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(最終話)ラブラブハッピーな未来
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「お母さん早く!まずは2人で写真撮ろうよ。」
真っ黒なランドセルを背負って手を振るのは本日小学校の入学式を迎える息子の和哉だ。静哉くんにそっくりだけど髪の色はボクと同じく真っ黒だ。桜は散ってしまったが、色とりどりのチューリップが植えられたプランターが通路に並べられている。
「次はお父さんと姫ちゃんも一緒ね。拓司、写真撮って!」
はいはいとカメラを構えた拓司は学生時代から変わらずボクの友人で護衛だ。ボクの隣に並んだ格好良い旦那さまは3歳になったばかりの娘の姫華を抱っこしている。ボクにそっくりで髪色は静哉くんと同じ栗色の娘は我が家のアイドルだ。
ボクは高校卒業後、進学はしなかった。学生生活は充分堪能できたし、オメガに学歴は求められない。ボクは少しでも早く静哉くんの仕事の手伝いをしたかった。
18歳になってすぐ入籍し、卒業後は結婚式の準備のために本格的な仕事を覚えるのは式の後にすることになったので、必要な資格を取るために勉強した。拓司は大学に通うことになったので、その間は五十嵐家のSPが交代で護衛になった。
結婚式と新婚旅行を終えてから静哉くんの仕事の補佐をしながら忙しい日々を過ごしている。
「あ!和いた!」
「一緒に写真撮ろうぜ!」
走り寄って来たのは双子の兄弟の鷹と鷲だ。
「小太郎おはよ。晴れて良かったね~。」
「皆さんおはようございます。」
伸ばした髪を後ろにくくった雅が先輩に肩を抱かれて歩いてきた。先輩は相変わらず丁寧なヤクザにしか見えないな。
「雅おはよう。体調はどう?」
「悪阻も大分落ち着いたから平気。」
現在雅の大きなお腹には3人目の命が宿っている。肌に優しく脱ぎ着しやすいマタニティ服は一華ちゃんのお店の商品だ。
「ミャー子、俺たちは先に入って座っておこう。門真、双子を見ておいてくれ。」
先輩は護衛に一声かけてボクたちにペコリと頭を下げて雅を連れて行った。悪阻がひどかったのでかなり過保護になっていると以前雅が愚痴を零していた。
そんな雅はボクと同じく進学はせずに「僕に先輩の仕事を手伝えるなんてできるわけないでしょ?」と言って宮永のお菓子メーカーが経営、監修する和菓子店の店員として働いている。看板息子としておじいちゃん・おばあちゃんに大人気だそうだ。ちなみに雅は高校卒業間際に初発情期で先輩と番になり、そのまま流れるように入籍まで済ませた。本人もその速さに唖然としていたが、何だかんだ言って先輩のことは好きそうなのでいいんじゃないかな。
****************************
入学式を終え、雅たち宮永一家を誘って我が家(=藤堂家別館)の庭で入学祝いパーティをした。もうすぐ仕事の合間を縫って親戚一同が集まる予定だ。その前に合流した舞ちゃんは拓司と連名で子供たちに入学祝いの図書カードをくれた。舞ちゃんはアルバイトをしながら大学に通い、卒業後は正社員となって一華ちゃんの秘書になっている。大学卒業してすぐに拓司と籍を入れ、一緒に住むようになってから拓司のやる気が前にも増してみなぎっている。
「お父さん、だっこして。」
娘の姫華は甘えっ子なのですぐお父さんにだっこをせがむ。
「お兄ちゃんたちと遊ばないの?」
「おなかしゅいた。お母さんおぎぎりちょうだい?」
「はいはい、おにぎりね。おかかで良い?」
さ行が苦手な話し方が愛らしい。そういえば息子はら行が苦手だったな。娘がちまちまとおにぎりを食べていると「お腹すいたー!」と元気よく男子たちが走ってきた。
賑やかなパーティは夜まで続き、遊び疲れた子供たちは早々に寝てしまい思わぬ自由時間ができた。セバスチャンが明日の予定を告げて部屋から出て行くと静哉くんと2人きりになる。
「コタ、今日はお疲れ様。」
「静哉くんも、今日の姫華はずっと抱っこちゃんだったね。」
「父親の特権だよ。でも今は夫として可愛い妻を抱っこしたいかな?」
そう言ってさっとボクを抱き上げベッドまで運ぶ。子供たちは夢の中。娘が夜泣きしても住み込みの家政婦が対応してくれる。ボクは遠慮なく静哉くんにキスをした。
大好きな人たちに囲まれて、宝物のような子供たちを授かり、愛しい人とラブラブに過ごす日々。
ボクはこの上なく幸せだ!
