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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第七章 2)呪いの仕組み
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「そうだな、君にわかりやすいよう、たとえ話しをすれば、肖像画家の君に破格の依頼が来た。一枚の絵画に金貨百枚の仕事だ」
私が理解していないと見て取ったのか、プラーヌスはそのような話しを始めた。
「金貨百枚だって? ありえないよ、そんな報酬」
しかし私は首を傾げながら返す。
「向こうは本気で君に仕事をして貰いたいと思っている。その熱意がしっかりと伝わってくる」
「金貨十枚でも警戒するね」
「たとえ話しだよ。肖像画家の相場なんて知らないさ。とにかく君はその仕事を引き受けた。しかし実はその仕事を狙っていた他の肖像画家がいた。その画家はずっと以前から、この仕事を請け負いたいと願っていた。しかし突然現れた君が、その仕事をかっさらいおうとしている。その男はどうするだろうか? 君を殺してでも、その仕事を取りたいと考えるはずだ」
「そんなに血の気の多い肖像画家はいないだろうけど」
「君はさっきから、イチイチ文句をつけてくるね。たとえ話しだと言っているではないか」
「あ、ああ、わかっているけど・・・」
「シュショテにもいたのさ、そのような魔法使いが。彼がガルディアンの契約を結んだその魔族を狙っていた魔法使いがね」
「なるほど」
ようやく話しが飲み込めてきたかもしれない。
「相手が何者かわからない。しかし向こうはシュショテのあらゆる情報を入手しているようだ。まあ、シュショテが愚かで、あまりに無防備だったせいで、自らその相手にペラペラと喋ったのが原因だろうが」
「その魔法使いが掛けた呪いのせいで、シュショテはあんなふうに突然、暴れ出したわけか」
「その通り、シュショテは何やら、おぞましい幻覚を見せられているようだ。彼は魔法を放ちまくっていただろ? その幻覚を追い払うためだ。しかしそれは幻。あんなことをしても何の効果もない。逆にそれで自分の身体を傷つける危険もある。周りを害する可能性もある。実際、彼の身体は傷だらけだ。精神的にも随分追い詰められてもいる」
「君の力でもどうにかならないのかい?」
あの年齢に似つかわしくないくらいの、シュショテのどこか落ち着いた雰囲気、というか打ち沈んだ感じ。それはその呪いに苦しみ続けてきたからなのかもしれない。
「その呪いの仕組みが、まだよくわからない。魔法というのは魔法使い自ら編み出すことが出来るからね。この世界には星の数以上、魔法の種類が存在している。向こうはシュショテのことを知り抜いているようだけど、こちら側は相手の手の内がまるでわからない。何一つ情報がないのさ。一つ確かなのはその魔法使いがそれなりの手練れということ。それくらい」
「そうか・・・」
「僕の近くにいれば、彼が誤って自分の身体を傷つけるようなことはないだろう。何とか守ってやれる。しかしそれはただ単に死の恐怖が遠のいただけ。その呪いの根本的な解決にはならない」
「その魔法使いはシュショテを殺すことが目的?」
「ああ、彼を殺さずして、そのガルディアンを手に入れることは出来ないからね。何とか遠距離から、シュショテの命を絶とうとしてくるだろう。もし、その魔法使いがシュショテの一挙手一投足を掴んでいるのならば、僕とシュショテの間を引き離すために何か細工を施してくるかもしれない。そのときがそいつの正体を突き止めるチャンスだ。そいつさえ殺せば、シュショテの呪いは終わるはずだから。しかしそれがいつ起こるのかわからない。そいつと僕たちとの根競べだ」
それはそうと。
プラーヌスがメインディッシュの肉料理をナイフで切り裂きながら言ってきた。「君たちは何やら、愚かな勘違いをしていたようだけど?」
「誤解?」
あ、ああ、あのことか。私は目に見えて、慌てふためいてしまう。
「え? いや、違うんだ、それはアビュがね・・・」
やはりプラーヌスは私たちの気配に気づいていたようだ。
「アビュ? 君の恋人の女の子だね」
「恋人じゃない、助手さ。彼女が君とシュショテが同衾しているのを目撃したと言ってきて・・・」
「なるほど、しかし呆れるね、シャグラン」
「あ、ああ、そ、そうだね・・・、本当に何と言っていいのか」
もしかしたらプラーヌスは何もかも知った上で、このようになるよう仕向けていたのかもしれない。私はプラーヌスの淡々と話してくるその口調を聞きながら、ふとそんなことを思った。
すなわち、アビュと私が妙な誤解をしていたことも、彼はとっくの昔から気づいていた。
その誤解を解くために、あえてシュショテと私を組ませて、あの街に使いに出したのではないか。
そしてもちろん、彼はシュショテがこの騒動を起こすことも予知していた。
いや、さすがに何もかもプラーヌスが計算していたなんてことはないのかもしれない。あれかこれかは偶然なのかもしれない。
