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第451話 いいことばかりじゃ at 1996/2/9
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『――というわけでさ……早速で悪いんだけど……』
『遠慮しなくていいって。この期間は部活どころじゃないし、クラスメイトなんだからさ』
とかいう会話があって、勉強会二日目の今日の部室には、僕ら『電算論理研究部』の部員の他に、イケメングループのリーダー、室生の姿があった。
初詣のひと騒動でガチ喧嘩にまで発展した僕と室生だったけれど、その後の登校三日目に室生からの謝罪をきっかけに和解、そこで、勉強を教えて欲しい、という申し出があったからだ。
「なんだー、ムロ、結構解けるんじゃーん! すごーい!」
「い、いや、まあね。それなりにがんばってはいるからさ」
室生の隣には当然ロコが。いまだに二人揃っている光景を見ると、僕のココロは妙にむずむずしてしまうのだけれど、例の『代行者』のひとり、未来のロコの結婚相手となるはずの『大月大輔』の動向が気になっていた。あれきり姿を見せることはなかったけれど、二人が目の届く範囲にいれば安心だし、室生ともなにかと連絡・連携が取りやすくなるだろう。悪くない。
ただし――だ。
「――という解になるのです。ここまでのところはわかりましたか? ……ん? ツッキー?」
「あ……あっ、は、はいっ」
いいことばかりではないらしい。
一月最後の日に、コトセから切迫したフンイキの短いメッセージをスマホ越しに受け取ってからというものの、どうも水無月さんの様子がわずかずつ変わっているようなのだった。
『なにか心配ごとがあるようなのですが……この僕にさえ明かそうとはしてくれないのです』
僕はなにせ根が単純なものだから、この寒さでカラダの調子が今ひとつ出ないのかな、くらいの認識でいたのだけれど、ずっとそばにいて水無月さんのことを一から十まで知り尽くしている筋金入りの『ツッキーマニア』ハカセは一味違っていた。むしろ体調は悪くないという。
『どうやら笙さんに関係することらしいのですけれど……さすがにそこまでは踏み込めなくて』
『聞いて欲しい悩みならば、ハカセに真っ先に相談してくれるさ。今は見守ってあげようよ』
『ですね……すみません、古ノ森リーダー』
そんなやりとりをハカセとしたばかりだというのに、今日の水無月さんはどこかうわの空で、こと女の子のこととなるとかなり鈍感な僕が見ても、いつもと様子が明らかに違っていた。
(もしかして……コトセのことが原因だったりするのかな……? それは考え過ぎか……?)
コトセは最後のメッセージの中で、自由に身動きが取れない事態に陥ってしまったことを匂わせていた。水無月さんの言動はコトセに筒抜けらしいが、その逆はないと言っていたが、潜在意識的な部分で水無月さんがコトセの存在を感じ取っていて、それが希薄になったことから身体的・精神的バランスを崩してしまったのだろうか。ありうるハナシだ。
それに、水無月さんにとってのコトセは、悪い感情、黒い衝動の退避場所にもなっていた。それらの処理をコトセが一手に引き受けていたことで、水無月さんは憎しみや恨みといった『負の感情』から遠ざけられてきたのだ。
だが、そのコトセがいなくなってしまったら?
『いいか、古ノ森――琴世に話すな。聞かせるな』
とはいえ、それがコトセからの伝言のひとつだ。
余計な手を出さず口を挟まず、見守るよりほかになさそうだ。
いや――待てよ?
