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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第七章 3)美しい白い花
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今日の花はどんな色なのだろうか。赤、黄、紫、鮮やかな色彩を思い浮かべると、心に活力が宿る気がする。
もしかしたらそれは、私が画家である証しだろうか。
二流かもしれないが、私も画家の端くれ。色を扱うことを生業にしている。美しい色彩は、酒よりも豪華な食事よりも、私を幸せにして、奮い立たせてくれるのだ。
そういうわけで、花の中で私は目覚める。
長い一日が終わり、次の日の朝が来た。今日も塔での仕事が始まる。
昨日は街に出て、様々な事件に遭遇し、心身ともに疲れ果てていたのは間違いなく、寝台に横になると同時に眠りに落ち、気がつけば朝になっていた。
ぐっすりと眠ったことは確かではあるが、まだまだ寝足りない気もする。とはいえ、眠り足りないからといって、ゆっくりと寝ていられるような性格ではない。
私は重い身体を持ち上げて、寝台から転がり落ちるように起きる。いずれにしろ、朝食を食べると身体は目覚めるはず。
それに花だ。
召使いの誰かが持ってきてくれた朝食がトレーに載せられ、私の部屋の扉の前に置かれている。有り難いことに、この塔には私よりも早起きの召使いだっている。
しかもこの召使いは細かい気づかいをしてくれるようで、そのトレイには小さな花瓶が載せられ、そこに一刺しの花が飾られたりしているのだ。
アビュの仕事かと思っていたが、彼女は首を傾げて否定した。どうやら私の知らない召使いの、心のこもった仕事。
今日は白い花のようだった。私はちょっとばかしの感謝を口にして、今日のその白い花を部屋の花瓶に移し替える。
何という名前の花だろうか。この花の美しさにすっかり魅了されているが、名前も知らない。
先端が丸い大きな花びらだ。その花びらは白ではあるが、どことなく紫がかっているところもあったり、黄色がかったりもしている。自然の中に単純な色彩などないのだ。いや、だからこそ、それを絵にする価値がある。
ああ、しかし時間がない。いつまでも花の美しさに感動している場合ではないので、朝食を食べながら、今日やらなければいけない仕事を頭の中に思い描く。
昨日、街から連れ帰った傭兵たちをバルザ殿に引き合わせなければいけない。そのついでに、森を切り拓く作業がどれくらい順調に進んでいるかバルザ殿に伺っておこう。
雇ったばかりの傭兵たちの最初の仕事は、森林の開拓作業になるかもしれない。
何だって? 話しが違うではないか。スザンナたちから怒られるのは間違いないだろう。まあ、その対応はバルザ殿にお任せするとしても、細かい契約に関する話し合いは私が勤めなければいけない。
優秀そうな傭兵だった。せっかく雇ったのだから破談にしたくない。
それに昨日の大変な出来事を体験して、しばらく街に出る気概は失せてしまった。何としてでも、あの傭兵たちと契約を果たしておきたい。だからと言って、昨日約束した以上の報酬も払う余裕はない。そこのところで上手く折り合いをつけなければいけないのだ。
重要な仕事はそれだけじゃない。
今日もまだまだ客たちがやってくるだろう。その対応にも当たらなければいけない。もしかしたら王の遣いだって到着するかもしれない。そんなことになると、全てのことを差し置いて、その仕事だけに集中しなければいけない。
別にこれは仕事ではないが、カルファルとも会っておかなくてはいけない。昨日のカルファルの態度。あれはちょっとばかし異常だった。
彼はプラーヌスの留守の間、謁見の間にある玉座のような椅子に座っていたのである。まるでプラーヌスを挑発するように。隙があれば、この塔を奪うぞと宣言するかのように。
そのときのプラーヌスの不快そうな表情。ちょっとしたことでも怒りをあらわにするプラーヌスではあるけど、あのときの怒りは本物だった。
彼の機嫌がいつもより悪ければ、昨日がカルファルの人生終焉の日だったかもしれない。
カルファルはいったいどういうつもりなのだろうか。ちょっとばかし、あの椅子の座り心地を試してみたかっただけなのであろうか。
しかしもし彼に何か邪な企みがあるのだとしたら、警告を発しておく必要があるだろう。
カルファルは厄介な男であるが、悪い奴じゃない。彼の死など見たくないのだ。そしてプラーヌスの手が血で染まる場面も。
カルファルは本当に旅の資金が足らなくて、この塔を出られずにいるのだとしたら、彼の望み通りその資金を貸し与えるべきだろうか。そんなことで事が穏便に済むのであれば、きっとそれは最善の策。
これも仕事などではないが、アリューシアにも逢わなければいけない。
いや、私のこの塔での重要な任務は、れっきとした仕事ではないもののほうが多いかもしれない。
シュショテの呪いの話しを、彼女にしておかなければいけないのだ。彼女なりにきっと、シュショテのことを心配しているはずだから。
最初に済ませておく仕事に、私はアリューシアとの会合を選ぶ。どう考えても、それが最も気が楽で、手軽な仕事であろう。
