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可愛い弟(side一華)
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(side一華)
とうとう可愛い可愛い弟が連れて行かれてしまった。大事にしてきた私の弟があの腹黒狡猾アルファのものになるなんて今でも納得はできていない。しかし、他の奴ならいいのか?と問われると誰でも反対する自信がある。
私が静哉と出会ったのは幼稚園だった。そのころすでに自分はアルファで、周りとは違うという自覚があって子供らしい子供ではなかったが、両親には可愛がられていたので不満はなかった。私が父よりもアルファとしての力が強かったのは母方の祖母がそれはもう強いアルファの女性で、顔も私とそっくりなので隔世遺伝だろうと言われた。
母の実家はアルファ至上主義の名家で、当主のお祖母様だけがオメガの母の味方だったらしく、母に父という好きな人が出来たときに政略結婚を無理やり押し通そうとした身内から逃がしてくれたという過去がある。なので未だに母の実家には行ったことはないが、たまにお祖母様がうちに突撃して来る。母の人権を無視するいけ好かない身内と会わなくて済むならそれに越したことはない。
幼稚園の入園式で静哉を一目見て「同類だ」と感じた。その印象は間違ってなどなく、同レベルの彼と話すことは楽しかった。彼の家は世界的にも有名な藤堂財閥なのだが、当主の意向で小学校までは公立に通うことになっている。なんでも「普通の人」と関わることは人生経験として大いに役に立つかららしい。こっそり護衛がついているが、周りの人たちはほとんど気が付いていない。
何度かお互いの家を行き来していたら藤堂家の使用人に「あのお嬢様、静哉様の婚約者候補かしら?」とヒソヒソ話していたがやめてほしい。一見穏やかそうだが何も興味がないことがわかる作られた笑顔と、内に秘められているとてつもないヤバさを感じるこの人とは一緒になりたくないわ。
友人の立場が1番楽。
幼稚園年長になったときに弟が産まれた。可愛くて可愛くて静哉に自慢してやろうと思ったのが間違いだったと今では思う。まぁ、遅かれ早かれ対面するのだから結果は同じだっただろうが。
とにかく、静哉は小太郎を一目見て顔付きが変わった。目に生気が宿ったというか、キラキラした目でベッドでもぞもぞ動く小太郎をいつまでも見ていた。
それから足繁くうちに通って小太郎をかまい倒した。オムツ替え、ミルク、ゲップからの寝かしつけ、沐浴まで姉の私以上に世話を焼いた。そんな静哉に小太郎が懐くのは当然で、ハイハイができるようになったころには静哉の姿を見つけては高速ハイハイし、離れると後追いをして、別れるときには泣いた。そんな弟にデレデレの顔をした静哉は最高に気持ち悪かった。家族みんな何となく感づいていたが、小太郎が喋るようになったときに「しーにいちゃ」と呼ぶと「僕はコタのお兄さんになるつもりはないから"しーくん"か"しーちゃん"て呼んで?」と言ったときにいつかこいつに弟が奪われると確信した。
それから静哉は少しずつ自分とうちの両親にアピールを始め、じわじわと外堀を埋め始めた。まぁアルファの執着心、それも静哉ほど強いアルファが狙いを定めたらどんな手を使ってでも絶対に手に入れるように動くだろうから止めても無駄だとみんな理解していた。本来なら第二次成長期前後に検査をしないとバース性はわからないのだが、このような静哉の行動により小太郎はオメガなんだろうなと予想できた。
うちの両親は「小太郎の気持ちだけは大切にしてくれ」と言っていたが、小太郎はずっと静哉しか見えていなかったからその心配は杞憂だろう。私からは「完全にあんたのものになるまでマーキングは私がする」という条件を出した。かなり渋っていたが、アルファとしての能力は同等だったので反発するのは得策ではないと判断したのだろう。
イヤイヤ了承していた。
示し合わせたわけでもないのになぜかあの男とは大学までずっと同じ学校に進学してしまっていた。腐れ縁もいいとこだ。別に避けているわけではないのでそれなりに会話もしていたらいつの間にかあいつと付き合ってる説が流れていい迷惑だ。しかし、その噂は取り入ってくる底辺アルファや、色目を使ってくるオメガ女子や、煩わしく絡んでくるベータ男女が避けていく口実になったので肯定も否定もしないで放置している。静哉も同じく人避けに私を利用しているので構わないだろう。
このまま小太郎がお披露目されれば今後は"藤堂静哉の婚約者の姉"に群がってくる人が増えるのだろう。面倒くさいな。
五十嵐家に護衛でも頼もうかしら?
