私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第七章 18)失う自由も傷つく自由も

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 素っ気ない。呆気ない。結局のところ、自分以外の人間が何をしようがどうだっていい。
 外部に対するプラーヌスの無関心な態度は清々しいくらいだ。きっと彼は、道端に伏している死体にも無関心だろうし、とんでもなく美しい花の前だって素通りするだろう。
 私もそのような性格だったら、ずっと楽に生きていける気がする。しかし私はむしろ逆、周りのことが気になって仕方ない性格で、そのせいで無駄な気苦労ばかりを背負い込んでいる。
 これだって無駄な気苦労だろう。

 「なあ、プラーヌス、アリューシアは彼女なりに頑張ってきたと思う。これまでの彼女の努力を認めてあげるべきじゃないかな?」

 プラーヌスはすっかりその話題に飽きてしまったようであるが、彼の関心を引き戻すため、少し語気を強める。
 私は少しもすっきりしてなどいないのだ。アリューシアとカルファルが一緒にこの塔を出ていくなんて悪夢の一つ。望ましい展開ではない。
 だから私はもう一つの可能性を探ってみる。すなわち、プラーヌスがアリューシアを弟子として認めるという展開のほう。

 「笑わせるなよ、シャグラン。そんなもの、ありえない話しだ」

 しかしプラーヌスは私の望みを簡単に切り捨てる。

 「あんな小娘、何の役に立つ? 努力している人間は多い。それを片っ端から弟子にしていたら、この塔は無能な魔法使いで溢れてしまうね」

 「それはわかっている。でも、アリューシアの情熱は本物だと思う」

 「情熱が本物か偽物か、そんなことだってどうでもいいんだ。ただ課題をクリアーするかどうかだけ。あの程度の課題、少しの覚悟があればどうにかなるのさ。腕でも足でもいい。何かを犠牲にすれば、彼女はあの魔族と契約を果たすことが出来た」

 「腕を切るとか、足を切るとか、僕には想像も出ない。とてつもない恐怖だ。そんな覚悟をアリューシアなんて女の子に求める君に、僕は違和感を覚えるね」

 「言ってくれるね、シャグラン。僕に違和感か」

 「いや、少し言い過ぎたかもしれないけれど」

 「かまわないさ! しかし何も持たない人間ならば、この程度の覚悟は難しくないはずだ。それが魔法の世界だよ。その覚悟だけで、もう一つ上のレベルの魔法使いになれる。その決断が出来ないアリューシアには向上心がない」

 彼はその言葉を強調するように、パチリと指を鳴らす。

 「結局のところ、大いに満たされているのさ。彼女は若くて美しい。そして裕福な生まれで、両親に深く愛されている。今の生活に何の不満もないはずだ」

 「ああ、そういえば君はアリューシアの両親とも顔を合わしている」

 「僕が彼女を人質にしたら、いとも簡単に向こうの親は折れてきた。懐かしい話しだ」

 「人質にしただって?」

 「あのとき、かなりの大金が動いたよ。それだけアリューシアは大切にされていたという証しだ。しかもここにきて、カルファルにも自分の存在を肯定してもらえた。美や健康を失ってまで、自分を成長させたいなんて思うわないないだろう」

 「ああ、そうだね。それは理解出来る」

 「そんなレベルの魔法使いを弟子にして、僕に何の得があるというのか? こっちが教えて欲しいくらいだ」

 「ない、かもしれない。だけど」

 「アリューシアをカルファルに奪われたくない? それが君の意見か。だったら、自分で行動すればいい。僕に頼るのはやめてくれ」

 「そんなつもりはないのさ。ただ単にアリューシアが心配なんだ。そもそも、アリューシアは大変な間違いを犯してしまったと思う。君に憧れたこと、魔法に憧れたこと・・・」

 「そうだ。退屈だが、平穏な人生のほうが彼女には似合っていた。分不相応なことを夢見てしまった。しかし安心するんだ、シャグラン。もしかしたらアリューシアはカルファルからの誘いだって断るかもしれない」

 「そうだろうか」

 「彼女にはきっと、その程度の覚悟だって出来ないはずだ。カルファルの女になること、それはすなわち、全ての時間をあいつに捧げなければいけないということ。あいつの望む行為に身を委ねなければいけない。そんな覚悟がアリューシアにあるとは思えないね。・・・いや、女の気持ちは僕にはわからないな」

 しかしプラーヌスは、すぐに首を振って、さっきの意見を否定し始めた。

 「魔法の世界に本気で向かい合うことと比べると、そんなことは意外と容易いのかもしれない。男は魔族よりも優しい」

 私もわからない。結局、アリューシアが何を考えているのか、わからない。
 いや、そんな中、わかっていることが一つある。一方の当事者である、カルファルが生ぬるい男じゃないということだ。
 アリューシアが望もうが望むまいが、既成事実を作るため、彼はアリューシアを力づくで奪うかもしれない。

 「それでいいではないか。何も変わることなく、何も失うことなく、この塔からただ去っていくより、カルファルに無茶苦茶にされるほうがいい。きっとそれで、彼女は成長する」

 プラーヌスは言う。

 「そ、そんなの、アリューシアが憐れだ」

 「君のそういう考え、彼女からすれば大きなお世話だろう。彼女には失う自由も、傷つく自由もあるのさ。君の人形ではない」

 「それは当然だけど・・・」

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