
「い、いえいえいえ! こ、これはそのう……な、なんというか……ですね」
「あのですね、『弓之助君』って呼ばれてるなんて仲がよくて羨ましい、って言ってたんです」
「古・ノ・森・リ・ー・ダ・ー・!」
「あははっ! いいじゃないか、弓之助君! 照れるところも、可愛げがあって実にいいんだ」
「ですよね。僕もそう思います」
ココロから笙パパのセリフに同意した僕だったが――こ、これはマズい……僕らのサイコーにイカす頭脳兼マッドなサイエンティストの五十嵐君はかなりご立腹のご様子である。こうなると社会的にも物理的にもキレイさっぱり始末されてしまう可能性すらありえる。ひいいぃっ。
「なんたって、琴ちゃんの、大のお気に入りだからね! 僕もすぐファンになっちゃったんだ」
「あ――ありがとうございま……す……」
そこまでベタ褒めされたら、僕を怒るに怒れなくなってしまった五十嵐君。
助かった……。
ホッとしたついでに、そろそろ話題を変えてあげることにしよう。僕は、もう一度水無月家のそれぞれの部屋を見回して――うん、やっぱり今日もだった。
「そういえば、あの、以前にもお聞きしたかもしれませんけれど、今まで書かれた絵って……」
「そんなに構えなくっていいよ。この前の時は――ちょっと僕も悪かったかな、って思ってさ」
弱ったとばかりに濃栗色の髪の波間を縫うように、ぽり、と頭をかき、笙パパはバツの悪そうな顔をする。たしかにこの前の時は、妙に神経質で感情に流されてしまった印象すらあった。
「ただ……絵を描くなんて凄い、さぞステキな絵なんでしょうね……そうじゃなくてさ? 僕と琴ちゃんにとっては当たり前の日々の光景を描いているだけなんだ、って伝えたかったんだ」
僕らのような『オトナコドモ』ではない、いわゆる世間一般の『オトナ』たちから言われ続けてきたんだろう。
絵を描くなんて凄い――そんな遊び半分で生活できるだなんてうらやましい! さぞステキな絵なんでしょうね――そんなモノにカネを払う物好きもいるんですね! そんな表裏一体の建前と本音。少数派を異端として蔑むことで、安心感を得る人たち。
実際、もはや一般的な職業だと思っていた『ゲーム会社勤務のSE』という職種でさえ、僕らより『オトナ』たちから見れば同じような『コドモのお遊び』感覚で受け取られることが多かった。
若くて活気のある会社――君みたいな年寄りがよくクビにならないな、だの、ITベンチャーは気楽でいい――うまくいかなきゃ潰しちゃえばいいんだし、だのと、さまざまな言葉を頂戴してはげんなりしたものだ。そこからつながる『俺の若い頃は』云々。飽き飽きだ。
「それはわかっています、笙パパ。でも……だからこそ僕らは、その絵を見るべきだと思うんです。ツッキーは、僕らにとっても大事な仲間で、部活のメンバーで、最高の友だちなんです」
「……そっか。そうだな、うん! でもね……実は、描き終えた絵は、ここにはないんだ――」
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