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第496話 男たちのバンカー・アフター(1) at 1996/3/1
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「そ、そんな……そんなことって………………!」
耳を聾する喝采から切り離されたかのように、僕の聴覚は徐々に麻痺しはじめ、まるで深い海の底に沈められてしまったかのように、すべてがぼんやりと、すべてがあいまいになった。
どうして――どうして『DRR』の予知が外れたんだ!?
(いや――予知じゃない、過去に実際に起こった出来事の『再現』のはずだっただろ――?)
つまり――どういうことなんだ?
今、ここで一体、何が起きている!?
と――とん、肩に手が添えられた。その妙に懐かしい温もりで、僕の意識は一瞬にして現実世界へと引き戻された。
「……おいおい、モリケン! そんなにがっかりすんなって! しょげすぎだろ、あははは!」
小山田だった。なんだかとっても嬉しそうだ。
それだけに――僕は無性に悔しくなった。
思わず涙がにじむ。
「勝て……なかった……! 絶対に……勝ちたかったのに……! これだけは……絶対に……」
「ばぁか。ンなモン、どうでもいいだろ」
「……え? だ、だって――!」
もはや半べそをかきながら僕が声にならない叫びを上げると、小山田はわざとらしく視線をそらす。俺様は、てめぇの泣き顔なんて見てねぇからな――? そう言っているようだった。
「……いーんだよ。俺様は、俺は、そうやって悔しがってくれるだけでうれしーんだ。友だちなんて……もういらねえ、二度と信じてたまるか、そう思ってたんだからよ。だから――よ」
にっ、と笑ってみせる。その顔があまりにもまぶしくって、僕はもう少しだけ泣いた。隣に立つ室生も、嬉しそうだ。もちろん、誰もが悔しい。悔しいんだけれど、それでも嬉しかった。
「ま。これでプレゼントはゲットできたしな! 問題ねぇよ」
「………………おぅ。ちょっと顔貸せや、ガキども?」
それは突然だった。
さっきまでは愛想をふりまいていた口上売りが気づけばそこにいて、彼本来の底冷えのする恫喝を含んだ声音で僕らを呼び止め、顎で指図した。一瞬だけ元の口上売りの顔と声に戻ると『ごめんなさいねー! ちょっとおションベンを――!』と笑いを取って、再び僕らを睨む。
たちまち小山田が身構えた。
室生と僕も、その両脇を固める。
「な――なんでぇ? 俺様たちはなにも迷惑なんざかけてねぇだろうが――?」
「……阿呆。誤解すんじゃねえよ。ちぃーっとばかりお話ししてみたくなっただけさ。来いって」
若い口上売りの凄みは変わらなかったものの、口調はいくぶん呆れたようにくだけていた。ポケットから取り出したくしゃくしゃになったハイライトから一本取り出し、口にくわえる。
「……煙ぃんだけど?」
「我慢しろって。こちとらずっと辛抱してたんだからよ。……よし、このへんでいいだろう」
マルカワの裏手の、狭い路地の突き当りに置いてあった青いポリバケツの上に、男は、どっか、とあぐらをかくように座り込んだ。よくよく見れば、その頬にはうすい切り傷があった。
「さっきのは面白かったな。つーかよ、お前らのおかげで、今日は楽できそうだわ。助かった」
振り返ってみると、特設激安バーゲンセールは大盛況の様子だった。どうやら僕らとのやりとりで、そのお買い得さ加減と同時に、品質の保証までされたように錯覚しているのだろう。
「あれな? どっかの社長うんぬんってのは嘘だ。まあ、訳アリってヤツでね……おっと、合法だぞ?」
「ち――だろうと思ったぜ。くそっ」
悔しがる小山田に向けて男は、煙草のケムリの輪を、ほわり、と飛ばしながらぼんやり言う。
「でもよ? お前のそれは、神仏に誓って正真正銘マジモンだぜ。だから、負けられなかった――」
耳を聾する喝采から切り離されたかのように、僕の聴覚は徐々に麻痺しはじめ、まるで深い海の底に沈められてしまったかのように、すべてがぼんやりと、すべてがあいまいになった。
どうして――どうして『DRR』の予知が外れたんだ!?
(いや――予知じゃない、過去に実際に起こった出来事の『再現』のはずだっただろ――?)
つまり――どういうことなんだ?
今、ここで一体、何が起きている!?
と――とん、肩に手が添えられた。その妙に懐かしい温もりで、僕の意識は一瞬にして現実世界へと引き戻された。
「……おいおい、モリケン! そんなにがっかりすんなって! しょげすぎだろ、あははは!」
小山田だった。なんだかとっても嬉しそうだ。
それだけに――僕は無性に悔しくなった。
思わず涙がにじむ。
「勝て……なかった……! 絶対に……勝ちたかったのに……! これだけは……絶対に……」
「ばぁか。ンなモン、どうでもいいだろ」
「……え? だ、だって――!」
もはや半べそをかきながら僕が声にならない叫びを上げると、小山田はわざとらしく視線をそらす。俺様は、てめぇの泣き顔なんて見てねぇからな――? そう言っているようだった。
「……いーんだよ。俺様は、俺は、そうやって悔しがってくれるだけでうれしーんだ。友だちなんて……もういらねえ、二度と信じてたまるか、そう思ってたんだからよ。だから――よ」
にっ、と笑ってみせる。その顔があまりにもまぶしくって、僕はもう少しだけ泣いた。隣に立つ室生も、嬉しそうだ。もちろん、誰もが悔しい。悔しいんだけれど、それでも嬉しかった。
「ま。これでプレゼントはゲットできたしな! 問題ねぇよ」
「………………おぅ。ちょっと顔貸せや、ガキども?」
それは突然だった。
さっきまでは愛想をふりまいていた口上売りが気づけばそこにいて、彼本来の底冷えのする恫喝を含んだ声音で僕らを呼び止め、顎で指図した。一瞬だけ元の口上売りの顔と声に戻ると『ごめんなさいねー! ちょっとおションベンを――!』と笑いを取って、再び僕らを睨む。
たちまち小山田が身構えた。
室生と僕も、その両脇を固める。
「な――なんでぇ? 俺様たちはなにも迷惑なんざかけてねぇだろうが――?」
「……阿呆。誤解すんじゃねえよ。ちぃーっとばかりお話ししてみたくなっただけさ。来いって」
若い口上売りの凄みは変わらなかったものの、口調はいくぶん呆れたようにくだけていた。ポケットから取り出したくしゃくしゃになったハイライトから一本取り出し、口にくわえる。
「……煙ぃんだけど?」
「我慢しろって。こちとらずっと辛抱してたんだからよ。……よし、このへんでいいだろう」
マルカワの裏手の、狭い路地の突き当りに置いてあった青いポリバケツの上に、男は、どっか、とあぐらをかくように座り込んだ。よくよく見れば、その頬にはうすい切り傷があった。
「さっきのは面白かったな。つーかよ、お前らのおかげで、今日は楽できそうだわ。助かった」
振り返ってみると、特設激安バーゲンセールは大盛況の様子だった。どうやら僕らとのやりとりで、そのお買い得さ加減と同時に、品質の保証までされたように錯覚しているのだろう。
「あれな? どっかの社長うんぬんってのは嘘だ。まあ、訳アリってヤツでね……おっと、合法だぞ?」
「ち――だろうと思ったぜ。くそっ」
悔しがる小山田に向けて男は、煙草のケムリの輪を、ほわり、と飛ばしながらぼんやり言う。
「でもよ? お前のそれは、神仏に誓って正真正銘マジモンだぜ。だから、負けられなかった――」
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