******************************
これにて完結です。
見切り発車で書き始めたのでどのように話を進めていくか悩みました。最後まで書き切れて良かったと思います。
いつか雅を主人公にしたスピンオフを書けたらいいなと思っています。その時はこの話の続きではなく、完全に新しい話として更新するつもりです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
真っ黒なランドセルを背負って手を振るのは本日小学校の入学式を迎える息子の和哉だ。静哉くんにそっくりだけど髪の色はボクと同じく真っ黒だ。桜は散ってしまったが、色とりどりのチューリップが植えられたプランターが通路に並べられている。
「次はお父さんと姫ちゃんも一緒ね。拓司、写真撮って!」
はいはいとカメラを構えた拓司は学生時代から変わらずボクの友人で護衛だ。ボクの隣に並んだ格好良い旦那さまは3歳になったばかりの娘の姫華を抱っこしている。ボクにそっくりで髪色は静哉くんと同じ栗色の娘は我が家のアイドルだ。
ボクは高校卒業後、進学はしなかった。学生生活は充分堪能できたし、オメガに学歴は求められない。ボクは少しでも早く静哉くんの仕事の手伝いをしたかった。
18歳になってすぐ入籍し、卒業後は結婚式の準備のために本格的な仕事を覚えるのは式の後にすることになったので、必要な資格を取るために勉強した。拓司は大学に通うことになったので、その間は五十嵐家のSPが交代で護衛になった。
結婚式と新婚旅行を終えてから静哉くんの仕事の補佐をしながら忙しい日々を過ごしている。
「あ!和いた!」
「一緒に写真撮ろうぜ!」
走り寄って来たのは双子の兄弟の鷹と鷲だ。
「小太郎おはよ。晴れて良かったね~。」
「皆さんおはようございます。」
伸ばした髪を後ろにくくった雅が先輩に肩を抱かれて歩いてきた。先輩は相変わらず丁寧なヤクザにしか見えないな。
「雅おはよう。体調はどう?」
「悪阻も大分落ち着いたから平気。」
現在雅の大きなお腹には3人目の命が宿っている。肌に優しく脱ぎ着しやすいマタニティ服は一華ちゃんのお店の商品だ。
「ミャー子、俺たちは先に入って座っておこう。門真、双子を見ておいてくれ。」
先輩は護衛に一声かけてボクたちにペコリと頭を下げて雅を連れて行った。悪阻がひどかったのでかなり過保護になっていると以前雅が愚痴を零していた。
そんな雅はボクと同じく進学はせずに「僕に先輩の仕事を手伝えるなんてできるわけないでしょ?」と言って宮永のお菓子メーカーが経営、監修する和菓子店の店員として働いている。看板息子としておじいちゃん・おばあちゃんに大人気だそうだ。ちなみに雅は高校卒業間際に初発情期で先輩と番になり、そのまま流れるように入籍まで済ませた。本人もその速さに唖然としていたが、何だかんだ言って先輩のことは好きそうなのでいいんじゃないかな。
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入学式を終え、雅たち宮永一家を誘って我が家(=藤堂家別館)の庭で入学祝いパーティをした。もうすぐ仕事の合間を縫って親戚一同が集まる予定だ。その前に合流した舞ちゃんは拓司と連名で子供たちに入学祝いの図書カードをくれた。舞ちゃんはアルバイトをしながら大学に通い、卒業後は正社員となって一華ちゃんの秘書になっている。大学卒業してすぐに拓司と籍を入れ、一緒に住むようになってから拓司のやる気が前にも増してみなぎっている。
「お父さん、だっこして。」
娘の姫華は甘えっ子なのですぐお父さんにだっこをせがむ。
「お兄ちゃんたちと遊ばないの?」
「おなかしゅいた。お母さんおぎぎりちょうだい?」
「はいはい、おにぎりね。おかかで良い?」
さ行が苦手な話し方が愛らしい。そういえば息子はら行が苦手だったな。娘がちまちまとおにぎりを食べていると「お腹すいたー!」と元気よく男子たちが走ってきた。
賑やかなパーティは夜まで続き、遊び疲れた子供たちは早々に寝てしまい思わぬ自由時間ができた。セバスチャンが明日の予定を告げて部屋から出て行くと静哉くんと2人きりになる。
「コタ、今日はお疲れ様。」
「静哉くんも、今日の姫華はずっと抱っこちゃんだったね。」
「父親の特権だよ。でも今は夫として可愛い妻を抱っこしたいかな?」
そう言ってさっとボクを抱き上げベッドまで運ぶ。子供たちは夢の中。娘が夜泣きしても住み込みの家政婦が対応してくれる。ボクは遠慮なく静哉くんにキスをした。
大好きな人たちに囲まれて、宝物のような子供たちを授かり、愛しい人とラブラブに過ごす日々。
ボクはこの上なく幸せだ!
******************************
これにて完結です。
見切り発車で書き始めたのでどのように話を進めていくか悩みました。最後まで書き切れて良かったと思います。
いつか雅を主人公にしたスピンオフを書けたらいいなと思っています。その時はこの話の続きではなく、完全に新しい話として更新するつもりです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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読んで頂きありがとうございました。
苦労して幸せを掴むオメガも物語に深みが出て好きなのですが、たまにハッピーだけのオメガバースを見たくなるときもあるので自分で書いちゃいました!
スピンオフは気長にお待ち頂ければと思います(•‿•)
何時も楽しく読ませてもらってます。
スピンオフ、楽しみにしてますね。
読んで頂きありがとうございます!
考えがまとまったら書きたいな〜とぼんやり考えております(^^)