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【EXTRA】 エンドロール at 2021/03/31
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「……ったく。あいつら、ホント無茶苦茶だな……」
仕事の移動の合間を縫って参加したらしい純美子は、『また、あとでね』と言い残し、風のように去って行った。
――ただし『この顔じゃ、メイクでもごまかせないじゃない!』と泣き腫らして赤くなった目で子どもっぽくむくれてみせると、切れ味鋭い伝家の手刀を容赦なく俺の脇腹めがけてお見舞いしてきた。さすがに四〇歳ともなると、ダメージが色濃く残る。いてて。
……それはまあいい。
問題はそのあとである。
『さあー! 盛り上げていきますよーぅ!』
やけに手慣れた様子で登場してきたのは、カエルこと吉川薫であった。中学時代も怪しさにかけては天下一品だったが、さらに拍車――いや、磨きがかかった感がある。
なんでも、工業高校卒業後に入社した地元の整備工場を皮切りに転々と職を変え、スナックの雇われマスター、地元大手スーパーの副店長、タクシー運転手、訪問販売員などなど。どれも長くは続かないものの、雇用側からはそれなりに高い評価を受けているらしい。ホントかよ。
おかげでもう、そこいらじゅうで飲めや歌えや。大騒ぎである。
さすがにギブアップした俺は、こっそり逃げ出してきた、というワケだ。
「ムロのヤツ……ふふっ、平謝りだったな……。まったく、ロコは……変わってないや……」
何が『ロコちゃんがいる限り、ケンタの物語はハッピーエンドなんだからね!』だ。
俺が土壇場で日和るだろうと予想して、いっちょ気合を入れてやるわ! と息巻いた結果があの泥酔状態だったらしい。今は信金の支店長を務めているらしいムロも肩身が狭そうだった。
「でも……変わらなかったものもある、か……」
俺は無作法にも賽銭箱に寄りかかりながら、鹿島神社の本殿を見上げてつぶやいた。
――と、突然。
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
「はぁ……誰だよ、ったく。頼まれたってあそこには戻らないからな――」
内ポケットから愛用の型落ちの古びたスマートフォンを取り出して恐る恐る耳を当ててみる。
「……もしもし?」
『ようやく出てくれたな』
女の声だ。もっと言えば、どことなく幼さの残る女の声だった。
「お――お前!?」
『お前! じゃないだろうが。一体、何度鳴らせば出てくれるのかね、まったく……』
そんな――そんなことって!?
「い、いや、だって……! あいつらが言ってたぞ、『水無月琴世は、もういない』って!!」
『そりゃそうだろうさ――』
にやり――と笑ったらしい。
『今の私の名前は、五十嵐琴世だからな! ……おい、待て待て! 私が喋っている最中――』
「? ?」
『――おひさしぶりです、古ノ森リーダー。……例の件は、考えていただけましたか?』
「ハ、ハカセ!? い、いや、五十嵐君か!? ………………例の件って?」
『はぁ……またその手ですか……。そう何度も通用するとは……はいはい、代わりましょうか』
まったくハナシの展開が読めない。
俺はスマートフォンを耳元から離し、顔をしかめてから、再び構え直した。
『お、おひさしぶりです! あ、あたしです! ……わ、わかりますかね?』
「ツッキー……! 元気だったんだな……! カラダの方は大丈夫なのか!?」
『ロ、ロコちゃんがいましたから……。きっと治るって。だ、だから、がんばれました!』
「そっか――」
介護系の専門学校に通っていたロコには、『薬物療法』の基礎的な知識があったはずだ。『リトライ』中、何度もそのハナシを聞かされていたから知っている。それが役に立ったのだ。
「……っていうか、どうしてコトセは消えずにすんだんだ?」
『ほぅ……。消えてしまえばよかったのに、と聴こえたのだが? ん?』
「言ってないだろ。捏造するな」
『ククク……それをネタに、我らが傘下に収めようとする策だったのだがな。惜しい、惜しい』
傘下って……悪の組織か?
