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第445話 十五の夜(6) at 1996/2/1
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「ねえねえ? コトセが最後に言ってたさ――?」
「『私を信じるな』だろ? 実は僕も少し気になってるんだ」
二人とも掛け布団をかぶり、ほの暗い天井を見つめながら言葉をかわす。お風呂後のカラダから熱が冷め、次第に眠くなってきてしまっていたが、まだ最後のそれが残っていた。
「そんなセリフをわざわざ伝える理由……それがどうにもわからなくってさ。ただでさえ……い、いや、これはやめとこう。忘れてくれ」
「……何よ? 言いかけてやめると余計気になっちゃうじゃんか?」
「あ、あははは……。そうなんだけどさ。……いいか、あくまでこれは僕の妄想の産物だぞ?」
うっかり飛び出したセリフに、引くに引けなくなってしまい、少し間を空けてから僕は言う。
「『コトセ』は、自分のことを『リトライアイテム』だと言っていたよな? 覚えてるだろ?」
「まあ、それは。うん」
「ということはさ……? もしこの『リトライ』のループが終わったら……コトセはどうなるんだろう、って考えたことはないか?」
「――っ」
隣で息を呑む音が聴こえた。
「そ、それは考えすぎじゃない? だって、あんなに――」
「僕だってそう思ってるし、そうであって欲しいとココロから願ってるよ。けどさ――?」
突然ロコは布団をはねのけカラダを起こし、強い語気で僕に言葉を投げつける。
「まさかケンタは、コトセが『リトライが終わらないようにしている』って言いたいの? やっぱり味方じゃなくって敵だって? 嘘でしょ!? 冗談だよね? もう、信じらんない!」
「お、おい、興奮するなって。けど、そういう想像も成り立つよな、ってハナシじゃないか」
「ふン、ばっかみたい!」
「わ、悪かったって。そんなに怒るとは思わなかったんだけど」
「怒るに決まってるじゃん!」
「悪かったよ……。ごめんって」
とたんに気まずい空気が流れる。ロコは、ふン、ともう一度鼻息荒く吐き出すと、布団に潜り込んでさっさと僕と反対側に寝返りをうって背を向けてしまった。僕は必死で言葉を探した。
「あのさ……ホントにごめん。けれど、そのままでいいからもう少し聞いて欲しいんだ」
「……っ」
「もしも本当にコトセが裏切るつもりだったなら、とっくにそうしてると思うんだよ。今まで何回もそのチャンスはあったはずだし、その気さえあれば、ツッキーのフリをしたまま僕らに近づくことだってできた。でも、コトセはそうしなかった。正体を明かして、仲間になった」
こっちに背を向けたままのロコはあいかわらず何も言おうとはしない。けれど、それはつまり、ハナシを続けることを許してくれてるのだ、と僕は都合よく解釈して言葉をつないでいく。
「僕にとってもコトセは、ロコが『リトライ者』だとわかる前の、たったひとりの味方だったんだぜ? 疑いたくなんてない、そうに決まってる。……でもさ? そのコトセがわざわざ限られた時間を使ってまで『私を信じるな』って伝えてきたのには、必ず理由があるはずなんだ」
「――――――だから」
「……え?」
ロコのかすかな囁き声は聞き取れなかった。尋ね返すとロコはいささか乱暴に寝返りをうって、僕の顔を間近から見つめてこう言った。
「そんなのあたしも一緒だから、って言ったの。味方だと思ってるし、大事な仲間。でしょ?」
「だよな。うん」
さすがに僕も眠気が強くなってきて、警戒心がゆるみ始めているようだ。ロコが目と鼻の先に接近していても、あたふたする気力もない。そのままロコのきらきらした瞳を見つめて言う。
「コトセはきっと、これから自分に何が起こるのかを知っているんだ。そして、そうなったら、自分で自分をコントロールできなくなるんじゃないか、って恐れているんじゃないかって思う」
「誰が? 誰に?」
