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シーズン1 魔法使いの塔
第二章 7)問題だらけの物件
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「この塔を買うのに、どれだけ苦労を重ねたことか。はっきり言って僕は多くの人を破滅に追い込んできたよ。無垢な人を騙し、自分の命も危険に晒した。それでどうにかこの若さで、塔を買えるまでの財力を手にしたんだ」
その女性の泣き声はプラーヌスの部屋にも聞こえていたようだ。
夕食のとき、応接の間で私と顔をあわせて早々、プラーヌスは憤りをあらわにし、こうまくし立ててきた。
「ここは問題だらけの物件だよ。蛮族がいつ襲来してくるかわからないのは、事前に聞いていた。それが理由で割安だったからね。だから騎士を雇って対処させる。それで万事は上手くいくと思っていたのに」
しかしこんな泣き声が聞こえてくるなんて知らなかった!
プラーヌスはあの女性の泣き声を、「生きているのに、間違われて葬られてしまった者が、その事実を知らすために棺の内側を叩いたり、ひっかいたりしているような、切羽詰まった声」と表現した。
「魔族との交渉が捗らない。ようやくこの塔を魔界から支配している魔族の一人と会うことは出来たんだ。それで前の塔の主が魔族と交わしていた幾つかの契約を破棄させることに成功した。しかし更に話しを詰めようとしていたところで、この声に邪魔され交渉に集中出来なくなった。その魔族を見失ってしまったんだ。またゼロからやり直しさ」
そういうわけでプラーヌスは私にまた新たな仕事を言いつけてきた。
「すまないがシャグラン、この問題を解決してくれ。君だって嫌だろ、買ったばかりの家でこんな声が聞こえてきたら」
「それは嫌だけど、でもこれは生きている人間が発している声なんだろうか? そうじゃなかったらどう考えてもプラーヌス、君のテリトリーじゃないか。僕にどうこう出来る問題じゃない」
「うむ、そうだね、だったら言い方を変えよう。原因を探ってくれればいい。解決まで君に期待するのは酷だった」
「わ、わかった。出来るだけのことはしておく」
「ああ、頼むよ」
プラーヌスは本当に忌々しそうだった。
まあ、確かにせっかく大金を支払って買ったのに、こんな家だったときの落胆は計り知れないものがあるだろう。
私だっていつか結婚をし、世帯を持って独立して家を購入することもあるはず。
そのときこんな家に当たってしまったらと思うと、プラーヌスが苛立つ気持ちも十分に理解出来るというものだ。
「えーと、まずこの塔で働いている召使いたちの名簿作り。それからこの塔の見取り図作り。そしてこの不気味な泣き声の理由を探る仕事だね」
しかし大変な仕事ばかり押し付けられている。
私は自分のやらなければいけない仕事を指折り数えてみる。
「何だよ、シャグラン。不服そうだね」
「そんなことないさ、でも気が遠くなるような仕事量だと思ってね」
「僕だって好き好んで、君に仕事を課してるわけじゃない。この気持ちの悪い声は考慮の他だったから、止む終えなく君に頼んでいるだけだ」
「それは充分理解しているけどね」
「だったら不服そうにするのはやめてくれないかな」
しかしそんな苛々としていたプラーヌスであったが、運ばれてきた料理を一口食べ、その表情を少し輝かせた。
今夜から料理を作ることになったゲオルゲ族の料理人が、どうやら彼の口に合ったようだ。
私もプラーヌスに続き、その料理を口に運んで思わず唸った。
料理はシンプルでありふれたものだったけど、それは本当に美味しかったのだ。
細かく刻まれたキノコが入ったオムレツに、仔ウサギの肉のスープ、酸っぱいドレッシングがかかったサラダ、そしてこんがりと焼かれたたパン。
どれを取っても絶品だった。
「君のアドバイス通り料理人を変えて正解だったな。これまでこの塔で食べていたものが、料理なんて呼べる代物ではなかったってことが改めてわかったよ」
プラーヌスは本当に満足そうにそう言ってきた。
確かに昨夜の食事と比べると格段に違う。
私の大切な助手のアビュを悪く言うつもりはないけど、プラーヌスの言う通り、あれは料理と呼べるたぐいものではなかったかもしれない。
「本当にどこかで一流の料理人を雇おう。これ以上に美味しい料理が毎日食べられるなら、生活にも潤いが出ると言うものだ」
プラーヌスは少し機嫌を直したようにそう言って、フォークとナイフをカタカタ鳴らして夢中で食べ始めた。
まあ、プラーヌスの機嫌がよくなるなら、どんなことでも歓迎だ。
私はホッと息をついて、美味しそうに食べるプラーヌスを見守る。
その女性の泣き声はプラーヌスの部屋にも聞こえていたようだ。
夕食のとき、応接の間で私と顔をあわせて早々、プラーヌスは憤りをあらわにし、こうまくし立ててきた。
「ここは問題だらけの物件だよ。蛮族がいつ襲来してくるかわからないのは、事前に聞いていた。それが理由で割安だったからね。だから騎士を雇って対処させる。それで万事は上手くいくと思っていたのに」
しかしこんな泣き声が聞こえてくるなんて知らなかった!
