ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

文字の大きさ
517 / 539

第515話 二人とふたり(1) at 1996/3/19

しおりを挟む
「ああ、やめて、パパ。お願いよ、このあたし――からのお願いをどうか聞いて――!」

「ああ、琴ちゃん――こ、これはね――」

「ぐっ――!? そ、そんな……そんなことって……!」


 どさり、と僕のカラダが床に投げ出される音を、僕はどこか他人事のように聞いていた。

 チカラがまるで入らない。息が思うように喉を通らず、ひゅう、ひゅう、と出来損ないの笛が鳴るようだ。それでも、かろうじて僕はこう言った。


しょう……さん……? あなたは……コトセの存在を……知っていたんです……か……!?」

「いいや、むしろ驚いたのは僕の方さ」


 そう言ってツッキーパパ――水無月笙は、ドアを開けるなりしがみつくようにして自身の凶行を制止しようとした細くて華奢な白い少女の頭を優しくでる。そして、そのままゆっくりと身だしなみを整えでもするかのようにカノジョの足先まで順番に触れてゆくと、最後に右手をとって、その白くて青白い血管が透けて見える甲にそっと口づけをした。


「また……またこうして、すっかり大きくなって、ステキな淑女レディになった姿で会えるだなんて。これはキセキだ……まごうことないキセキがくれたプレゼントなんだ……! ねえ、コトセ?」


 コトセは無言で目の前にひざまずいた水無月笙の恍惚とした表情を見つめ、そっと頬に白い手を添える。優しく撫で、顎のラインをゆっくりとなぞると、ようやっと僕に視線を向けた。



 そして平坦な声で告げる。



「……何か言いたそうだな、古ノ森健太?」

「僕は……僕たちは信じていた……なのに……」

「何をだ?」


 くく、とコトセはさもおかしそうに笑いを噛み殺した。


「この私が、仲間だと、そう思っていたのかね? それはあいにくだったな」

「仲間だろ!? 今、こうなったのを目の当たりにしても、僕は、僕たちはそう信じている!」

「はン――」


 コトセはさげすむような目つきで見下ろすと、短く、吐き捨てるように僕を嘲笑した。


「言ったろう? 私は悪意の塊だと。負の感情を寄せ集めたものだと。そんなもののどこに善意が存在するのかね? 私はどこまで行っても私だ。私は私が望む『』を選択するだけだ」

「そうさ。琴ちゃんの言うとおりだよ、古ノ森リーダー」


 水無月笙はコトセの隣に寄り添い、優しく包み込むように抱きしめながら僕に言う。


「そのための『』なんだ。琴世ちゃんとコトセちゃん……ふたりが再び出会って、ひとつになるための。そして、それがキセキを起こすんだ。ふたりに『永遠の命』を授けてくれる」

……そうおっしゃったんですか?」

「そうとも」


 水無月笙は笑ってみせたが――あまりに見る者が切なくなる、哀しみに満ちた笑顔だった。


「コトセちゃんがいなくなった時、僕はとても悲しかったよ。……でもね? つづみさんはとっても優しい人だったからね。だからさ? 天国でコトセちゃんをひとりきりにさせるのは嫌なんだ、って、自分まで天国へ行っちゃったんだ。僕はあの日、大切な人をまた失ったんだよ」

「え……!? つまり、それって……?」

「ははは。そうだよね。君は知らない。何も知らなかったよね――」


 当惑するばかりの僕の顔を見て、水無月笙は恥ずかしそうに笑みをこぼした。


「ずっとね、生まれてからずっと、つづみさんとコトセちゃんは母体・胎児集中治療室MFICUにいたんだ。赤ちゃん用の人工呼吸器ってさ? 見ているだけで胸が苦しくなるんだ。わかるかい? コトセちゃんは琴世ちゃんを守ろうとして、必死に押し出してくれたんだ。すごく偉いんだ」



 そしてこうしめくくった。



「そうなんだ――琴世コトセちゃんと琴代ことよちゃんは、僕らの大切なだったんだよ」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

処理中です...