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オメガの教科書
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ある日の放課後、帰ろうとしたら拓司が先生に呼び出されたので終わるまで教室で待つことになった。いま教室に残っているのはオメガの女の子たちだ。3人は同じ小学校出身らしく、とても仲が良い。
3人組は2台の机をくっつけてその上に沢山の本を並べていた。暇だったので近くに寄っていくと本は全て漫画だった。
「漫画本?」
「そうだよ~。お互いにオススメ漫画を紹介して貸し借りしてるの。小太郎くんは漫画読むの?」
そう言ってロングヘアの木村さんはボクの座る椅子を用意してくれた。
「読むけど、努力友情勝利の漫画しか見たことないよ。これは少女漫画?」
「努力友情勝利も好きだけど、このオススメ会のテーマは"オメガの教科書"なのよ。」
林原さんが眼鏡をキラリと光らせる。
「漫画が何の教科書になるの?」
ボクは手前にあった制服姿の男女が描かれている漫画を手に持ってパラパラと中を見る。
『あ⋯熱い!どうして?発情期はまだのはずなのに!』
『この匂い⋯!そうか、お前が俺の運命だったのか!』
『あなたが運命?そんなはずは⋯だってあの子があなたのことを運命だと⋯』
『そんな訳ないだろう!俺はいつだってお前のことだけを見てきたんだ!』
『本当に⋯?』
『好きだ!俺の運命、俺のオメガ。その項を噛ませてくれないか⋯?』
『ええ⋯私のアルファ⋯あなたの番にして!』
~そしてめくるめく肌色の睦み合い~
「エロ本じゃん!!!」
「少女漫画よ!!!」
他の漫画も何冊かパラパラと中を見るとどれも肌色の割合が多い。
「やっぱエロ本じゃん!!!」
「少女漫画だってば!!!」
どうみてもエッチな本なのに少女漫画だと言い張るピンクのネイルの森川さん。
「いい?小太郎くん。私たちオメガは数が少ないから話を聞ける人がいないし、発情期も個人差がありすぎて参考にならないの。」
確かに発情期の重さは人によって違うと聞く。抑制剤もホルモンを無理やり抑えているので副作用が重い人もいて、できればアルファと過ごす方が良いとは言われている。
「そこで知識不足を補うためにフィクションではあるけれど番についての知識を漫画から得ることも必要だと思うわけ。」
なるほど。でも発情期のエッチなシーンは必要なのかな?
「必要よ」
「必要だわ」
「必要に決まってるでしょう。」
わぁ、満場一致。
「私たちがオメガである以上、避けては通れない営みだからね。私も発情期のとき平日は抑制剤で抑えるけれど、副作用の頭痛が酷くて休日のときは抑制剤を飲まずに家に籠もっているわ。まぁそれはそれで辛いんだけど。早く番を見つけたい⋯。」
おおぅ、ぶっちゃけるね。羞恥心はないのかい?というか森川さんはもう発情期が始まっているのか~と思ったら女の子3人ともだった。女の子の方が成長が早いらしいからね。ちなみにボクと雅はまだだ。
「それにいざアルファとそういう事をするならどんな事をするのか知っておきたいじゃない。」
一理ある。だってボクは静哉くんと番になることは決まっているが、実際何をするのかさっぱりわからない。いや、性行為をすることは知ってるよ?でも正直ボクに静哉くんのアレを突っ込むということしか知らない。つまりその前後がさっぱりなのだ。こんなこと人には聞けないし、聞ける人もいないとなれば漫画に頼るのも仕方のないことなのかもしれない。
机の上の漫画本を再度眺めて「女の子のオメガしかないな」と呟くと「あるわよ!」と言って森川さんがカバンから出したのは男の子2人が表紙になっている漫画だった。
「小太郎くん、興味があるなら男オメガが主役の漫画を読んでみる?」
こうして、ボクの教科書になる漫画を貸してもらえることになった。見返りはたまにこうして集まって漫画の感想やオメガとしての体験を言い合うこと。
よし、雅を道連れにしよう。
**********************************
「この本すごく良かったー。運命のオメガが現れたのに見向きもせずに自分のオメガを離さないシーンは最高だったよ。」
「ねぇねぇ小太郎、僕はこれ好き。主人公のベータの子が恋人のオメガの発情期に何もしてあげられない辛さや葛藤が泣けてくるんだよ。」
んん?