プラーヌスはあの女性の泣き声を、「生きているのに、間違われて葬られてしまった者が、その事実を知らすために棺の内側を叩いたり、ひっかいたりしているような、切羽詰まった声」と表現した。
「魔族との交渉が捗らない。ようやくこの塔を魔界から支配している魔族の一人と会うことは出来たんだ。それで前の塔の主が魔族と交わしていた幾つかの契約を破棄させることに成功した。しかし更に話しを詰めようとしていたところで、この声に邪魔され交渉に集中出来なくなった。その魔族を見失ってしまったんだ。またゼロからやり直しさ」
そういうわけでプラーヌスは私にまた新たな仕事を言いつけてきた。
「すまないがシャグラン、この問題を解決してくれ。君だって嫌だろ、買ったばかりの家でこんな声が聞こえてきたら」
「それは嫌だけど、でもこれは生きている人間が発している声なんだろうか? そうじゃなかったらどう考えてもプラーヌス、君のテリトリーじゃないか。僕にどうこう出来る問題じゃない」
「うむ、そうだね、だったら言い方を変えよう。原因を探ってくれればいい。解決まで君に期待するのは酷だった」
「わ、わかった。出来るだけのことはしておく」
「ああ、頼むよ」
プラーヌスは本当に忌々しそうだった。
まあ、確かにせっかく大金を支払って買ったのに、こんな家だったときの落胆は計り知れないものがあるだろう。
私だっていつか結婚をし、世帯を持って独立して家を購入することもあるはず。
そのときこんな家に当たってしまったらと思うと、プラーヌスが苛立つ気持ちも十分に理解出来るというものだ。
「えーと、まずこの塔で働いている召使いたちの名簿作り。それからこの塔の見取り図作り。そしてこの不気味な泣き声の理由を探る仕事だね」
しかし大変な仕事ばかり押し付けられている。
私は自分のやらなければいけない仕事を指折り数えてみる。
「何だよ、シャグラン。不服そうだね」
「そんなことないさ、でも気が遠くなるような仕事量だと思ってね」
「僕だって好き好んで、君に仕事を課してるわけじゃない。この気持ちの悪い声は考慮の他だったから、止む終えなく君に頼んでいるだけだ」
「それは充分理解しているけどね」
「だったら不服そうにするのはやめてくれないかな」
しかしそんな苛々としていたプラーヌスであったが、運ばれてきた料理を一口食べ、その表情を少し輝かせた。
今夜から料理を作ることになったゲオルゲ族の料理人が、どうやら彼の口に合ったようだ。
私もプラーヌスに続き、その料理を口に運んで思わず唸った。
料理はシンプルでありふれたものだったけど、それは本当に美味しかったのだ。
細かく刻まれたキノコが入ったオムレツに、仔ウサギの肉のスープ、酸っぱいドレッシングがかかったサラダ、そしてこんがりと焼かれたたパン。
どれを取っても絶品だった。
「君のアドバイス通り料理人を変えて正解だったな。これまでこの塔で食べていたものが、料理なんて呼べる代物ではなかったってことが改めてわかったよ」
プラーヌスは本当に満足そうにそう言ってきた。
確かに昨夜の食事と比べると格段に違う。
私の大切な助手のアビュを悪く言うつもりはないけど、プラーヌスの言う通り、あれは料理と呼べるたぐいものではなかったかもしれない。
「本当にどこかで一流の料理人を雇おう。これ以上に美味しい料理が毎日食べられるなら、生活にも潤いが出ると言うものだ」
プラーヌスは少し機嫌を直したようにそう言って、フォークとナイフをカタカタ鳴らして夢中で食べ始めた。
まあ、プラーヌスの機嫌がよくなるなら、どんなことでも歓迎だ。
私はホッと息をついて、美味しそうに食べるプラーヌスを見守る。
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