世界樹の反抗期〜世界樹と呼ばれて一万と二千年〜「もう、じっとしているの我慢出来ない!」

ke-go

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第二章 冒険者 編

23 世界樹とAランク冒険者

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 「すげぇ…」

訓練生達は、マナとドドじいの手合わせから目が離せない。

 ドドじいの金色に輝く右腕が、マナの顔を襲う。

 ローレライの羽衣…

 自動防御。剛腕がマナの顔をとらえようとした瞬間、
高速でマナを守る水の壁。

マナはドドじいの圧力に瞳を閉じてしまうが、ローレライの羽衣はマナを守る。

 「妖精武具か…珍しいのう」

マナは怖くて動けなかった。ドドじいは濡れた自分の腕を見ながら笑う。

 ドドじい…本当に私を倒す気だ。

マナは本能的に世界樹風に改造した鞭を構えるが、その次の行動へ移す事が出来ない。

 私にはドドじいを叩く事なんてできない…

 「マナ…お前は知った顔が相手だと攻撃できんのか?仲良くなった者は攻撃できんか?」

 できるわけないよ!

 そう言いかけた瞬間、ドドじいはレナ・バースにむかい突進する。

 どうして!

 レナ・バースは咄嗟に双剣を構える。あからさまに分かる殺気。

 「くっ!」

 ドドルの金色に輝く拳をレナ・バースは双剣で受け止める。圧に押され耐える足が後退する。

 刃は性能を発揮できない。拳のオーラは刃を通さないほど硬化していた。

 レナ・バースは身体を捻らせ拳の軌道を反らした。

 なぜ私を攻撃した!

 そう考える余裕はレナ・バースにはなかった。

殺らねば自分が殺られる。そう思うほどの殺気はレナ・バースを次の行動へ移した。

 捻らせた身体の遠心力からの回転斬り!油断はしない一撃目を防がれたら、もう片方の剣で空いたボディーへ剣を撃ち込む。

 Aランクと、それに迫るBランク冒険者。言葉だけなら近い存在。

 しかし…対峙すれば感じてしまう……力の差

 回転しながら放たれた一撃を左腕で受け止めるドドルに対し、それは想定内だと空いた左腹部へのレナ・バースの斬り上げ攻撃。

 当たる!

 感触と今までの経験がレナ・バースに知らせる。

 これはいける!

 ………………

 これが差なのだろう。

 身体に触れようとしたレナ・バースの左手首を掴み取るドドルの右手。そしてレナ・バースは自身の斬撃スピードが遠心力となり投げ飛ばされ、宙を舞った…

 背中から地面に落ちたレナ・バースを見てマナは咄嗟に二人の間に入る。

 ドドじいが怖い…

 震えながらもレナ・バースを庇うマナ。その背中からマナの肩を掴み起き上がるレナ・バースはマナの頭を撫でて前にでる。

 「マナちゃん…ありがとう。私はまだ大丈夫!」

 「ふん!ギルドトップクラスが、この程度。話しにならんな…二人でこい!」

 そう言いながらドドルは両腕を輝かせ二人にむかい構えた。

 マナは、お嬢を虐めるなと大きな声をだす。

 しかしドドルは構えを解かない。

 嫌なら自分で彼女を守れ!

 どうして…ドドじいは意地悪するの?お嬢は優しい人なんだ。

 マナは大声で、レナ・バースがどれだけ優しいかドドルに話した。

 お嬢は私の大事な人!ドドじいの意地悪!

 「お嬢は誘惑の女騎士なんだよ!」
 
 ドドルは構えを解かない。
 レナ・バースは後ろを振り向きマナを見た。

 「お嬢はお風呂で、私を抱きしめるんだよ!」

 ドドルは構えを解かない。
 レナ・バースは振り向いた状態で、眉間にシワを寄せた。

 「お嬢は鞭でお尻を叩いてって言うんだよ!」
 
 ドドルはレナ・バースに一度視線を向けるが、構えを解かない。
 レナ・バースは振り向いた状態で、瞬きの回数が増える。

 マナは懸命に叫び続ける。

 「私は叩けないから、少しだけ強く…お嬢のお尻を蹴飛ばしてしまったの!」

 ドドルの殺気が弱まる。そして首を傾げた。
 レナ・バースは振り向いた状態で、マナに口パクで何か伝えようと努力する。

 「ふ~…ふ~…昨日は、この膨らみを食べてと私は迫られたんだ!寝かせてくれないんだよ、お嬢は!」

 ドドルは構えを解いた。そしてレナ・バースを見つめる。視線は顔より、やや下気味だ。
 レナ・バースは正面を向いたまま、少し震えているようだ。そして耳が赤い気がする。

 訓練生達は全員、レナ・バースを見つめている。とくに男性陣は真剣な眼差しのようだ。

 「マナちゃん…前から言いたかったの。私は騎士じゃないよ。マナちゃん…私は剣士だから!」

 マナは手を口にあて驚く。知らなかった。私は知らなかったよ。

 お嬢が誘惑の剣士だったなんて…

 そう言えば…あのハァハァ妖精さんが言っていた。

誘惑の騎士は恥じらいながらも誘惑する名誉を重んじる者だと。自らさらけ出す行為はしない。勇敢さを出しながらも、場を弁え奉仕する道徳的な者。

 それに対し誘惑の剣士は目先の雄雌の容姿に誘惑的欲求を満たしたがる者。自分から誘惑するが必ず見返りを求めて剣を振るう。

 私は勘違いしていたんだ。お嬢は誘惑的欲求を満たしたがる者なんだ…

 ドドルは空を見た。今日も雲ひとつない綺麗な青空。

 そして目の前にいるBランクの女剣士は夕日より紅い表情をしている。

 「半端ねぇ…」

訓練生の男性陣は、もしかしたら自分が見返りをする者になるかもしれないとレナ・バースの全身をジロジロと見定めている。

 「私だけ…扱いが変だよ!」

 紫電…

 お願いだから私を見るのを、やめてよ!

 レナ・バースはドドルに自身の奥義を放つ。一瞬で、皆の前から消えたレナ・バース…

 彼女は自分を見る視線に耐えられなくなっている…

 ドドルは構えを解いている。スピードはレナ・バースの方が上のようだ。

 稲妻と共に空中から斬りかかるレナ・バース。

 斬撃は身体が反応できた。空中からのレナ・バースの鋭い斬撃をぎりぎりで躱したドドル。しかし、全身に走る稲妻の衝撃は凄まじいものだった。

 いったん、距離をあけ双剣を構えながら肩で息をするレナ・バース。

 そして片膝をつき苦しそうにするドドルは、痛みに耐えながらマナとレナ・バースを見て笑う。

 「儂の負けじゃ…見事だぞ二人とも」



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