灰墟になった地方都市でペストコントロールやってます 世界に必要な3つのこと (仮)

@taka29

文字の大きさ
39 / 58
4 デイオフ

#5α

しおりを挟む

「もしかしてあなた、お化け屋敷とかダメなタイプ?」
正装に着替えた私達は第二のクロエさん、もといトヨミさんに案内された屋敷の一階にあるダイニングで、フレンチのコース料理に舌鼓を打っっていました。
あの後、ぽっぽ、と鳩の鳴き声みたいな語尾を交えつつ彼女トヨミさんは簡単な自己紹介をしました。
曰く、ここの屋敷の主は今現在出張中で、代わりに私が管理をしているとのこと。彼女によると、T市には年に数回しか行かないしボトルシップにも興味はないし滅多に来客ないので暇なのだそうです。

つまりオソレはクロエさんに瓜二つの家政婦の頭をぶん殴ったのです。なんてことすんねんこの紫芋。私が慌てて非礼を詫びると、
「えぇ分かっておりますとも、お友達の為にやったことだと、でももうやめてくださいね、あれ結構効き目がありますから。それに……」
それに?
「……なんでもありません」
誤魔化すようにそう呟いて、トヨミさんは私を無視して一階に引っ込んでしまいました。そして十数分後、部屋の内線が鳴り、オソレが受話器をとると、どうやら食事の準備が整ったようで。こうして冒頭の場面に戻るわけですが……。

「そんなことありません、むしろここに永住したいくらいっすよ、へっへ」
「では、一週間ほどお泊まりになっては?わたくし、月曜から仕事があるので街に戻りますが、自由に使ってもらって構いませんわ♪」
「……すいません、嘘です!ホントはお化け苦手です!!」
「あら?素直でよろしい」
そうやって色とりどりの前菜や焼きたてのパンを肴に泡の出る白葡萄ジュースを楽しんでいると、トヨミさんがメインディッシュを運んで来てくれました。どうやら魚のパイ包みのようですが素材の産地は恐らくこの地底湖。付け合わせや前菜に使われていた野菜は屋敷の裏庭や水上ファームで採れた、もぎたてフレッシュとのこと。(こりゃまた豪勢なおもてなし)

それにしてもこの人、やっぱりどこかおかしいよね?
オソレの暴挙に対する謝罪、その後の接待、そして今現在の給仕、その全てにおいてそつがない。
例えば普通なら料理を置いた後は厨房に引っ込む筈なのに、彼女はそのままそこに佇み、ワカの様子を窺っている。
(まるで私を観察しているような……)
それはあたかも監視カメラのような不気味さだった。

「たいへんお熱くなっております、気をつけてお召し上がり下さいませ~……ぽぽぽ♪」
彼女が去り際に口ずさんだのは謎の歌。……さっきまでの優雅な振る舞いとは大違いですよ。
(さてと……それじゃあ本題に切り込みますか)
泡の出るジュースを煽って上機嫌のオソレ、今なら重要な情報もポロっと洩らす、かも知れない。
「えっと、オソレさん、いくつか聞きたいことがあるわけで……」
そう切り出すと、待ってました!とばかりに身を乗り出すオソレ。
「そうでしょう?聞きたいことがありますわよね?えーっと……質問は3つまで、それと答えられる範囲のことしか言っちゃいけない決まりだからよろしくお願いしますわ!」
……なんかノリが良くて調子狂うなぁ。とりあえず1つ目の質問をするとしようか。

「トヨミさん、あの人は何者?」
「ああ~!、彼女の事ですね」
「そう、トヨミさん、あの人も外の幽霊みたいな子達と関係あるの?」
……一瞬の沈黙のあと、オソレはゆっくりと息をつき、答える。
「……彼女はこのお屋敷の管理人です。T大の医療群から派遣された優秀な異形の研究者でもありますわ。そして、外の子達と『同じもの』でもあります」
……同じもの?どういう意味?
「外にいた子達とおんなじに生まれて、互いで互いを食いあって存在が消えてしまった子達ですわ、でも……」
ふいにオソレが振り返るといつの間にか水差しを持ったトヨミさんの姿。
初対面では幽霊みたいな風貌に面食らってあまり注視していなかったけど、エプロン姿も様になってるし結構似合ってると思う。……しかし当のトヨミさんは私の視線に気付いたのか、不意に目線を逸らす。

「……失礼しました、お客様のお皿を取り方させていただきたく思いまして」
オソレはそんな彼女を見て何故か満足げに微笑む。
そしてこう続けるのだ。
「でもこうやって何体かは生き残って、成長して戸籍を与えられていろんな場所で社会貢献しているんですわ……ほら?ワカえもんの居候先のあの女も、もうちょっとこの子を見習ってしとやかになってほしいですわねぇ……」
とりあえず彼女は呪いの映像の怪異とかではないみたいだけど……。

「さて、今ので質問は2つ分、とカウントさせて頂きます、あと1つだけ答えてさしあげますわ、どうぞ~♪」
トヨミさんが注いでくれた水で唇を湿らせ、次の問いを投げかけてみる。
「あの場所とこのお屋敷は、なに?」

この質問は、さすがに興味深かったらしく、オソレも少し表情を引き締めたようだ。
「……そう、そこが重要ですわよね。えぇいいですともお答えいたしましょう」
そして彼女はテレビドラマの刑事のように指を立てて、すらすらと説明を始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...