お転婆令嬢の執事は天寿を全うする…「何故…儂が、お嬢様の弟なのじゃ?」爺やは転生し姉を教育する!

ke-go

文字の大きさ
21 / 30

21 神の領域の先

しおりを挟む
「お前の相手は私だ!」

森の出入口で短剣を構えるモラフ。ヤマアラシから、自分を守ってくれた姉の真似をしている。本人的には、姉上の姿に感動して真似て要るのだが…姉には、そうは映らない。

「ぐあ!」

僕のお尻が…限界に近づいています。

ヤマアラシの棘を数本抱えて歩いているユッカから、1本拝借し、モラフのお尻に突き刺すドレア。

「何するんですか!」

「次…真似たら、ド真ん中に刺すから!」

それは駄目だ!絶対に駄目だ…

しかし駄目だと言われてしまうと、やりたくなるのが、
5歳児だろう。

「五体満足で居られると…思うなよ!」

「ハイ!貫通確定…」

棘を振り回し追いかける姉と、お尻を常に手で押さえながら逃げ惑う弟。

実に、仲睦まじい光景だ。



「ゴンタ君!!僕の後ろの奴を屋敷に入れるな!!」

屋敷の正門目掛けて勢いよく近づいてくるモラフ。その表情を見たゴンタは、一大事だと判断し、警戒態勢を取る。

門番の出番が来た!!

日頃の特訓の成果を披露する時が、こんなにも早く訪れようとは!

「賊よ!此処は通さん。ベルモンド公爵家の門番にして、夜な夜な娼館団が一番隊隊長ゴンタ!お前が超えられるほど俺は弱い男じゃないぜ!お前は、知らんだろが先の剣術大会にて、華麗な…」

「はい!長い!!」

細脚からは想像出来ぬ程の威力の飛び膝蹴りが、ゴンタの顎を捉えた!!

見えない…。オラの眼では見えない。

見えた!あの宙に舞う小さな白い物は…オラの歯だ…

(ゴンタ…すまぬ!)

道と正門の境目に、綺麗に大の字になるゴンタ。

こんな所で寝るなよ!風邪引くぜ?

そんな言葉を待っているかの様に口から泡を吹く。

(このままだと…何れ捕まるのじゃ!)

何か覚悟を決めたかの様に、庭の中で立ち止まる緑色の珍獣は稽古で使う木剣を握りしめる。

「へー!私とヤル気?」

覚悟を決めた弟の表情を見て、不敵な笑みを浮かべる姉外道のドレアはヤマアラシの棘を持ち、その棘先を弟に向けた。

姉弟対決…いや姉弟喧嘩だろうか?

(今の儂で勝てるか?難しいじゃろうな…。)

本当はオジョウサマに刃など向けたくない。しかし、度重なる外道行為に…モラフのお尻は限界だ。

限界突破!…5歳児のお尻に、そんな言葉はまだ早すぎるだろう。

「あら!帰って来たの?」

クレアだ。異様な雰囲気の中で二人の間に挟まれる形のクレア夫人は二人が無事に帰ってきてくれて笑顔だ。

「お客様が、お見えよ!」

(姉上…気付いているか!今、喧嘩したら僕達は喰われるぞ!)

笑顔よね?ママは今…笑っているよね?

ドレアの持つ棘が細かく震えている。

何故…私は笑顔のママを見て、震えているの?
いつもの優しいママでしょ?
どうして…こんなに苦しいのよ!

あのヤマアラシが霞む程の圧が二人にプレッシャーを与える。

馬鹿な喧嘩は止めなさい!って事なのか?
もしくは別に事件があったのか?

分からない。……でも姉との争いを、今するのは最良ではないのは…分かる。

「駄目…潰れる!」

押し潰される位なら…こっちから仕掛ける!!

正に閃光!地には土埃が舞う。研ぎ澄まされた突きの先に構えるはモラフ。姉が繰り出した突きを受け止めるには幼少過ぎる。躱す!反応出来るか?反応しなきゃ駄目なんだ!

「はい!捕まえた!」

「!!」

僕は何を見ているんだ?

目の前に居るのは駄目な門番ゴンタじゃないんだぞ!
あのヤマアラシに一歩も引かず戦った姉上だぞ!

腰のベルトを背中越しに掴まれ、空中で手脚をバタつかせる姉上。手にしていた棘をクレアが持っている。

ハハハ…喧嘩している場合じゃないなぁ…

「姉上…僕も今参ります。」

ゴンタが憧れる神速の抜刀術ではない。これは僕の全力の抜刀術だ!

神の領域に踏み込むんだ!

神のみが見れた世界…確かに僕は踏み込んだ!

何故、姉上が奪われた棘が壁にめり込んでいるのだ?

何度も見た、深い雪原の谷間がモラフの前に広がる。
姉上…すみません。僕は神にはなれませんでした。

正装の尻尾を掴まれ、宙ぶらりんのモラフ。

「はい!こっちも捕まえた!」

相手が神の上の存在だと知っていたら…

僕は挑まなかったのになぁ…。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【読切短編】転生したら辺境伯家の三男でした ~のんびり暮らしたいのに、なぜか領地が発展していく~

Lihito
ファンタジー
過労死したシステムエンジニアは、異世界の辺境伯家に転生した。 三男。継承権は遠い。期待もされない。 ——最高じゃないか。 「今度こそ、のんびり生きよう」 兄たちの継承争いに巻き込まれないよう、誰も欲しがらない荒れ地を引き受けた。 静かに暮らすつもりだった。 だが、彼には「構造把握」という能力があった。 物事の問題点が、図解のように見える力。 井戸が枯れた。見て見ぬふりができなかった。 作物が育たない。見て見ぬふりができなかった。 気づけば——領地が勝手に発展していた。 「俺ののんびりライフ、どこ行った……」 これは、静かに暮らしたかった男が、なぜか成り上がっていく物語。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

処理中です...