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第516話 二人とふたり(2) at 1996/3/19
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「そう……だったのか……」
きっとその瞬間、世界でもっとも幸せな家族になるはずだった水無月家。
だが、運命は彼らに残酷な試練を与えた。
ひとりとひとりを残し。
ひとりとひとりが旅立った。
大切な人を二度も失った水無月笙のキモチは、到底僕には理解なぞできないのだろう。
そして、非情なる運命の神は、さらなる過酷な試練を彼らに課したのだ。
ツッキーのカラダを容赦なく蝕む病魔――『慢性白血病』。
いずれ死に至る不治の病。
「水無月笙さん……だからあなたは、この『リトライ』でその運命に抗おうとしたんですね?」
「ちょ――ちょっと待ってくれ!」
だが、どうもおかしい。
水無月笙は困惑しきった表情で僕のセリフをさえぎった。
「こ、古ノ森リーダー君!? その……君の言う『リトライ』っていうのはなんのことだい?」
「………………え!?」
「ぼ、僕はただ、必死に願って、その願いを叶えようと神仏に頼っただけの意気地なしさ」
慌てて説明をしはじめた水無月笙の表情や額に浮いた汗を見る限り、嘘はないように見える。
「ほ、ほら、昔から『奉納』って儀式があるじゃないか。たまたま神社の宮司をしている知り合いがいたからね、無理矢理頼み込んで、毎週通って絵を描いていただけなんだ。その……君の言う『リトライ』っていうのは知らないよ。一体君は……なんのハナシをしているんだい?」
「『リトライ者』じゃ……ないだって……!?」
――パシャッ!
僕は疑問を確信に変えようと、制服のブレザーの内ポケットに手を挿し入れ、愛用のスマートフォンを取り出すと、構える間も惜しんで水無月笙に照準を合わせてシャッターを切った。
「……? お、脅かさないでくれよ。そのポーズ……流行ってるのかい?」
「そんな……そんなことがあるのか……?」
フラッシュが自動点灯し、薄暗かった室内は一瞬真っ白に輝いた。しかしそれでも、目の前に立つ水無月笙は、僕の一連の動作には驚いたようだったけれど、まばゆさに目を閉じることすらしなかった。ただ、不思議そうに僕の姿を眺めていただけだ。僕はその隣に視線を移した。
「どういうことなんだ、コトセ!?」
「……何がだ?」
「水無月笙――君のパパが『リトライ者』じゃないなんて。なのに、どうして――?」
「どうして『リトライアイテム』を持っているのかと言いたいのかね? これは推論だが――」
コトセは、ふむ、としばし黙考すると、こう続けた。
「……たぶん、なろうとしている最中なのではないだろうか。今はまだ普通のニンゲンに過ぎないが、『あの絵』の完成と私の『死』が一種のトリガーとなって、完全に能力を発揮する」
「そう……かもしれないな」
僕は混乱し錯綜する情報を必死に整理しながらも、どこか妙な違和感を覚えていた。だが、うまくそれをカタチにできない。イメージをカタチ作れない。
ええい、今は後まわしだ。
先に片付けるべきことがある。
「笙さん、聞いてください」
僕は迷いを捨てて切り出した。
「あなたが叶えようとしている『願い』とは何か教えて欲しいんです。それを知りたいんです」
水無月笙はその問いを耳にして、コトセを瞳の中に封じ込めでもするかのようにしっかりと閉じ、僕を真正面から見つめてこう告げる。
「琴ちゃんたちが永遠に生き続けること――この一年間を封じ込めて、永遠に生き続けること」
きっとその瞬間、世界でもっとも幸せな家族になるはずだった水無月家。
だが、運命は彼らに残酷な試練を与えた。
ひとりとひとりを残し。
ひとりとひとりが旅立った。
大切な人を二度も失った水無月笙のキモチは、到底僕には理解なぞできないのだろう。
そして、非情なる運命の神は、さらなる過酷な試練を彼らに課したのだ。
ツッキーのカラダを容赦なく蝕む病魔――『慢性白血病』。
いずれ死に至る不治の病。
「水無月笙さん……だからあなたは、この『リトライ』でその運命に抗おうとしたんですね?」
「ちょ――ちょっと待ってくれ!」
だが、どうもおかしい。
水無月笙は困惑しきった表情で僕のセリフをさえぎった。
「こ、古ノ森リーダー君!? その……君の言う『リトライ』っていうのはなんのことだい?」
「………………え!?」
「ぼ、僕はただ、必死に願って、その願いを叶えようと神仏に頼っただけの意気地なしさ」
慌てて説明をしはじめた水無月笙の表情や額に浮いた汗を見る限り、嘘はないように見える。
「ほ、ほら、昔から『奉納』って儀式があるじゃないか。たまたま神社の宮司をしている知り合いがいたからね、無理矢理頼み込んで、毎週通って絵を描いていただけなんだ。その……君の言う『リトライ』っていうのは知らないよ。一体君は……なんのハナシをしているんだい?」
「『リトライ者』じゃ……ないだって……!?」
――パシャッ!
僕は疑問を確信に変えようと、制服のブレザーの内ポケットに手を挿し入れ、愛用のスマートフォンを取り出すと、構える間も惜しんで水無月笙に照準を合わせてシャッターを切った。
「……? お、脅かさないでくれよ。そのポーズ……流行ってるのかい?」
「そんな……そんなことがあるのか……?」
フラッシュが自動点灯し、薄暗かった室内は一瞬真っ白に輝いた。しかしそれでも、目の前に立つ水無月笙は、僕の一連の動作には驚いたようだったけれど、まばゆさに目を閉じることすらしなかった。ただ、不思議そうに僕の姿を眺めていただけだ。僕はその隣に視線を移した。
「どういうことなんだ、コトセ!?」
「……何がだ?」
「水無月笙――君のパパが『リトライ者』じゃないなんて。なのに、どうして――?」
「どうして『リトライアイテム』を持っているのかと言いたいのかね? これは推論だが――」
コトセは、ふむ、としばし黙考すると、こう続けた。
「……たぶん、なろうとしている最中なのではないだろうか。今はまだ普通のニンゲンに過ぎないが、『あの絵』の完成と私の『死』が一種のトリガーとなって、完全に能力を発揮する」
「そう……かもしれないな」
僕は混乱し錯綜する情報を必死に整理しながらも、どこか妙な違和感を覚えていた。だが、うまくそれをカタチにできない。イメージをカタチ作れない。
ええい、今は後まわしだ。
先に片付けるべきことがある。
「笙さん、聞いてください」
僕は迷いを捨てて切り出した。
「あなたが叶えようとしている『願い』とは何か教えて欲しいんです。それを知りたいんです」
水無月笙はその問いを耳にして、コトセを瞳の中に封じ込めでもするかのようにしっかりと閉じ、僕を真正面から見つめてこう告げる。
「琴ちゃんたちが永遠に生き続けること――この一年間を封じ込めて、永遠に生き続けること」
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