灰墟になった地方都市でペストコントロールやってます 世界に必要な3つのこと (仮)

@taka29

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2 Blue Brain BBomber

#1β

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 (シャワーを浴びよう……)
回想タイム終了し。クロエは着替えを持って浴室へと向かった。服を脱ぎ下着姿になる。鏡を見るとそこには白い肌に
不釣り合いな黒いあざがあった。
あざの位置は悪夢と同じ腿の内側、下腹部、左胸の乳房下側……左胸のあざは、まるで心臓の上にあるように見えなくもない。
アザの位置は巧妙に隠され、よほど親しい間柄の人でなければわからない箇所にあった。つまり外からは見えない……服を脱がないとわからない箇所にある。このアザが十数年来クロエを精神的に苦しめていた。
(……これは……これは罰なんだ……)
クロエは自分の胸にあるアザを指先でなぞりながら思った。
(私が弱かったから神様が与えた罰……)
クロエはふぅと息をつくと頭から熱いシャワーを浴びた。

シャワーを上がった後、クロエはTシャツとスウェットパンツという先ほどより布地の面積が多いがラフな格好になり、冷蔵庫のミネラルウォーターを一口飲むとベランダに出てタバコを吸うことにした。

クロエは手すりにもたれかかりタバコに火をつける。夜明け前の風が日照った頬にあたり心地よい。廃都市の方を見ればだんだん白みはじめた朝焼けを背に異形を街に封じ込めるための装置、通称『壁』の光が今日もぼんやりとそびえ立っているのが見える。
その光景を見ながらクロエは紫煙と共に溜まっていた物を吐き出すかのようにポツリと言った。
「私は…弱くなんてない!……」
それは誰に対しての言葉だったのか?自分に対する言葉か?それとも「あの人」に向かって言ったのか?クロエ本人にもわからなかった。
クロエは再び廃都市の方へ視線を向けた。そして自分の心の中にわだかまっている感情の正体を探ろうとする。だがいくら考えても答えは出てこなかった。
(……ちょっと掃除でもしようかな?)
時刻は午前4時50分、クロエは思索を中断しワカが起きてくるまでリビングの掃除をすることに決めた。

「クロエさん、おはようございます。朝早いんですね……って、うわっ!?」
朝6時過ぎ、物音に目を覚ましリビングにやって来たワカはその変貌ぶりに目を丸くした。
昨晩の散らかり具合が嘘のように綺麗になったりリビングには朝食の良い匂いが広がっていたからだ。
そして何より一番驚いたのはソファーの上に脱ぎ散らした服と下着が無くなっていた事だ。さっぱりしたソファーの色は落ち着いたライトグレーで部屋の調度によく馴染んでいる。
「あぁ、起こしちゃったか?ごめんな」
そう言ってキッチンから顔を出したのは黒いエプロンを着けたクロエだった。
「えっと……どうなってるんです?」
ワカがサイズの合わないパジャマの袖を振りながら尋ねるとクロエは少し困ったように微笑んだ。
「実は昨日疲れて、寝落ちしてたみたいでね……。朝早くに目が覚めちゃったから気分転換も兼ねてちょっと部屋を掃除してたんだよ」
「そうだったんですか……でも……」
ワカがもったいぶった口調で二の句を継ぐ。
「実はわたし寝起きがもの凄く悪いんですよ……」
「うん」
ワカの意図を図りかねたクロエは適当な相槌を返す。
と、ワカが『カッ!』と左目を見開き、声を張り上げた。
「朝っぱらからドドタンバタンうるさいんですよ!わたしを不眠症にするつもりですか!」
「うわっびっくりした!急に大きな声出さないでよ」
突然の大声に驚きながらも、クロエはやれやれといった表情で肩をすくめた。
「別にいいじゃないの、減るもんじゃないし」
「ダメです!プライバシーの問題ですよ!」
「もう……じゃあ今度からはちゃんと言うようにするからさ」
「約束ですよ!」
「はいはい、わかった……じゃあ味噌汁も出来たしご飯にしようか」
クロエが呆れた様子で言うとワカは頬を膨らませつつ慌てて席に着いた。
綺麗に片付いたダイニングテーブルの上に食卓が出来上がる
並ぶ朝食は白米、わかめと豆腐のみそ汁、焼き鮭、ほうれん草のおひたしだ。
『いただきます』
手を合わせて箸を左手に取る二人。
「……おいしい」
ワカがしみじみとした声で呟いた。
「口に合ったようで良かった」
クロエがほっとしたような笑みを浮かべる。
それから二人は黙々と食事を続けた。

7時50分、朝食を食べ終えて身支度を済ませたクロエは職場に向かうため部屋を出た。
今日は丸一日デスクワークが中心のシフトである。
部屋を出る際、玄関まで見送りに来たワカに
「じゃあ行ってくる、今日はパトロールの担当じゃないから
夕方までには帰ると思うけど、もし足りないものがあったら一階のコンビニでこれ使ってね
」と言ってバックから財布を取り出しプリペイドカードを手渡した。
ワカはカードの額面を確認すると
「三千円じゃないですか二千円じゃないんですね」と残念そうな顔をする。
「え?ワカちゃんもしかして算数苦手?九九とかちゃんと言えない人?」
「いえ……違うんです、実はわたし紙幣の中でも二千円札が大好きなんですよ、あの中途半端なところとか……最高にクールですよね」
「いや意味分かんないんだけど」
クロエは困惑気味の表情で首を傾げた。
「そういえばワカちゃん、昨日はしっかり眠れた?その……アタシが急にリビングの片付けを始めるまで……」
「はい、おかげさまでぐっすりでした。クロエさんが早朝に一人でハッスルなさるまでは」
「うっ!?」
痛いところを突かれたクロエは言葉に詰まる。
「まぁ……さっきは起こしちゃってホントゴメンね……じゃあ、行ってきま~す」
「いってらっしゃいませ、クロエ様。これは大切にに使わせて頂ます」
そう言ってワカはカードをパジャマのポケットに入れた。
クロエはそんなことを思い出しながらマンションから徒歩十数分の位置にある地味な外観のオフィスビルに入る。
クロエが勤務しているのはこのビルの三階にある『国立法人T大学病院・有害異種形而鳥獣(ゆうがいいしゅけいめんちょうじゅう)捕獲課」
』という部署だ。
「おはよう、ノラモト」
「あっ……お、おはようございます課長!」
受付で無人端末に身分証を提示して入館手続きを済ませエレベーターホールに向かったクロエはばったりと課長のリョウコに出くわしてしまった。
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