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第423話 あの頃のように at 1996/1/10
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「モ――モリケン!」
次の日のことだった。
「ちょっと……いいかな? 君と……ハナシがしたいんだ。あと………………謝罪をしたい」
「………………いいけど」
一限目がはじまるまでは余裕がある。僕は『謝罪』とはっきり口にした伏し目がちな少年に向けてうなずいた。無言でついてくるよううながされ、そのまま誰もいない廊下の端まで行く。
「あ……あのさ――?」
「……最初に言っておくよ、ムロ」
僕は、普段の彼とはあまりに違う自信なさげなそぶりにこっそりと溜息をついてから続ける。
「初詣のことは僕たちだけの秘密だ。誰にも言ってないから。それに……なんだかいつもと違いすぎて調子が狂うよ。ムロはいつでもみんなのアイドルなんだから、笑っててくれなくちゃ」
「……難しい、な」
「それでも、だよ、ムロ」
ぎこちない笑みが僕を見つめた。僕は言う。
「ロコに聞いたんだろ? 誤解だった、って。それがわかってもらえたなら十分さ。僕だって、言いたいことを、ひどいことを言った。お互い様だよ。恨んだり、憎んだりなんてしてない」
「ありがとう……ホントにごめんな」
「いいって」
そう言ってから、僕は冷やかすような表情を浮かべて皮肉ってやる。
「ムロがあんなに喧嘩が強いだなんて思ってもなかったぜ。博愛主義者の、非暴力主義者だと思ってたのに。完全にだまされたよ」
「む、夢中だったんだって! そんなにイジるなよ、モリケン……」
「あははは! ごめんごめん! ただ、さ、ムロ――?」
僕は急に真剣な顔つきになって室生の目を真正面から見る。
「初詣のあの時、ロコを怖がらせた奴が、また隙を見つけて近づいてこようとするかもしれないんだ。その時は……ロコを命にかえても守ってやって欲しい。僕からもお願いする、頼むよ」
「でも、それは――!」
「……僕はロコの彼氏じゃない。今ロコの隣に立っているのはムロだろ? 僕じゃないんだよ」
そういうと室生は、しばし黙り込んで、目の前の床の一点をじっと見つめた。
そして、うなずく。
「……わかった。ロコは必ず守る」
「頼りにしてるぜ、ムロ」
それから僕らは、どちらからともなく右手を差し出し、がっちりと堅い握手を交わした。にっ、と互いの顔にココロからの笑顔が浮く。
「なんだかひさしぶりな感じがするよ、モリケン」
「かもしれない。僕は……変わっちゃってたから」
「いいや。モリケンはモリケンだよ……ライバルのね」
「……へへっ。サンキューな、ムロ」
そして、なんとなく肩を組んで教室まで戻る。
予鈴がなるのはまもなくだ。
ふと、なぜだか僕は、小学校時代を思い出していた。
僕とムロと、そしてロコ――三人でこうして肩を組みながら、家までの道、語り合ったっけ。
「……なあ、モリケン? 効率いい勉強の仕方、教わってもいいかな?」
「いやいやいや! そんなそんな! ムロに教えるほど偉くないって!」
「そうだなぁ……じゃ、代わりに恋愛のテクニックを教えるってのは?」
「ゴクリ……! そ……それはぜひ聞きたい! いや、お願いします!」
次の日のことだった。
「ちょっと……いいかな? 君と……ハナシがしたいんだ。あと………………謝罪をしたい」
「………………いいけど」
一限目がはじまるまでは余裕がある。僕は『謝罪』とはっきり口にした伏し目がちな少年に向けてうなずいた。無言でついてくるよううながされ、そのまま誰もいない廊下の端まで行く。
「あ……あのさ――?」
「……最初に言っておくよ、ムロ」
僕は、普段の彼とはあまりに違う自信なさげなそぶりにこっそりと溜息をついてから続ける。
「初詣のことは僕たちだけの秘密だ。誰にも言ってないから。それに……なんだかいつもと違いすぎて調子が狂うよ。ムロはいつでもみんなのアイドルなんだから、笑っててくれなくちゃ」
「……難しい、な」
「それでも、だよ、ムロ」
ぎこちない笑みが僕を見つめた。僕は言う。
「ロコに聞いたんだろ? 誤解だった、って。それがわかってもらえたなら十分さ。僕だって、言いたいことを、ひどいことを言った。お互い様だよ。恨んだり、憎んだりなんてしてない」
「ありがとう……ホントにごめんな」
「いいって」
そう言ってから、僕は冷やかすような表情を浮かべて皮肉ってやる。
「ムロがあんなに喧嘩が強いだなんて思ってもなかったぜ。博愛主義者の、非暴力主義者だと思ってたのに。完全にだまされたよ」
「む、夢中だったんだって! そんなにイジるなよ、モリケン……」
「あははは! ごめんごめん! ただ、さ、ムロ――?」
僕は急に真剣な顔つきになって室生の目を真正面から見る。
「初詣のあの時、ロコを怖がらせた奴が、また隙を見つけて近づいてこようとするかもしれないんだ。その時は……ロコを命にかえても守ってやって欲しい。僕からもお願いする、頼むよ」
「でも、それは――!」
「……僕はロコの彼氏じゃない。今ロコの隣に立っているのはムロだろ? 僕じゃないんだよ」
そういうと室生は、しばし黙り込んで、目の前の床の一点をじっと見つめた。
そして、うなずく。
「……わかった。ロコは必ず守る」
「頼りにしてるぜ、ムロ」
それから僕らは、どちらからともなく右手を差し出し、がっちりと堅い握手を交わした。にっ、と互いの顔にココロからの笑顔が浮く。
「なんだかひさしぶりな感じがするよ、モリケン」
「かもしれない。僕は……変わっちゃってたから」
「いいや。モリケンはモリケンだよ……ライバルのね」
「……へへっ。サンキューな、ムロ」
そして、なんとなく肩を組んで教室まで戻る。
予鈴がなるのはまもなくだ。
ふと、なぜだか僕は、小学校時代を思い出していた。
僕とムロと、そしてロコ――三人でこうして肩を組みながら、家までの道、語り合ったっけ。
「……なあ、モリケン? 効率いい勉強の仕方、教わってもいいかな?」
「いやいやいや! そんなそんな! ムロに教えるほど偉くないって!」
「そうだなぁ……じゃ、代わりに恋愛のテクニックを教えるってのは?」
「ゴクリ……! そ……それはぜひ聞きたい! いや、お願いします!」
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