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第450話 全国模試 at 1996/2/8
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「えー。前々からお話ししていたとおりね、来週、一週間後に全国模試がありますからね」
LHRで荻島センセイがとぼけた顔つきでそう言うと、たちまち教室内に生徒たちの悲鳴があがった。かくいうこの僕もまた、その悲鳴をあげた生徒の中のひとりだ。
(すっかり忘れてた……。くそ……なにもこんな時に……!)
模試自体にはさほど抵抗はない僕だけれど、この切羽詰まったタイミングで時間を削られてしまうのがなにより痛かった。それに『電算論理研究部』の仲間たちを集めて勉強会を開催する必要も出てくるだろう。なかでも、僕と同じ立場であるはずのロコが一番の不安要素だった。
「えー、じゃありませんよ」
道化師のようにことさら大きく目を剥いて驚いたフリをしてから、荻島センセイは厳めしく太い眉をそびやかした。それから、わざと生徒たちの方へ顔を向けずにそっけなく言い放つ。
「私、年初めに言いましたし、みなさんへの年賀状にも書きましたよ? ……みなさん、三月からは受験生になるんです。その手始めに行われるのが来週の進研ゼミの全国模試ですからね」
「それを受けると、なんかいいことあるんスかー?」
「はい、いい質問きましたね――」
当事者が発するにはのんびりしすぎて緊張感のない質問だったが、荻島センセイは顔を正面に向け微笑みを浮かべると、チョークを手に取ってカンタンな図を描きながら説明をはじめる。
「――この全国模試では、現時点での君たちの学力レベルがどのくらいかを教えてくれます。ここで重要なのは、あくまで『現時点での学力』だよ、ということです。今ダメだからダメ、そうじゃありません。ダメな部分、足りない部分を早めに見つけ出せれば弱点は克服できます」
「なんとか判定、とかいうアレですよね?」
「それだけじゃないですよ?」
また別の、女子生徒からの質問に、荻島センセイはうんうんとうなずきながら続けた。
「君たちは、自分の行きたい高校を選んで模試を受けることになります。都立も私立も選べますし、複数書いても大丈夫。この際、書けるだけ書いちゃいましょう。模試の結果、その学校へ入れるレベルに達しているかどうかが判定されます。あと、受験した生徒の中での順位もね」
荻島センセイのセリフを聞いて、たちまち教室内が騒がしくなった。
ね? ね? どこ受けるー? だったり、順位出ちゃうのヤダー! だったり、お? だったらどっちが上か賭けしようぜ! だったり。しばらくは、にこにこ、と微笑ましく耳を傾けていたセンセイだったが。
――ぱん、ぱん。
「はいはい、そこまで、そこまで。とりあえずLHRはこれで終わりにしますよ。何か聞きたいことがあったら職員室まで来てくださいねー。では、日直の人、帰りの挨拶お願いします」
起立――気をつけ――礼。
さよーならー! のかけ声もそこそこに、さっきの騒がしさに輪をかけて教室内がにぎやかさを増した。普段なかよくしている生徒同士が寄り集まって、どうする? どこ受ける? などと盛り上がっている。その中には、当然僕の仲間たちの姿も見えた。
「ど、どうします? 古ノ森リーダーはもう決めてあるんですか? ぼ、僕、不安だなぁ……」
「不安ったって、受けてみるしかないじゃんよ、かえでちゃん! 気合よ、気合っ!」
「いやいやいや! 気合とチカラだけじゃ何も解決しないからね、サトチン」
「となると……やはり今週あたりからやりますか、古ノ森リーダー?」
落ち着き払ったハカセのひとことに僕は迷いなくうなずいてみせた。
「……やろう。全国模試に向けた勉強会を。中間テストの代わりだと思えば、ちょうどいいし」
集まった顔をひとつひとつ見つめながら僕は言う。
最後の純美子が胸元で拳を握り締めた。
「よーし! あたしもがんばらないとねっ!」
「モリケンと同じ高校行くなら、でしょ? スミ? 涙ぐましい感動ラブストーリーだわー!」
「サ、サトちゃんっ!? も、もう……っ!」
LHRで荻島センセイがとぼけた顔つきでそう言うと、たちまち教室内に生徒たちの悲鳴があがった。かくいうこの僕もまた、その悲鳴をあげた生徒の中のひとりだ。
(すっかり忘れてた……。くそ……なにもこんな時に……!)
