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第424話 一期一会 at 1996/1/12
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「えー! というわけで、新年一回目の部活もたけなわなのですが――!」
「たけなわ、って。あんたは式場のスタッフか!」
何も言わずとも、オープニングトークで客席をあっためる役を買って出てくれる熟年喧嘩ップル、渋田と咲都子の息の合ったトークは、正月番組で胃もたれ気味だった僕らにしみわたる。
「ごふっ!? ……え、えー、というわけでね。実は、みなさんに、ご、ご報告があるのです」
「ちょ――! あ、あんた、ななな何言い出す気なのよぉ!?」
「? ……ええと……休みの間、モリケンと例の『高精度相性診断プログラム』の仕様書を作る作業をしてまして。……うわわわっ!? ち、ちょっとやめて、サトチン! ごふっ!?」
何か手違いがあったのだろうか。
突如渋田のセリフに珍しく真っ赤になって焦りはじめた咲都子だったのだが、続く渋田のセリフを聞けば聞くほど、その表情はますます赤く――いや、ドス黒く変化していき、最後には渾身のボディブローが渋田のお正月ボケ中のやわらかボディに突き刺さっていたのだ。はて。
「やれやれ、僕が代わろう」
「……っ(気絶している)」
「せっかくみんなにも手伝ってもらったからね。アレをなんとかして今後に活かせないかと思ったんだ。けれど、みんなにも以前話したとおり、今後はWindowsが時代の主流になる」
もちろんこれは『未来を知っているから』ではなく、さまざまなメディアから発表された情報をもとに比較・検討した結果、ということにしてある。僕は居並ぶ部員たちに向けて言う。
「ハカセやツッキーは知っていると思うけど、プログラムを作る際には仕様書がもっとも重要なんだ。どういう動作をして、どういう結果が得られる、カンタンに言うとその積み重ねだね」
「その、シヨーショっていうのが重要なのはわかったけど……それをどう使うの、ケンタ君?」
「それはね、スミちゃん。完璧な仕様書があれば、たとえばWindows上で動く『高精度相性診断プログラム』が作れる、ってことさ。あ、もちろん『作る』って作業はあるんだけど」
「ふーん……なんだかあんまり便利な気もしないけど……」
「かもしれない。プログラマーでもなければ、やたら手間ばかりかかる作業で、ホントに作る意味あるの? って思うかもしれないな。でもね? ロコ――」
僕はそこであらためてみんなの顔を順番に見つめてから、こう続けた。
「僕たちはこの『電算論理研究部』で偶然出会えた仲間だ。でも……もしかすると、同じクラスにいながら、一年間ひとことも話すことがなかったかもしれない、僕はそう思うんだ――」
その僕のセリフに、思わず部員たちはお互いの顔を見合わせた。
そして苦笑いをする。
なによりそれを実感しているのが僕だ。
事実、一周目の僕は、今ではかけがえのない仲間であるみんなのことを知らなかった。
だからこそ、そこから生まれたモノを残したい、そう思ったのだった。
「この『高精度相性診断プログラム』はさ? この先の人生で、出会うことなんてない人と人を結びつける、ちっぽけな可能性を生み出すものだ。それってさ? 今の僕らに似ているし、僕ららしい、ふとそう思ったんだよ、僕はね」
「……かもしれないわね」
「うん、そうだよ、ロコちゃん!」
「ぼ、僕も同感です!」
「ちっぽけな可能性を生み出す、ですか……ふふ、リーダーらしい」
「あ、あたし――!」
最後に声を震わせてそう言ったのは水無月さんだった。
「あたしも、あ、あの子を未来に残してあげたいです! あたしにも手伝わせてください!」
「あの子、って……はは、ツッキーらしいな。助かるよ」
「あ、あたしにとってあの子は、はじめて他の誰かとチカラを合わせて作り上げたモノなんです! ずっと、ずっと閉じこもっていたあたしが、みんなに頼りにされたり、励まされたりしながら、笑ったり、泣いたり、怒ったりして……それから、それから、ス、スキって感情も」
水無月さんが、うっ、と思わず言葉に詰まると、隣からハカセの手が優しく肩に触れた。
