灰墟になった地方都市でペストコントロールやってます 世界に必要な3つのこと (仮)

@taka29

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4 デイオフ

#4β

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……癪に触りますわ……わたくしより似合うなんて……、
黒いイブニングドレスで姿見に映るワカを見てオソレがぽつりと呟く。
バスルームで汗を流した二人、まるで美術館か博物館のような沢山の部屋で構成された屋敷の二階、オソレの部屋で、二人は押し問答をしていた。
……―決まっているでしょう? オソレは言った。
『ワカは賓客なのです、どうかわたくしの用意した物をお召しになってください』と。

ちょっと意味がわからないんですけど……。困惑気味にワカが返すとオソレは
『思った通り、わたくしの一張羅とってもお似合いですわ』と満足げな表情を浮かべてみせる。
部屋で探し物を見つけたら食事会ですわ!とのこと、それまではわたくしの部屋で寛いでいてくださって結構です。ということらしい。当のオソレは普通の上品なブラウスとスカート姿でとても似合っているのが羨ましい。

『大丈夫ですわよワカ、貴方は可愛いからきっとあの子も気に入って―……』
そう言いかけてオソレは口をつぐんだ。何かに気付いたように目を見開いている。
(あれ……?)
突然の沈黙に耐えかねてワカは小声でオソレに話しかけようとしたその時

ザーーーッ、ガタン!部屋に入った時にオソレが、寂しいから、という理由で点けたておいた大型テレビの画面に突然廃墟の古井戸が写し出される。
!?、ビクっと身を震わせるワカ。なんだ……これは……。テレビ画面いっぱいに写っているのは山中の枯井戸、そしてその周りに群生しているのは無数の彼岸花、不気味過ぎる。
(さっきの怪奇現象といい……この映像といい……怖すぎやろ……)

ふぅ……、不意にオソレがため息をついた。と同時に画面にも動きが生じる。枯井戸の中からズルズルと這い出てくる人影、その姿形はどこか見覚えがある気がするが……誰だろう? 私の当面の身元保証人で柿の種が好物で休日は家でボトルシップをシコシコ作ってる意地悪おばさんに似ているような……うーん……?あ、違う。24歳はお姉さんか……いやそもそも私はクロエさんの生態にそこまで詳しくないしね。やっぱり他人の空似かなぁ。

画面の中では井戸から無事這い上がった女性が、キョロキョロと周囲を確認するように見回すと、此方に向かってふらふらと近寄って来るところだ。足取りは覚束ない。モデルのようにすらりとした長身に白いワンピースとミューズ、なまじ外見が整っているだけに気味が悪い……。画面に時折短くノイズが走る。

「ちょっと、オソレ、オソレ!」
ワカが自分をシカトして本棚を引っ掻き回しているオソレを振り向いた数瞬、遂に謎の女性はモニターの縁を掴んでゆっくりとテレビ画面から這い出して来た。
(来ちゃったよ!!どうすんだよコレ!……あれ?)
毛足の長い絨毯の上を指を伸ばした独特の姿勢でワカの元へ這い寄る女性、しかしここで予想外の事態が起きた。
作業を中断して振り向いたオソレがどりゃあぁぁ!と気合一発、分厚いファイルを振り上げワカに迫る女性の脳天に容赦なく振り下ろしたのだ。「うぎゃあ!!」「……あ、え?」

女性が悲声を上げる。その光景に呆気にとられるワカ。
「ず、頭蓋骨が凹んでお嫁に行けなくなった~……!」半泣きの様相の女性、「いい加減になさい!!私としたことがすっかり忘れていましたわ……。ほら、あの壁ををよくご覧なさいな」言われてワカは再びテレビ画面に目を戻す。
「え、何?え?え?」
大型テレビと思われたものは実はプロジェクションマッピングの投影装置で、隠し部屋に通じるドアを隠蔽する仕掛けらしい。確かに壁には一辺2mほどの四角く切り取られた穴があり、そこのスクリーンになっている部分はさながら映画のホームシアターだ。

「丁度5万回目です」(……それにしても)
ワカは思った。相変わらずオソレの行動力には驚かされる。そして……
(この人、髪は伸ばし放題、綺麗だけどボサボサで汚い。クロエさんに瓜二つだ、目の下のほくろの位置まで一緒……ただし)
ぐったりした姿勢から、ゆっくりと身を起こしたクロエ貞子さん(仮)、その背丈は……2メートルを越えていた。
「おーちゃんが私の脳天に打ち込んだ回数、さっきので丁度5万回目です~……そんなに私の頭っていい形してますかねぇ?」
彼女は涙目でオソレを上目遣いで睨みつける。
(この背丈の大きい女性はオソレの肉親だろうか?年齢が合わない気がするけど…もしかしてママ?お母さん!?)

「次からは鉄兜でも準備なさいな。そうすればもう少し痛くなくなるかもしれませんわ~」と嘯くオソレ。
「ところでオソレ主任」突然キリッと表情を引き締めたクロエ貞子さん(仮)が話題を切り替える。
「あれとあれの支度が整っております。まずは一階の食堂であれをお召し上がりくださいませ、腕によりをかけて拵えました、さぁご友人も一緒に―……ぽ、ぽぽ」
……なんと言うことでしょう。このアウトな女性は、オソレの知り合い、しかもこの屋敷の管理人だったのです。
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