「オメガの教科書になる漫画のプレゼンじゃなかったっけ?」
「BLが布教できると思ったらつい⋯」
森川さんはテヘペロっと音が鳴りそうな動作をした。可愛いので様になっている。ボクはこのオススメ会でアルファとオメガについての知識と"腐女子、腐男子"や"BL"と言った余計な知識も増えていた。
「でも発情期がちょっと怖くなってきたよ。うちは親が2人ともベータだから想像も出来ないんだ。小太郎のところはアルファとオメガの夫婦でしょ?何か参考になる?」
「うーん、うちも母さんが発情期のときは父さんが絶対に姿を見せないように防音の部屋に囲ってるから見えないし聞きにくいから一緒だよ。」
「弱い抑制剤を使用しながらだと漫画ほどは激しくならないわよ?」
木村さんは長い髪を三つ編みにしながら隣の林原さんに「ねー?」と声をかける。
「発情期の乗り越え方も人それぞれだけど、聞く?例えばオススメの"道具"とか⋯。」
「ひぇ⋯僕にはまだ早いと思います!」
あっ怖気付いた。
雅ってば漫画のエッチなシーンも直視できなかったくらい照れ屋だからね。ボクはめちゃくちゃ聞きたいけど初心な雅に合わせてあげよう。
発情期の過ごし方も気になるけど、肝心の"アルファと過ごす発情期"は誰も知らないから結局漫画を見るしかない。
それにしても1人で過ごす発情期の道具かぁ⋯。確かこの漫画に載ってたけどこんなのどこで買うんだろ?あとこれ隅っこに"18禁"って書いてるけどボクたち逮捕されない?大丈夫?
このときボクはこの先"1人で過ごす発情期"は一生来ないものだとは知る由もなかった。
**********************************
木村/ロングヘア/オタク
林原/眼鏡/夢女子
森川/ピンクネイル/腐女子
3人組は2台の机をくっつけてその上に沢山の本を並べていた。暇だったので近くに寄っていくと本は全て漫画だった。
「漫画本?」
「そうだよ~。お互いにオススメ漫画を紹介して貸し借りしてるの。小太郎くんは漫画読むの?」
そう言ってロングヘアの木村さんはボクの座る椅子を用意してくれた。
「読むけど、努力友情勝利の漫画しか見たことないよ。これは少女漫画?」
「努力友情勝利も好きだけど、このオススメ会のテーマは"オメガの教科書"なのよ。」
林原さんが眼鏡をキラリと光らせる。
「漫画が何の教科書になるの?」
ボクは手前にあった制服姿の男女が描かれている漫画を手に持ってパラパラと中を見る。
『あ⋯熱い!どうして?発情期はまだのはずなのに!』
『この匂い⋯!そうか、お前が俺の運命だったのか!』
『あなたが運命?そんなはずは⋯だってあの子があなたのことを運命だと⋯』
『そんな訳ないだろう!俺はいつだってお前のことだけを見てきたんだ!』
『本当に⋯?』
『好きだ!俺の運命、俺のオメガ。その項を噛ませてくれないか⋯?』
『ええ⋯私のアルファ⋯あなたの番にして!』
~そしてめくるめく肌色の睦み合い~
「エロ本じゃん!!!」
「少女漫画よ!!!」
他の漫画も何冊かパラパラと中を見るとどれも肌色の割合が多い。
「やっぱエロ本じゃん!!!」
「少女漫画だってば!!!」
どうみてもエッチな本なのに少女漫画だと言い張るピンクのネイルの森川さん。
「いい?小太郎くん。私たちオメガは数が少ないから話を聞ける人がいないし、発情期も個人差がありすぎて参考にならないの。」
確かに発情期の重さは人によって違うと聞く。抑制剤もホルモンを無理やり抑えているので副作用が重い人もいて、できればアルファと過ごす方が良いとは言われている。
「そこで知識不足を補うためにフィクションではあるけれど番についての知識を漫画から得ることも必要だと思うわけ。」
なるほど。でも発情期のエッチなシーンは必要なのかな?