しかしこうやってあらゆる問題が収まった今となっては、彼の計画と陰謀の中で、私はただ右往左往していただけに思えてくるのだ。
すまなかったと謝るのも何か間違いのような気がして、私はひたすら彼の前で恥じ入るだけであった。
私が理解していないと見て取ったのか、プラーヌスはそのような話しを始めた。
「金貨百枚だって? ありえないよ、そんな報酬」
しかし私は首を傾げながら返す。
「向こうは本気で君に仕事をして貰いたいと思っている。その熱意がしっかりと伝わってくる」
「金貨十枚でも警戒するね」
「たとえ話しだよ。肖像画家の相場なんて知らないさ。とにかく君はその仕事を引き受けた。しかし実はその仕事を狙っていた他の肖像画家がいた。その画家はずっと以前から、この仕事を請け負いたいと願っていた。しかし突然現れた君が、その仕事をかっさらいおうとしている。その男はどうするだろうか? 君を殺してでも、その仕事を取りたいと考えるはずだ」
「そんなに血の気の多い肖像画家はいないだろうけど」
「君はさっきから、イチイチ文句をつけてくるね。たとえ話しだと言っているではないか」
「あ、ああ、わかっているけど・・・」
「シュショテにもいたのさ、そのような魔法使いが。彼がガルディアンの契約を結んだその魔族を狙っていた魔法使いがね」
「なるほど」
ようやく話しが飲み込めてきたかもしれない。
「相手が何者かわからない。しかし向こうはシュショテのあらゆる情報を入手しているようだ。まあ、シュショテが愚かで、あまりに無防備だったせいで、自らその相手にペラペラと喋ったのが原因だろうが」
「その魔法使いが掛けた呪いのせいで、シュショテはあんなふうに突然、暴れ出したわけか」
「その通り、シュショテは何やら、おぞましい幻覚を見せられているようだ。彼は魔法を放ちまくっていただろ? その幻覚を追い払うためだ。しかしそれは幻。あんなことをしても何の効果もない。逆にそれで自分の身体を傷つける危険もある。周りを害する可能性もある。実際、彼の身体は傷だらけだ。精神的にも随分追い詰められてもいる」
「君の力でもどうにかならないのかい?」
あの年齢に似つかわしくないくらいの、シュショテのどこか落ち着いた雰囲気、というか打ち沈んだ感じ。それはその呪いに苦しみ続けてきたからなのかもしれない。
「その呪いの仕組みが、まだよくわからない。魔法というのは魔法使い自ら編み出すことが出来るからね。この世界には星の数以上、魔法の種類が存在している。向こうはシュショテのことを知り抜いているようだけど、こちら側は相手の手の内がまるでわからない。何一つ情報がないのさ。一つ確かなのはその魔法使いがそれなりの手練れということ。それくらい」
「そうか・・・」
「僕の近くにいれば、彼が誤って自分の身体を傷つけるようなことはないだろう。何とか守ってやれる。しかしそれはただ単に死の恐怖が遠のいただけ。その呪いの根本的な解決にはならない」
「その魔法使いはシュショテを殺すことが目的?」
「ああ、彼を殺さずして、そのガルディアンを手に入れることは出来ないからね。何とか遠距離から、シュショテの命を絶とうとしてくるだろう。もし、その魔法使いがシュショテの一挙手一投足を掴んでいるのならば、僕とシュショテの間を引き離すために何か細工を施してくるかもしれない。そのときがそいつの正体を突き止めるチャンスだ。そいつさえ殺せば、シュショテの呪いは終わるはずだから。しかしそれがいつ起こるのかわからない。そいつと僕たちとの根競べだ」
それはそうと。
プラーヌスがメインディッシュの肉料理をナイフで切り裂きながら言ってきた。「君たちは何やら、愚かな勘違いをしていたようだけど?」
「誤解?」
あ、ああ、あのことか。私は目に見えて、慌てふためいてしまう。
「え? いや、違うんだ、それはアビュがね・・・」
やはりプラーヌスは私たちの気配に気づいていたようだ。
「アビュ? 君の恋人の女の子だね」
「恋人じゃない、助手さ。彼女が君とシュショテが同衾しているのを目撃したと言ってきて・・・」
「なるほど、しかし呆れるね、シャグラン」
「あ、ああ、そ、そうだね・・・、本当に何と言っていいのか」
もしかしたらプラーヌスは何もかも知った上で、このようになるよう仕向けていたのかもしれない。私はプラーヌスの淡々と話してくるその口調を聞きながら、ふとそんなことを思った。
すなわち、アビュと私が妙な誤解をしていたことも、彼はとっくの昔から気づいていた。
その誤解を解くために、あえてシュショテと私を組ませて、あの街に使いに出したのではないか。
そしてもちろん、彼はシュショテがこの騒動を起こすことも予知していた。
いや、さすがに何もかもプラーヌスが計算していたなんてことはないのかもしれない。あれかこれかは偶然なのかもしれない。
しかしこうやってあらゆる問題が収まった今となっては、彼の計画と陰謀の中で、私はただ右往左往していただけに思えてくるのだ。
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