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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第六章 3)ギャラック家の深刻な悩み 長子ブルーノの章
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その老年の魔法使いは話しを続ける。
「ブルーノ殿は魔法の影響下にありません。もし魔法が原因ならば、外部から何らかの働きかけがあります。そういうものもなく、突然、魔法にかけられることは起こりえない。そんなこと、魔法の原理上不可能なことなのです」
「しかしブルーノは実際、何かに苦しんでいる」
「はい、それはこの目でしかと認めました。ご心痛お察しします」
「では、あの症状はどうやって説明するのだ?」
「もしブルーノ殿自身も魔法使いであられたならば、魔界を通じて魔法を仕掛けることは出来ます」
その魔法使いは簡単に魔法の原理のようなものをカーティスに向かって説明した。魔法使いは常に魔界にアクセスしているということ。魔界には距離がなく、魔界を通じてならば、遠く離れた魔法使いと交信することが出来るということ。
すなわち、魔界を経由すれば、外部から伺い知られることなく、遠く離れた魔法使いに対して、魔法をかけることが可能。
「しかしそれはあくまで魔法使い同士のこと。ブルーノ殿に魔法の嗜みはおありにならない」
「ない」
「だとすれば」
「何が原因だというのだ?」
「恐怖、かもしれません」
「恐怖だと?」
「ブルーノ殿はあの戦場で、とてつもない恐怖と遭遇なされた。それが原因となって、精神や心に変調をきたしておられる」
「何だと、我が息子を臆病者扱いするとは!」
「彼を治療することが出来るのは我々魔法使いではなく、神に仕える者だけかもしれません。神父から癒しを求めるべきでしょう」
その魔法使いはカーティスの怒りを前にしても、臆することなく言い返した。
「自分の無能を隠すために、よくもこのようなデタラメを!」
「デタラメだと。口を慎むがいい。ギャラック家当主よ」
魔法使いは更に厳しい口調で言い返す。
「何だと! 貴様!」
カーティスは腰の剣を抜いて、魔法使いに向かって振り上げた。しかしその剣は一瞬にして砕け散る。魔法使いの魔法が炸裂したのだ。
ブルーノの病について相談する場である。家臣や衛兵たちは部屋の外に控えている。その魔法使いとカーティス以外、この部屋にいるのは虚ろな目をしたブルーノだけ。
カーティスは命の危機を感じる。魔法使いを相手にして剣を抜くなど、何という愚かなことをしてしまったのであろうか。自分も耄碌してしまったものであると絶望する。
しかし相手の魔法使いは静かに微笑むだけで、これ以上の攻撃は加えてこなかった。
その物音を聞きつけて、部屋の外の衛兵たちが駆けつけてきた。扉をノックして、当主の安否を尋ねてくる。
「何もない! グラスが割れただけだ!」
カーティスは声を張り上げて、家臣たちを制した。そしてテーブルの上に、残った柄を静かに置く。それを見て、その魔法使いも頷いた。
「約束の報酬は払う。これで会合は終わりだ」
「私の言葉を信じて頂けないのは残念なこと」
「そなたよりも、もっと優秀な魔法使いに相談することにする」
「そうですか。ご自由に」
魔法使いは席を立とうとする。しかし彼は異変に気付いた。ブルーノである。会談の途中、高熱にでもうなされているかのように辛そうな表情をしていたが、何とか正気を保っていたようであった。その瞳には理性の輝きが宿り、魔法使いの言葉に必死に耳を傾けていた。
しかし今、その理性は消え去り、恐怖と怒りがそこを占めている。
「錯乱が始まりましたぞ」
「何だと!」
カーティスがハッと振り返る。「皆の者、ブルーノを押さえろ!」
「やはり魔法の気配はありませんでした。彼は魔法に対する恐怖に囚われているだけ」
その魔法使いは部屋に入ってきた家臣たちと入れ替わるようにして、足早に部屋を出ていく。
「ブルーノ殿は魔法の影響下にありません。もし魔法が原因ならば、外部から何らかの働きかけがあります。そういうものもなく、突然、魔法にかけられることは起こりえない。そんなこと、魔法の原理上不可能なことなのです」
「しかしブルーノは実際、何かに苦しんでいる」
「はい、それはこの目でしかと認めました。ご心痛お察しします」
「では、あの症状はどうやって説明するのだ?」
「もしブルーノ殿自身も魔法使いであられたならば、魔界を通じて魔法を仕掛けることは出来ます」
その魔法使いは簡単に魔法の原理のようなものをカーティスに向かって説明した。魔法使いは常に魔界にアクセスしているということ。魔界には距離がなく、魔界を通じてならば、遠く離れた魔法使いと交信することが出来るということ。
すなわち、魔界を経由すれば、外部から伺い知られることなく、遠く離れた魔法使いに対して、魔法をかけることが可能。
「しかしそれはあくまで魔法使い同士のこと。ブルーノ殿に魔法の嗜みはおありにならない」
「ない」
「だとすれば」
「何が原因だというのだ?」
「恐怖、かもしれません」
「恐怖だと?」
「ブルーノ殿はあの戦場で、とてつもない恐怖と遭遇なされた。それが原因となって、精神や心に変調をきたしておられる」
「何だと、我が息子を臆病者扱いするとは!」
「彼を治療することが出来るのは我々魔法使いではなく、神に仕える者だけかもしれません。神父から癒しを求めるべきでしょう」
その魔法使いはカーティスの怒りを前にしても、臆することなく言い返した。
「自分の無能を隠すために、よくもこのようなデタラメを!」
「デタラメだと。口を慎むがいい。ギャラック家当主よ」
魔法使いは更に厳しい口調で言い返す。
「何だと! 貴様!」
カーティスは腰の剣を抜いて、魔法使いに向かって振り上げた。しかしその剣は一瞬にして砕け散る。魔法使いの魔法が炸裂したのだ。
ブルーノの病について相談する場である。家臣や衛兵たちは部屋の外に控えている。その魔法使いとカーティス以外、この部屋にいるのは虚ろな目をしたブルーノだけ。
カーティスは命の危機を感じる。魔法使いを相手にして剣を抜くなど、何という愚かなことをしてしまったのであろうか。自分も耄碌してしまったものであると絶望する。
しかし相手の魔法使いは静かに微笑むだけで、これ以上の攻撃は加えてこなかった。
その物音を聞きつけて、部屋の外の衛兵たちが駆けつけてきた。扉をノックして、当主の安否を尋ねてくる。
「何もない! グラスが割れただけだ!」
カーティスは声を張り上げて、家臣たちを制した。そしてテーブルの上に、残った柄を静かに置く。それを見て、その魔法使いも頷いた。
「約束の報酬は払う。これで会合は終わりだ」
「私の言葉を信じて頂けないのは残念なこと」
「そなたよりも、もっと優秀な魔法使いに相談することにする」
「そうですか。ご自由に」
魔法使いは席を立とうとする。しかし彼は異変に気付いた。ブルーノである。会談の途中、高熱にでもうなされているかのように辛そうな表情をしていたが、何とか正気を保っていたようであった。その瞳には理性の輝きが宿り、魔法使いの言葉に必死に耳を傾けていた。
しかし今、その理性は消え去り、恐怖と怒りがそこを占めている。
「錯乱が始まりましたぞ」
「何だと!」
カーティスがハッと振り返る。「皆の者、ブルーノを押さえろ!」
「やはり魔法の気配はありませんでした。彼は魔法に対する恐怖に囚われているだけ」
その魔法使いは部屋に入ってきた家臣たちと入れ替わるようにして、足早に部屋を出ていく。
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