『まあ、そんな小難しいハナシはどうでもよいわ。それよりも……弓之助の言うとおりにせい』
「例の件、ってヤツか? そんなこと言われてもさっぱり……」
『ふむ……。どうやら本当に忘れてしまったらしい。一番肝心な、お前自身のことを、な?』
「……説明してくれないか?」
『ククク……これは愉快じゃわい。せいぜい驚くがいいさ。さて、どんな顔をするのやら……』
……ハナシにならない。
仕方なしに俺は、何か手がかりになるものはないかカラダのあちこちを探ってみる。と、スマートフォンを入れていたのとは反対側の内ポケットに、何やら硬いモノがあるのに気づいた。
名刺入れだ。
一枚取り出してみる。
「お――おいおいおいおい! 俺が!? 社長!?」
そこに描かれていたのは――。
『株式会社 電算論理研究部
代表取締役 古ノ森健太』
<完>
仕事の移動の合間を縫って参加したらしい純美子は、『また、あとでね』と言い残し、風のように去って行った。
――ただし『この顔じゃ、メイクでもごまかせないじゃない!』と泣き腫らして赤くなった目で子どもっぽくむくれてみせると、切れ味鋭い伝家の手刀を容赦なく俺の脇腹めがけてお見舞いしてきた。さすがに四〇歳ともなると、ダメージが色濃く残る。いてて。
……それはまあいい。
問題はそのあとである。
『さあー! 盛り上げていきますよーぅ!』
やけに手慣れた様子で登場してきたのは、カエルこと吉川薫であった。中学時代も怪しさにかけては天下一品だったが、さらに拍車――いや、磨きがかかった感がある。
なんでも、工業高校卒業後に入社した地元の整備工場を皮切りに転々と職を変え、スナックの雇われマスター、地元大手スーパーの副店長、タクシー運転手、訪問販売員などなど。どれも長くは続かないものの、雇用側からはそれなりに高い評価を受けているらしい。ホントかよ。
おかげでもう、そこいらじゅうで飲めや歌えや。大騒ぎである。
さすがにギブアップした俺は、こっそり逃げ出してきた、というワケだ。
「ムロのヤツ……ふふっ、平謝りだったな……。まったく、ロコは……変わってないや……」
何が『ロコちゃんがいる限り、ケンタの物語はハッピーエンドなんだからね!』だ。
俺が土壇場で日和るだろうと予想して、いっちょ気合を入れてやるわ! と息巻いた結果があの泥酔状態だったらしい。今は信金の支店長を務めているらしいムロも肩身が狭そうだった。
「でも……変わらなかったものもある、か……」
俺は無作法にも賽銭箱に寄りかかりながら、鹿島神社の本殿を見上げてつぶやいた。
――と、突然。
ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。
「はぁ……誰だよ、ったく。頼まれたってあそこには戻らないからな――」
内ポケットから愛用の型落ちの古びたスマートフォンを取り出して恐る恐る耳を当ててみる。
「……もしもし?」
『ようやく出てくれたな』
女の声だ。もっと言えば、どことなく幼さの残る女の声だった。
「お――お前!?」
『お前! じゃないだろうが。一体、何度鳴らせば出てくれるのかね、まったく……』
そんな――そんなことって!?
「い、いや、だって……! あいつらが言ってたぞ、『水無月琴世は、もういない』って!!」
『そりゃそうだろうさ――』
にやり――と笑ったらしい。
『今の私の名前は、五十嵐琴世だからな! ……おい、待て待て! 私が喋っている最中――』
「? ?」
『――おひさしぶりです、古ノ森リーダー。……例の件は、考えていただけましたか?』
「ハ、ハカセ!? い、いや、五十嵐君か!? ………………例の件って?」
『はぁ……またその手ですか……。そう何度も通用するとは……はいはい、代わりましょうか』
まったくハナシの展開が読めない。
俺はスマートフォンを耳元から離し、顔をしかめてから、再び構え直した。
『お、おひさしぶりです! あ、あたしです! ……わ、わかりますかね?』
「ツッキー……! 元気だったんだな……! カラダの方は大丈夫なのか!?」
『ロ、ロコちゃんがいましたから……。きっと治るって。だ、だから、がんばれました!』
「そっか――」
介護系の専門学校に通っていたロコには、『薬物療法』の基礎的な知識があったはずだ。『リトライ』中、何度もそのハナシを聞かされていたから知っている。それが役に立ったのだ。
「……っていうか、どうしてコトセは消えずにすんだんだ?」
『ほぅ……。消えてしまえばよかったのに、と聴こえたのだが? ん?』
「言ってないだろ。捏造するな」
『ククク……それをネタに、我らが傘下に収めようとする策だったのだがな。惜しい、惜しい』
傘下って……悪の組織か?
『まあ、そんな小難しいハナシはどうでもよいわ。それよりも……弓之助の言うとおりにせい』
「例の件、ってヤツか? そんなこと言われてもさっぱり……」
『ふむ……。どうやら本当に忘れてしまったらしい。一番肝心な、お前自身のことを、な?』
「……説明してくれないか?」
『ククク……これは愉快じゃわい。せいぜい驚くがいいさ。さて、どんな顔をするのやら……』
……ハナシにならない。
仕方なしに俺は、何か手がかりになるものはないかカラダのあちこちを探ってみる。と、スマートフォンを入れていたのとは反対側の内ポケットに、何やら硬いモノがあるのに気づいた。
名刺入れだ。
一枚取り出してみる。
「お――おいおいおいおい! 俺が!? 社長!?」
そこに描かれていたのは――。
『株式会社 電算論理研究部
代表取締役 古ノ森健太』
<完>
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