「そこまでは……わからないよ……でも…………コトセの言葉を…………信じて………………やらないと………………」
「『私を信じるな』だろ? 実は僕も少し気になってるんだ」
二人とも掛け布団をかぶり、ほの暗い天井を見つめながら言葉をかわす。お風呂後のカラダから熱が冷め、次第に眠くなってきてしまっていたが、まだ最後のそれが残っていた。
「そんなセリフをわざわざ伝える理由……それがどうにもわからなくってさ。ただでさえ……い、いや、これはやめとこう。忘れてくれ」
「……何よ? 言いかけてやめると余計気になっちゃうじゃんか?」
「あ、あははは……。そうなんだけどさ。……いいか、あくまでこれは僕の妄想の産物だぞ?」
うっかり飛び出したセリフに、引くに引けなくなってしまい、少し間を空けてから僕は言う。
「『コトセ』は、自分のことを『リトライアイテム』だと言っていたよな? 覚えてるだろ?」
「まあ、それは。うん」
「ということはさ……? もしこの『リトライ』のループが終わったら……コトセはどうなるんだろう、って考えたことはないか?」
「――っ」
隣で息を呑む音が聴こえた。
「そ、それは考えすぎじゃない? だって、あんなに――」
「僕だってそう思ってるし、そうであって欲しいとココロから願ってるよ。けどさ――?」
突然ロコは布団をはねのけカラダを起こし、強い語気で僕に言葉を投げつける。
「まさかケンタは、コトセが『リトライが終わらないようにしている』って言いたいの? やっぱり味方じゃなくって敵だって? 嘘でしょ!? 冗談だよね? もう、信じらんない!」
「お、おい、興奮するなって。けど、そういう想像も成り立つよな、ってハナシじゃないか」
「ふン、ばっかみたい!」
「わ、悪かったって。そんなに怒るとは思わなかったんだけど」
「怒るに決まってるじゃん!」
「悪かったよ……。ごめんって」
とたんに気まずい空気が流れる。ロコは、ふン、ともう一度鼻息荒く吐き出すと、布団に潜り込んでさっさと僕と反対側に寝返りをうって背を向けてしまった。僕は必死で言葉を探した。
「あのさ……ホントにごめん。けれど、そのままでいいからもう少し聞いて欲しいんだ」
「……っ」
「もしも本当にコトセが裏切るつもりだったなら、とっくにそうしてると思うんだよ。今まで何回もそのチャンスはあったはずだし、その気さえあれば、ツッキーのフリをしたまま僕らに近づくことだってできた。でも、コトセはそうしなかった。正体を明かして、仲間になった」
こっちに背を向けたままのロコはあいかわらず何も言おうとはしない。けれど、それはつまり、ハナシを続けることを許してくれてるのだ、と僕は都合よく解釈して言葉をつないでいく。
「僕にとってもコトセは、ロコが『リトライ者』だとわかる前の、たったひとりの味方だったんだぜ? 疑いたくなんてない、そうに決まってる。……でもさ? そのコトセがわざわざ限られた時間を使ってまで『私を信じるな』って伝えてきたのには、必ず理由があるはずなんだ」
「――――――だから」
「……え?」
ロコのかすかな囁き声は聞き取れなかった。尋ね返すとロコはいささか乱暴に寝返りをうって、僕の顔を間近から見つめてこう言った。
「そんなのあたしも一緒だから、って言ったの。味方だと思ってるし、大事な仲間。でしょ?」
「だよな。うん」
さすがに僕も眠気が強くなってきて、警戒心がゆるみ始めているようだ。ロコが目と鼻の先に接近していても、あたふたする気力もない。そのままロコのきらきらした瞳を見つめて言う。
「コトセはきっと、これから自分に何が起こるのかを知っているんだ。そして、そうなったら、自分で自分をコントロールできなくなるんじゃないか、って恐れているんじゃないかって思う」
「誰が? 誰に?」
「そこまでは……わからないよ……でも…………コトセの言葉を…………信じて………………やらないと………………」
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