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第411話 俺の若い頃はな…… at 1995/12/25
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ようやく今日から冬休み本番だ。
とは言っても、純美子は今日の午前中の便で母親の郷里である北海道へと旅立ってしまった。戻ってくるのは年明け――ではなく、ラッシュを避けるため、年内には戻ってくるのだという。
ちなみに我が古ノ森家は、今週末に帰ってくるらしい。
なので、この一週間はひとり暮らしというわけだ。
「ま、ありがたいんだけど……特にやることないんだよなぁ……」
ギリギリまで部活はやるかも、という申請を荻島センセイに出してあるので、部室にいってダラダラしていても一向に構わないのだが、どのみち年末は部員たち皆忙しいようで、ひとりで過ごすことには変わりがない。となれば、わざわざ制服に着替える手間が面倒であろう。
こんなとき、今のご時世なら即スマホのSNSアプリを立ち上げて『今ヒマー?』とか聞いてみればなんとかなるのだろうが、なにせケータイですらまだ普及していない時代である。
「ひとんちの家の電話にかけるのって、こんなにハードル高かったんだっけ……うーん……」
ウチはかなり粘りに粘ってから、ジーコロロ……の黒電話からコードレス電話に買い替えた。電波産業会が技術基準を含めた標準規格を策定した1988年の自由化から、コードレス電話は急速に一般家庭に普及していった。最初の機種は、それこそ通話機能しかなかったのである。
買い替え当初に『電話代がイキナリ増えたら困るから長電話禁止!』というおふれが我が家では出されたが、当の僕には、ぼっちに対する嫌味かな? という感想しか湧かなかった。
「えっと、連絡網は、っと……。あ、電話台の上に貼ってあるんだっけ」
指でなぞりながら、目当ての番号を探し出す。手元の子機で番号を押そうとして、意外とカラダは番号を覚えていたようで、さほど苦もなく指が動いた。
プルルル……。
プルルル……。
ああ、市外局番は押す必要なかったんだっけ、などと思いつつぼんやりと呼び出し音を聞き流していると、がちゃり。と音がした。
「もしもし、渋田ですけど」
「お。シブチンか? 僕、僕。古ノ森だよ」
「なんだ、モリケンかー。……何? 電話なんかかけてきて」
「いやいや。ヒマだなぁ、と」
「ヒマですねぇ、と」
「運動部は冬休みも部活やってるのかな?」
「体育館組はやってるみたいだねー。ご苦労なこってすよ」
「………………なぜわかる?」
一瞬、受話器の向こう側で慌てたような騒々しい音が響いた。
「な、なぜって……そ、そりゃあ、体育館の照明が点いてて、黄色いかけ声が聴こえてきたら」
「ふーん………………そういえば、だな――」
ごくり、と渋田の喉が鳴った。
「そろそろ、注文していた高性能望遠鏡がシブチンの家に届いた頃だろうなぁ、と思ってね」
「とっ! 届いてますとも! で、でも、そんなささいなことまで気になさらなくても……」
「そりゃあ、僕も出資者だからね。気にはなるさ。で……?」
「で……? とは?」
「とぼけるな。さっそく使ってみたから部活の様子がわかるんだろ? 着替えもするだろうし」
「………………参りました」
犯行を自供したあとの渋田は、うってかわって饒舌で早口になり、僕ら待望の高性能望遠鏡のすばらしさ、優れた機能について語りはじめた。下手に隠す必要ないだろ、まったく。
「で……来る? 今から? 実はね、その他にも相談したいことがあってさ。プログラムで」
「し、しようがないなぁ。じゃあ、これから支度してお邪魔することにするかぁ。うんうん」
とは言っても、純美子は今日の午前中の便で母親の郷里である北海道へと旅立ってしまった。戻ってくるのは年明け――ではなく、ラッシュを避けるため、年内には戻ってくるのだという。
ちなみに我が古ノ森家は、今週末に帰ってくるらしい。
なので、この一週間はひとり暮らしというわけだ。
「ま、ありがたいんだけど……特にやることないんだよなぁ……」
ギリギリまで部活はやるかも、という申請を荻島センセイに出してあるので、部室にいってダラダラしていても一向に構わないのだが、どのみち年末は部員たち皆忙しいようで、ひとりで過ごすことには変わりがない。となれば、わざわざ制服に着替える手間が面倒であろう。
こんなとき、今のご時世なら即スマホのSNSアプリを立ち上げて『今ヒマー?』とか聞いてみればなんとかなるのだろうが、なにせケータイですらまだ普及していない時代である。
「ひとんちの家の電話にかけるのって、こんなにハードル高かったんだっけ……うーん……」
ウチはかなり粘りに粘ってから、ジーコロロ……の黒電話からコードレス電話に買い替えた。電波産業会が技術基準を含めた標準規格を策定した1988年の自由化から、コードレス電話は急速に一般家庭に普及していった。最初の機種は、それこそ通話機能しかなかったのである。
買い替え当初に『電話代がイキナリ増えたら困るから長電話禁止!』というおふれが我が家では出されたが、当の僕には、ぼっちに対する嫌味かな? という感想しか湧かなかった。
「えっと、連絡網は、っと……。あ、電話台の上に貼ってあるんだっけ」
指でなぞりながら、目当ての番号を探し出す。手元の子機で番号を押そうとして、意外とカラダは番号を覚えていたようで、さほど苦もなく指が動いた。
プルルル……。
プルルル……。
ああ、市外局番は押す必要なかったんだっけ、などと思いつつぼんやりと呼び出し音を聞き流していると、がちゃり。と音がした。
「もしもし、渋田ですけど」
「お。シブチンか? 僕、僕。古ノ森だよ」
「なんだ、モリケンかー。……何? 電話なんかかけてきて」
「いやいや。ヒマだなぁ、と」
「ヒマですねぇ、と」
「運動部は冬休みも部活やってるのかな?」
「体育館組はやってるみたいだねー。ご苦労なこってすよ」
「………………なぜわかる?」
一瞬、受話器の向こう側で慌てたような騒々しい音が響いた。
「な、なぜって……そ、そりゃあ、体育館の照明が点いてて、黄色いかけ声が聴こえてきたら」
「ふーん………………そういえば、だな――」
ごくり、と渋田の喉が鳴った。
「そろそろ、注文していた高性能望遠鏡がシブチンの家に届いた頃だろうなぁ、と思ってね」
「とっ! 届いてますとも! で、でも、そんなささいなことまで気になさらなくても……」
「そりゃあ、僕も出資者だからね。気にはなるさ。で……?」
「で……? とは?」
「とぼけるな。さっそく使ってみたから部活の様子がわかるんだろ? 着替えもするだろうし」
「………………参りました」
犯行を自供したあとの渋田は、うってかわって饒舌で早口になり、僕ら待望の高性能望遠鏡のすばらしさ、優れた機能について語りはじめた。下手に隠す必要ないだろ、まったく。
「で……来る? 今から? 実はね、その他にも相談したいことがあってさ。プログラムで」
「し、しようがないなぁ。じゃあ、これから支度してお邪魔することにするかぁ。うんうん」
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