いや、その前に執務室に顔を出しておかなくてはいけない。サンチーヌやアビュたちと会い、朝の会議だ。
いずれにしろ、忙しい一日の始まり。部屋を出る前、何だか名残惜しくて、私は白い花に一瞥をくれる。
もしかしたらそれは、私が画家である証しだろうか。
二流かもしれないが、私も画家の端くれ。色を扱うことを生業にしている。美しい色彩は、酒よりも豪華な食事よりも、私を幸せにして、奮い立たせてくれるのだ。
そういうわけで、花の中で私は目覚める。
長い一日が終わり、次の日の朝が来た。今日も塔での仕事が始まる。
昨日は街に出て、様々な事件に遭遇し、心身ともに疲れ果てていたのは間違いなく、寝台に横になると同時に眠りに落ち、気がつけば朝になっていた。
ぐっすりと眠ったことは確かではあるが、まだまだ寝足りない気もする。とはいえ、眠り足りないからといって、ゆっくりと寝ていられるような性格ではない。
私は重い身体を持ち上げて、寝台から転がり落ちるように起きる。いずれにしろ、朝食を食べると身体は目覚めるはず。
それに花だ。
召使いの誰かが持ってきてくれた朝食がトレーに載せられ、私の部屋の扉の前に置かれている。有り難いことに、この塔には私よりも早起きの召使いだっている。
しかもこの召使いは細かい気づかいをしてくれるようで、そのトレイには小さな花瓶が載せられ、そこに一刺しの花が飾られたりしているのだ。
アビュの仕事かと思っていたが、彼女は首を傾げて否定した。どうやら私の知らない召使いの、心のこもった仕事。
今日は白い花のようだった。私はちょっとばかしの感謝を口にして、今日のその白い花を部屋の花瓶に移し替える。
何という名前の花だろうか。この花の美しさにすっかり魅了されているが、名前も知らない。
先端が丸い大きな花びらだ。その花びらは白ではあるが、どことなく紫がかっているところもあったり、黄色がかったりもしている。自然の中に単純な色彩などないのだ。いや、だからこそ、それを絵にする価値がある。
ああ、しかし時間がない。いつまでも花の美しさに感動している場合ではないので、朝食を食べながら、今日やらなければいけない仕事を頭の中に思い描く。
昨日、街から連れ帰った傭兵たちをバルザ殿に引き合わせなければいけない。そのついでに、森を切り拓く作業がどれくらい順調に進んでいるかバルザ殿に伺っておこう。
雇ったばかりの傭兵たちの最初の仕事は、森林の開拓作業になるかもしれない。
何だって? 話しが違うではないか。スザンナたちから怒られるのは間違いないだろう。まあ、その対応はバルザ殿にお任せするとしても、細かい契約に関する話し合いは私が勤めなければいけない。
優秀そうな傭兵だった。せっかく雇ったのだから破談にしたくない。
それに昨日の大変な出来事を体験して、しばらく街に出る気概は失せてしまった。何としてでも、あの傭兵たちと契約を果たしておきたい。だからと言って、昨日約束した以上の報酬も払う余裕はない。そこのところで上手く折り合いをつけなければいけないのだ。
重要な仕事はそれだけじゃない。
今日もまだまだ客たちがやってくるだろう。その対応にも当たらなければいけない。もしかしたら王の遣いだって到着するかもしれない。そんなことになると、全てのことを差し置いて、その仕事だけに集中しなければいけない。
別にこれは仕事ではないが、カルファルとも会っておかなくてはいけない。昨日のカルファルの態度。あれはちょっとばかし異常だった。
彼はプラーヌスの留守の間、謁見の間にある玉座のような椅子に座っていたのである。まるでプラーヌスを挑発するように。隙があれば、この塔を奪うぞと宣言するかのように。
そのときのプラーヌスの不快そうな表情。ちょっとしたことでも怒りをあらわにするプラーヌスではあるけど、あのときの怒りは本物だった。
彼の機嫌がいつもより悪ければ、昨日がカルファルの人生終焉の日だったかもしれない。
カルファルはいったいどういうつもりなのだろうか。ちょっとばかし、あの椅子の座り心地を試してみたかっただけなのであろうか。
しかしもし彼に何か邪な企みがあるのだとしたら、警告を発しておく必要があるだろう。
カルファルは厄介な男であるが、悪い奴じゃない。彼の死など見たくないのだ。そしてプラーヌスの手が血で染まる場面も。
カルファルは本当に旅の資金が足らなくて、この塔を出られずにいるのだとしたら、彼の望み通りその資金を貸し与えるべきだろうか。そんなことで事が穏便に済むのであれば、きっとそれは最善の策。
これも仕事などではないが、アリューシアにも逢わなければいけない。
いや、私のこの塔での重要な任務は、れっきとした仕事ではないもののほうが多いかもしれない。
シュショテの呪いの話しを、彼女にしておかなければいけないのだ。彼女なりにきっと、シュショテのことを心配しているはずだから。
最初に済ませておく仕事に、私はアリューシアとの会合を選ぶ。どう考えても、それが最も気が楽で、手軽な仕事であろう。
いや、その前に執務室に顔を出しておかなくてはいけない。サンチーヌやアビュたちと会い、朝の会議だ。
いずれにしろ、忙しい一日の始まり。部屋を出る前、何だか名残惜しくて、私は白い花に一瞥をくれる。
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