「必要よ」
「必要だわ」
「必要に決まってるでしょう。」
わぁ、満場一致。
「私たちがオメガである以上、避けては通れない営みだからね。私も発情期のとき平日は抑制剤で抑えるけれど、副作用の頭痛が酷くて休日のときは抑制剤を飲まずに家に籠もっているわ。まぁそれはそれで辛いんだけど。早く番を見つけたい⋯。」
おおぅ、ぶっちゃけるね。羞恥心はないのかい?というか森川さんはもう発情期が始まっているのか~と思ったら女の子3人ともだった。女の子の方が成長が早いらしいからね。ちなみにボクと雅はまだだ。
「それにいざアルファとそういう事をするならどんな事をするのか知っておきたいじゃない。」
一理ある。だってボクは静哉くんと番になることは決まっているが、実際何をするのかさっぱりわからない。いや、性行為をすることは知ってるよ?でも正直ボクに静哉くんのアレを突っ込むということしか知らない。つまりその前後がさっぱりなのだ。こんなこと人には聞けないし、聞ける人もいないとなれば漫画に頼るのも仕方のないことなのかもしれない。
机の上の漫画本を再度眺めて「女の子のオメガしかないな」と呟くと「あるわよ!」と言って森川さんがカバンから出したのは男の子2人が表紙になっている漫画だった。
「小太郎くん、興味があるなら男オメガが主役の漫画を読んでみる?」
こうして、ボクの教科書になる漫画を貸してもらえることになった。見返りはたまにこうして集まって漫画の感想やオメガとしての体験を言い合うこと。
よし、雅を道連れにしよう。
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「この本すごく良かったー。運命のオメガが現れたのに見向きもせずに自分のオメガを離さないシーンは最高だったよ。」
「ねぇねぇ小太郎、僕はこれ好き。主人公のベータの子が恋人のオメガの発情期に何もしてあげられない辛さや葛藤が泣けてくるんだよ。」
んん?
「オメガの教科書になる漫画のプレゼンじゃなかったっけ?」
「BLが布教できると思ったらつい⋯」
森川さんはテヘペロっと音が鳴りそうな動作をした。可愛いので様になっている。ボクはこのオススメ会でアルファとオメガについての知識と"腐女子、腐男子"や"BL"と言った余計な知識も増えていた。
「でも発情期がちょっと怖くなってきたよ。うちは親が2人ともベータだから想像も出来ないんだ。小太郎のところはアルファとオメガの夫婦でしょ?何か参考になる?」
「うーん、うちも母さんが発情期のときは父さんが絶対に姿を見せないように防音の部屋に囲ってるから見えないし聞きにくいから一緒だよ。」
「弱い抑制剤を使用しながらだと漫画ほどは激しくならないわよ?」
木村さんは長い髪を三つ編みにしながら隣の林原さんに「ねー?」と声をかける。
「発情期の乗り越え方も人それぞれだけど、聞く?例えばオススメの"道具"とか⋯。」
「ひぇ⋯僕にはまだ早いと思います!」
あっ怖気付いた。
雅ってば漫画のエッチなシーンも直視できなかったくらい照れ屋だからね。ボクはめちゃくちゃ聞きたいけど初心な雅に合わせてあげよう。
発情期の過ごし方も気になるけど、肝心の"アルファと過ごす発情期"は誰も知らないから結局漫画を見るしかない。
それにしても1人で過ごす発情期の道具かぁ⋯。確かこの漫画に載ってたけどこんなのどこで買うんだろ?あとこれ隅っこに"18禁"って書いてるけどボクたち逮捕されない?大丈夫?
このときボクはこの先"1人で過ごす発情期"は一生来ないものだとは知る由もなかった。
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木村/ロングヘア/オタク
林原/眼鏡/夢女子
森川/ピンクネイル/腐女子
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