「あのさ、ちょっといいかな、ハカセ?」
「はい?」
いぶかしがる五十嵐君の腕をつかむと、靴下のまま部室の外へ出た。床の冷たさがしみる。
「なんでしょう? 古ノ森リーダー?」
「先週さ、部活の途中でツッキーと二人で抜けて、そのまま戻って来なかったじゃんか?」
「……ええ。古ノ森リーダーにだけは、お話ししておいた方がよさそうですね。実は――」
ふむふむ――なるほど。悪くない――僕の浮かない顔に、つかの間の笑みが戻っていた。
『遠慮しなくていいって。この期間は部活どころじゃないし、クラスメイトなんだからさ』
とかいう会話があって、勉強会二日目の今日の部室には、僕ら『電算論理研究部』の部員の他に、イケメングループのリーダー、室生の姿があった。
初詣のひと騒動でガチ喧嘩にまで発展した僕と室生だったけれど、その後の登校三日目に室生からの謝罪をきっかけに和解、そこで、勉強を教えて欲しい、という申し出があったからだ。
「なんだー、ムロ、結構解けるんじゃーん! すごーい!」
「い、いや、まあね。それなりにがんばってはいるからさ」
室生の隣には当然ロコが。いまだに二人揃っている光景を見ると、僕のココロは妙にむずむずしてしまうのだけれど、例の『代行者』のひとり、未来のロコの結婚相手となるはずの『大月大輔』の動向が気になっていた。あれきり姿を見せることはなかったけれど、二人が目の届く範囲にいれば安心だし、室生ともなにかと連絡・連携が取りやすくなるだろう。悪くない。
ただし――だ。
「――という解になるのです。ここまでのところはわかりましたか? ……ん? ツッキー?」
「あ……あっ、は、はいっ」
いいことばかりではないらしい。
一月最後の日に、コトセから切迫したフンイキの短いメッセージをスマホ越しに受け取ってからというものの、どうも水無月さんの様子がわずかずつ変わっているようなのだった。
『なにか心配ごとがあるようなのですが……この僕にさえ明かそうとはしてくれないのです』
僕はなにせ根が単純なものだから、この寒さでカラダの調子が今ひとつ出ないのかな、くらいの認識でいたのだけれど、ずっとそばにいて水無月さんのことを一から十まで知り尽くしている筋金入りの『ツッキーマニア』ハカセは一味違っていた。むしろ体調は悪くないという。
『どうやら笙さんに関係することらしいのですけれど……さすがにそこまでは踏み込めなくて』
『聞いて欲しい悩みならば、ハカセに真っ先に相談してくれるさ。今は見守ってあげようよ』
『ですね……すみません、古ノ森リーダー』
そんなやりとりをハカセとしたばかりだというのに、今日の水無月さんはどこかうわの空で、こと女の子のこととなるとかなり鈍感な僕が見ても、いつもと様子が明らかに違っていた。
(もしかして……コトセのことが原因だったりするのかな……? それは考え過ぎか……?)
コトセは最後のメッセージの中で、自由に身動きが取れない事態に陥ってしまったことを匂わせていた。水無月さんの言動はコトセに筒抜けらしいが、その逆はないと言っていたが、潜在意識的な部分で水無月さんがコトセの存在を感じ取っていて、それが希薄になったことから身体的・精神的バランスを崩してしまったのだろうか。ありうるハナシだ。
それに、水無月さんにとってのコトセは、悪い感情、黒い衝動の退避場所にもなっていた。それらの処理をコトセが一手に引き受けていたことで、水無月さんは憎しみや恨みといった『負の感情』から遠ざけられてきたのだ。
だが、そのコトセがいなくなってしまったら?
『いいか、古ノ森――琴世に話すな。聞かせるな』
とはいえ、それがコトセからの伝言のひとつだ。
余計な手を出さず口を挟まず、見守るよりほかになさそうだ。
いや――待てよ?
「あのさ、ちょっといいかな、ハカセ?」
「はい?」
いぶかしがる五十嵐君の腕をつかむと、靴下のまま部室の外へ出た。床の冷たさがしみる。
「なんでしょう? 古ノ森リーダー?」
「先週さ、部活の途中でツッキーと二人で抜けて、そのまま戻って来なかったじゃんか?」
「……ええ。古ノ森リーダーにだけは、お話ししておいた方がよさそうですね。実は――」
ふむふむ――なるほど。悪くない――僕の浮かない顔に、つかの間の笑みが戻っていた。
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