模試自体にはさほど抵抗はない僕だけれど、この切羽詰まったタイミングで時間を削られてしまうのがなにより痛かった。それに『電算論理研究部』の仲間たちを集めて勉強会を開催する必要も出てくるだろう。なかでも、僕と同じ立場であるはずのロコが一番の不安要素だった。
「えー、じゃありませんよ」
道化師のようにことさら大きく目を剥いて驚いたフリをしてから、荻島センセイは厳めしく太い眉をそびやかした。それから、わざと生徒たちの方へ顔を向けずにそっけなく言い放つ。
「私、年初めに言いましたし、みなさんへの年賀状にも書きましたよ? ……みなさん、三月からは受験生になるんです。その手始めに行われるのが来週の進研ゼミの全国模試ですからね」
「それを受けると、なんかいいことあるんスかー?」
「はい、いい質問きましたね――」
当事者が発するにはのんびりしすぎて緊張感のない質問だったが、荻島センセイは顔を正面に向け微笑みを浮かべると、チョークを手に取ってカンタンな図を描きながら説明をはじめる。
「――この全国模試では、現時点での君たちの学力レベルがどのくらいかを教えてくれます。ここで重要なのは、あくまで『現時点での学力』だよ、ということです。今ダメだからダメ、そうじゃありません。ダメな部分、足りない部分を早めに見つけ出せれば弱点は克服できます」
「なんとか判定、とかいうアレですよね?」
「それだけじゃないですよ?」
また別の、女子生徒からの質問に、荻島センセイはうんうんとうなずきながら続けた。
「君たちは、自分の行きたい高校を選んで模試を受けることになります。都立も私立も選べますし、複数書いても大丈夫。この際、書けるだけ書いちゃいましょう。模試の結果、その学校へ入れるレベルに達しているかどうかが判定されます。あと、受験した生徒の中での順位もね」
荻島センセイのセリフを聞いて、たちまち教室内が騒がしくなった。
ね? ね? どこ受けるー? だったり、順位出ちゃうのヤダー! だったり、お? だったらどっちが上か賭けしようぜ! だったり。しばらくは、にこにこ、と微笑ましく耳を傾けていたセンセイだったが。
――ぱん、ぱん。
「はいはい、そこまで、そこまで。とりあえずLHRはこれで終わりにしますよ。何か聞きたいことがあったら職員室まで来てくださいねー。では、日直の人、帰りの挨拶お願いします」
起立――気をつけ――礼。
さよーならー! のかけ声もそこそこに、さっきの騒がしさに輪をかけて教室内がにぎやかさを増した。普段なかよくしている生徒同士が寄り集まって、どうする? どこ受ける? などと盛り上がっている。その中には、当然僕の仲間たちの姿も見えた。
「ど、どうします? 古ノ森リーダーはもう決めてあるんですか? ぼ、僕、不安だなぁ……」
「不安ったって、受けてみるしかないじゃんよ、かえでちゃん! 気合よ、気合っ!」
「いやいやいや! 気合とチカラだけじゃ何も解決しないからね、サトチン」
「となると……やはり今週あたりからやりますか、古ノ森リーダー?」
落ち着き払ったハカセのひとことに僕は迷いなくうなずいてみせた。
「……やろう。全国模試に向けた勉強会を。中間テストの代わりだと思えば、ちょうどいいし」
集まった顔をひとつひとつ見つめながら僕は言う。
最後の純美子が胸元で拳を握り締めた。
「よーし! あたしもがんばらないとねっ!」
「モリケンと同じ高校行くなら、でしょ? スミ? 涙ぐましい感動ラブストーリーだわー!」
「サ、サトちゃんっ!? も、もう……っ!」
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