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第491話 男たちのバンカー(2) at 1996/3/1
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その後である。
「はぁ……」
「マジ疲れた……」
『好きだから、あげる。』のキャッチコピーが躍る――煽る、とも言う――丸井をあとにした僕らは、次に『トレンドファッションの情報発信基地』を掲げるジョルナへと向かい再び打ちのめされ、東急百貨店をぐるぐると駆けのぼって連絡通路経由で東急スポーツ館に向かうもやはり返り討ちに逢い、それでもなんとか町田大丸・小田急百貨店を駆け抜けて、いささか早足ではあったものの室生ガイドによるウインドウ・ショッピング・ツアーを終えたのだった。
で。
「やっぱ、俺様たちには早かったんだ……ムロみてぇなファッションマスターになるだなんて」
「ホントだよね……なんか情報量が多すぎて、熱出てきたもん。お? それ、似合いそうだね」
「……だろ? スカジャン、イイよな! ケミカルウォッシュの極太ジーンズに板バンで決めてよ?」
「急に元気出てきたね、君たち……」
ファッションにうとい僕らにとっての安息の地、避難所であり掩蔽壕と言えば、やっぱり安定の『ジーンズショップ・マルカワ』だ。どこをどう間違ったのか、今は三人――主にうきうきしているのは僕と小山田だけだったが――で自分の欲しい服を物色しているという状況である。
「で……どうだった? なんか参考になるものとか、発見とかはあったかい?」
「参考、発見、か……。うーん、そうだなぁ……」
小山田は手にしたスカジャンの、背面部のやや光沢のある紫色を名残惜しそうにひと撫でしてから、室生に向けて同情しきりの顔つきでこうこたえる。
「ムロって、毎年すっげぇ苦労してんだなぁって思ったぜ。うらやましいって思うのはやめた」
「たしかに。もらったら、お返ししないとだもんね」
「い――いやいやいや……僕のことじゃなくってさ……」
室生にしては珍しく、はぁ、とがっくり肩を落とし、疲れ果てたように溜息をついた。
「まさか……今日、なんのために来たのか……忘れてやしないかい?」
う、と返す言葉を失う僕たち。
もうついていくことだけで必死で、そういえば純美子にあげるホワイト・デーのお返しをなににするかなんて、結局わからずじまいだ。隣を見るともっとひどい表情をしている小山田が。
「「……すみません」」
「い、いいって!」
室生は慌てて顔の前で手を振ると、しょんぼりしている僕らの頭を上げさせる。
「今日一日でなんとかできるとは思ってなかったからね。でもさ? プレゼントってひとことで言っても、いろいろあるってことはわかったよね? だから、今日の経験をもとにさ――」
たしかに室生の言うとおりだ。
クッキーかキャンディが定番で無難かな、と考えていた僕だったが、お菓子とひとくちに言ってもかなりの数の選択肢があった。それに、この当時では、一年前から『カヌレ』ブームが到来していたことをうすぼんやりと思い出したのだ。ジョシは流行り物に目がない。たぶん。
また、スイーツ系じゃなくてアクセサリーやポーチのようなメイク用の小物、ぬいぐるみなんてものも特設売場にて多く見かけた。さすがに下着とかはアレでも、ちょっと高級感のある文具とか、背伸びしたカンジのコスメとか香水とか、それもアリだなぁと思ったのである。
なので、今日のところはいったん『勇気ある撤退』をして、じっくり考えてからまた来よう、と僕は考えていた。
だが――。
「……ダッチ? ちょっと、聞いてる――?」
「おい、ムロ、キンプリ……俺様ぁ、決めたぜ! ほら、見てみろ。アレっきゃねえだろ!?」
「はぁ……」
「マジ疲れた……」
『好きだから、あげる。』のキャッチコピーが躍る――煽る、とも言う――丸井をあとにした僕らは、次に『トレンドファッションの情報発信基地』を掲げるジョルナへと向かい再び打ちのめされ、東急百貨店をぐるぐると駆けのぼって連絡通路経由で東急スポーツ館に向かうもやはり返り討ちに逢い、それでもなんとか町田大丸・小田急百貨店を駆け抜けて、いささか早足ではあったものの室生ガイドによるウインドウ・ショッピング・ツアーを終えたのだった。
で。
「やっぱ、俺様たちには早かったんだ……ムロみてぇなファッションマスターになるだなんて」
「ホントだよね……なんか情報量が多すぎて、熱出てきたもん。お? それ、似合いそうだね」
「……だろ? スカジャン、イイよな! ケミカルウォッシュの極太ジーンズに板バンで決めてよ?」
「急に元気出てきたね、君たち……」
ファッションにうとい僕らにとっての安息の地、避難所であり掩蔽壕と言えば、やっぱり安定の『ジーンズショップ・マルカワ』だ。どこをどう間違ったのか、今は三人――主にうきうきしているのは僕と小山田だけだったが――で自分の欲しい服を物色しているという状況である。
「で……どうだった? なんか参考になるものとか、発見とかはあったかい?」
「参考、発見、か……。うーん、そうだなぁ……」
小山田は手にしたスカジャンの、背面部のやや光沢のある紫色を名残惜しそうにひと撫でしてから、室生に向けて同情しきりの顔つきでこうこたえる。
「ムロって、毎年すっげぇ苦労してんだなぁって思ったぜ。うらやましいって思うのはやめた」
「たしかに。もらったら、お返ししないとだもんね」
「い――いやいやいや……僕のことじゃなくってさ……」
室生にしては珍しく、はぁ、とがっくり肩を落とし、疲れ果てたように溜息をついた。
「まさか……今日、なんのために来たのか……忘れてやしないかい?」
う、と返す言葉を失う僕たち。
もうついていくことだけで必死で、そういえば純美子にあげるホワイト・デーのお返しをなににするかなんて、結局わからずじまいだ。隣を見るともっとひどい表情をしている小山田が。
「「……すみません」」
「い、いいって!」
室生は慌てて顔の前で手を振ると、しょんぼりしている僕らの頭を上げさせる。
「今日一日でなんとかできるとは思ってなかったからね。でもさ? プレゼントってひとことで言っても、いろいろあるってことはわかったよね? だから、今日の経験をもとにさ――」
たしかに室生の言うとおりだ。
クッキーかキャンディが定番で無難かな、と考えていた僕だったが、お菓子とひとくちに言ってもかなりの数の選択肢があった。それに、この当時では、一年前から『カヌレ』ブームが到来していたことをうすぼんやりと思い出したのだ。ジョシは流行り物に目がない。たぶん。
また、スイーツ系じゃなくてアクセサリーやポーチのようなメイク用の小物、ぬいぐるみなんてものも特設売場にて多く見かけた。さすがに下着とかはアレでも、ちょっと高級感のある文具とか、背伸びしたカンジのコスメとか香水とか、それもアリだなぁと思ったのである。
なので、今日のところはいったん『勇気ある撤退』をして、じっくり考えてからまた来よう、と僕は考えていた。
だが――。
「……ダッチ? ちょっと、聞いてる――?」
「おい、ムロ、キンプリ……俺様ぁ、決めたぜ! ほら、見てみろ。アレっきゃねえだろ!?」
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