この先訪れる問題にげんなりしつつ、可愛い弟が幸せならばそれぐらいの煩わしさは受け入れるつもりだ。
それにいくら番になったからと言っても独り占めは許さないつもりだ。
なんせ私はお姉ちゃんだからね。
*********************
弟離れができないお姉ちゃん。
とうとう可愛い可愛い弟が連れて行かれてしまった。大事にしてきた私の弟があの腹黒狡猾アルファのものになるなんて今でも納得はできていない。しかし、他の奴ならいいのか?と問われると誰でも反対する自信がある。
私が静哉と出会ったのは幼稚園だった。そのころすでに自分はアルファで、周りとは違うという自覚があって子供らしい子供ではなかったが、両親には可愛がられていたので不満はなかった。私が父よりもアルファとしての力が強かったのは母方の祖母がそれはもう強いアルファの女性で、顔も私とそっくりなので隔世遺伝だろうと言われた。
母の実家はアルファ至上主義の名家で、当主のお祖母様だけがオメガの母の味方だったらしく、母に父という好きな人が出来たときに政略結婚を無理やり押し通そうとした身内から逃がしてくれたという過去がある。なので未だに母の実家には行ったことはないが、たまにお祖母様がうちに突撃して来る。母の人権を無視するいけ好かない身内と会わなくて済むならそれに越したことはない。
幼稚園の入園式で静哉を一目見て「同類だ」と感じた。その印象は間違ってなどなく、同レベルの彼と話すことは楽しかった。彼の家は世界的にも有名な藤堂財閥なのだが、当主の意向で小学校までは公立に通うことになっている。なんでも「普通の人」と関わることは人生経験として大いに役に立つかららしい。こっそり護衛がついているが、周りの人たちはほとんど気が付いていない。
何度かお互いの家を行き来していたら藤堂家の使用人に「あのお嬢様、静哉様の婚約者候補かしら?」とヒソヒソ話していたがやめてほしい。一見穏やかそうだが何も興味がないことがわかる作られた笑顔と、内に秘められているとてつもないヤバさを感じるこの人とは一緒になりたくないわ。
友人の立場が1番楽。
幼稚園年長になったときに弟が産まれた。可愛くて可愛くて静哉に自慢してやろうと思ったのが間違いだったと今では思う。まぁ、遅かれ早かれ対面するのだから結果は同じだっただろうが。
とにかく、静哉は小太郎を一目見て顔付きが変わった。目に生気が宿ったというか、キラキラした目でベッドでもぞもぞ動く小太郎をいつまでも見ていた。
それから足繁くうちに通って小太郎をかまい倒した。オムツ替え、ミルク、ゲップからの寝かしつけ、沐浴まで姉の私以上に世話を焼いた。そんな静哉に小太郎が懐くのは当然で、ハイハイができるようになったころには静哉の姿を見つけては高速ハイハイし、離れると後追いをして、別れるときには泣いた。そんな弟にデレデレの顔をした静哉は最高に気持ち悪かった。家族みんな何となく感づいていたが、小太郎が喋るようになったときに「しーにいちゃ」と呼ぶと「僕はコタのお兄さんになるつもりはないから"しーくん"か"しーちゃん"て呼んで?」と言ったときにいつかこいつに弟が奪われると確信した。
それから静哉は少しずつ自分とうちの両親にアピールを始め、じわじわと外堀を埋め始めた。まぁアルファの執着心、それも静哉ほど強いアルファが狙いを定めたらどんな手を使ってでも絶対に手に入れるように動くだろうから止めても無駄だとみんな理解していた。本来なら第二次成長期前後に検査をしないとバース性はわからないのだが、このような静哉の行動により小太郎はオメガなんだろうなと予想できた。
うちの両親は「小太郎の気持ちだけは大切にしてくれ」と言っていたが、小太郎はずっと静哉しか見えていなかったからその心配は杞憂だろう。私からは「完全にあんたのものになるまでマーキングは私がする」という条件を出した。かなり渋っていたが、アルファとしての能力は同等だったので反発するのは得策ではないと判断したのだろう。
イヤイヤ了承していた。
示し合わせたわけでもないのになぜかあの男とは大学までずっと同じ学校に進学してしまっていた。腐れ縁もいいとこだ。別に避けているわけではないのでそれなりに会話もしていたらいつの間にかあいつと付き合ってる説が流れていい迷惑だ。しかし、その噂は取り入ってくる底辺アルファや、色目を使ってくるオメガ女子や、煩わしく絡んでくるベータ男女が避けていく口実になったので肯定も否定もしないで放置している。静哉も同じく人避けに私を利用しているので構わないだろう。
このまま小太郎がお披露目されれば今後は"藤堂静哉の婚約者の姉"に群がってくる人が増えるのだろう。面倒くさいな。
五十嵐家に護衛でも頼もうかしら?
この先訪れる問題にげんなりしつつ、可愛い弟が幸せならばそれぐらいの煩わしさは受け入れるつもりだ。
それにいくら番になったからと言っても独り占めは許さないつもりだ。
なんせ私はお姉ちゃんだからね。
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弟離れができないお姉ちゃん。
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