「み、みなさんに出会えて本当によかった……そう思えるあたしだからこそ、やりたいんです!」
「たけなわ、って。あんたは式場のスタッフか!」
何も言わずとも、オープニングトークで客席をあっためる役を買って出てくれる熟年喧嘩ップル、渋田と咲都子の息の合ったトークは、正月番組で胃もたれ気味だった僕らにしみわたる。
「ごふっ!? ……え、えー、というわけでね。実は、みなさんに、ご、ご報告があるのです」
「ちょ――! あ、あんた、ななな何言い出す気なのよぉ!?」
「? ……ええと……休みの間、モリケンと例の『高精度相性診断プログラム』の仕様書を作る作業をしてまして。……うわわわっ!? ち、ちょっとやめて、サトチン! ごふっ!?」
何か手違いがあったのだろうか。
突如渋田のセリフに珍しく真っ赤になって焦りはじめた咲都子だったのだが、続く渋田のセリフを聞けば聞くほど、その表情はますます赤く――いや、ドス黒く変化していき、最後には渾身のボディブローが渋田のお正月ボケ中のやわらかボディに突き刺さっていたのだ。はて。
「やれやれ、僕が代わろう」
「……っ(気絶している)」
「せっかくみんなにも手伝ってもらったからね。アレをなんとかして今後に活かせないかと思ったんだ。けれど、みんなにも以前話したとおり、今後はWindowsが時代の主流になる」
もちろんこれは『未来を知っているから』ではなく、さまざまなメディアから発表された情報をもとに比較・検討した結果、ということにしてある。僕は居並ぶ部員たちに向けて言う。
「ハカセやツッキーは知っていると思うけど、プログラムを作る際には仕様書がもっとも重要なんだ。どういう動作をして、どういう結果が得られる、カンタンに言うとその積み重ねだね」
「その、シヨーショっていうのが重要なのはわかったけど……それをどう使うの、ケンタ君?」
「それはね、スミちゃん。完璧な仕様書があれば、たとえばWindows上で動く『高精度相性診断プログラム』が作れる、ってことさ。あ、もちろん『作る』って作業はあるんだけど」
「ふーん……なんだかあんまり便利な気もしないけど……」
「かもしれない。プログラマーでもなければ、やたら手間ばかりかかる作業で、ホントに作る意味あるの? って思うかもしれないな。でもね? ロコ――」
僕はそこであらためてみんなの顔を順番に見つめてから、こう続けた。
「僕たちはこの『電算論理研究部』で偶然出会えた仲間だ。でも……もしかすると、同じクラスにいながら、一年間ひとことも話すことがなかったかもしれない、僕はそう思うんだ――」
その僕のセリフに、思わず部員たちはお互いの顔を見合わせた。
そして苦笑いをする。
なによりそれを実感しているのが僕だ。
事実、一周目の僕は、今ではかけがえのない仲間であるみんなのことを知らなかった。
だからこそ、そこから生まれたモノを残したい、そう思ったのだった。
「この『高精度相性診断プログラム』はさ? この先の人生で、出会うことなんてない人と人を結びつける、ちっぽけな可能性を生み出すものだ。それってさ? 今の僕らに似ているし、僕ららしい、ふとそう思ったんだよ、僕はね」
「……かもしれないわね」
「うん、そうだよ、ロコちゃん!」
「ぼ、僕も同感です!」
「ちっぽけな可能性を生み出す、ですか……ふふ、リーダーらしい」
「あ、あたし――!」
最後に声を震わせてそう言ったのは水無月さんだった。
「あたしも、あ、あの子を未来に残してあげたいです! あたしにも手伝わせてください!」
「あの子、って……はは、ツッキーらしいな。助かるよ」
「あ、あたしにとってあの子は、はじめて他の誰かとチカラを合わせて作り上げたモノなんです! ずっと、ずっと閉じこもっていたあたしが、みんなに頼りにされたり、励まされたりしながら、笑ったり、泣いたり、怒ったりして……それから、それから、ス、スキって感情も」
水無月さんが、うっ、と思わず言葉に詰まると、隣からハカセの手が優しく肩に触れた。
「み、みなさんに出会えて本当によかった……そう思えるあたしだからこそ、やりたいんです!」
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