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22 田舎者でも!
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「別の次元…」
クレア夫人の後ろを歩くユッカ。
彼女の前には右手で掴まれたドレアと左手で掴まれたモラフが、仲良く手脚をバタつかせて運ばれる姿が見えている。
そして…以前、侯爵家と濃い食事会を催した広間に入っていくと見慣れた顔の男女が椅子に座っていた。
「お父さん…お母さん!」
広間に居たのはユッカの両親だった。森の前のユッカの家では会えなかったが…どうやら行き違いだった様だ。
「おう!ユッカ。元気か?」
小さく頷くユッカ。突然、目の前に現れた両親に戸惑っている。
「ほら…あれだ!娘が公爵様ん所で働かせてもらっているのに…挨拶もしないってのは失礼だろ?」
ドレアとモラフは椅子に座って居るのだが…静かだ。
ユッカの両親よりも、全力が全く通じなかったクレアの事ばかり考えてしまう。
人類最強なんじゃ…ないかと。
「挨拶って言っても、俺達はハッキリ言って貧乏だ!」
そう言いながら、テーブルに置いていた風呂敷包みを開く。
僕は…そいつのおかげで、お尻に穴を開けたんだ!
テーブルの上には、山盛りのランの実が現れた。
「大体…ランの木、5本分はあります。食べてください公爵家の皆様。」
山の恵…。
ユッカの仕事ぶりを聞いて笑顔になる両親。娘の事を良く言われて嫌になる親などいないものだ。
暗くなる前に帰りますと、両親達は屋敷を後にした。その後ろ姿は、頑張る自慢の娘を誇らしく思っている様に見える。
「流石ね、山を熟知しているだけの事はあるは!」
大量の希少実を見るクレア。モラフ達が命の危険まで晒して採れなかった実が、今は簡単に口に頬張る事が可能になった。
チャポン…
「アタシの家より広いかも…」
公爵家屋敷内の離れにある大浴場で湯船に浸かっているユッカは、その広さに驚いている。
同じ屋敷に住むのよ。遠慮しないの!
クレア夫人の言葉を思い出すユッカは、浴槽で1人笑顔になる。
「へへ…アタシ、頑張るんだから!」
浴槽のお湯を手に集めて、自分の顔に浸けるユッカ…
今日の仕事の疲れを癒やすには最高の環境だ。
「誰か来たらどうするのよ!」
「大丈夫!この時間は何時も誰も…居ないのよ!」
浴槽の中でノビノビと腕を伸ばし寛ぐユッカの後ろから聞こえてくる複数の声…
ユッカは、家族以外の人と一緒にお風呂に入った事が無い。
「ちょっと…緊張するかも…。」
せっかくの大浴場なのに、恥ずかしくなり浴槽の角に移動し、身を潜める様に小さく縮こまりながら周囲の浴槽を伺っている。
「知らなかった!」
アタシは田舎者だ…知らない事が沢山有るのは自覚してるよ。
でも…あれは何なのかな?
湯気と暗めの照明がユッカの視界を少し遮るのだが、それでもユッカが見た靄の中の影は印象深い記憶となり、脳裏に残る事となる。
どうして…二人は重なり合っているのかな?
影が雑木林の様に多種雑多に混じり合っている。
あんなに絡まないといけないのかな?
「ねぇ…あっ…ココ…あそこに誰かいない?」
「居ないわよ…そう言って…我慢出来ないんでしょ!」
二人の影を、いつの間にか凝視していたユッカ。
都会でのお風呂は、少女に妖艶さを見せつけた。
アタシも、あの影みたいにしないと…田舎者って馬鹿にされるのかしら?
頑張らないと!
「ユッカ!!私も誘いなさいよ!」
大浴場の湿気にあてられた扉が勢いよく開く。
ドレアが何も纏わぬ姿で、ユッカに近づいて来る。
あ!影が消えた…
ドレアの登場。それは即ち使用人の二人にとっては、非常事態だ。逃げる様に脱衣所に向かって行く。
(危ない!また弱みにつけこまれちゃう…)
二人が消えた空間で、ユッカはお嬢様と二人きりになってしまう。ユッカの隣りでお湯に浸かるドレア。
今日は内容が濃い一日だったと、水滴が滴る天井を見ている。
「えい!」
アタシは田舎者!……でも都会に馴染んでやるんだ。
先程見た影の様にドレアに身体を重ねて混じり合う様に腕や脚をドレアの身体の隙間に絡めて行く。
アタシの誠意は…お姉ちゃんに伝わっているかな?
幼い少女の何とも言えぬ柔肌が、必死にドレアの身体を刺激する。
「あっ…」
咄嗟に声が出るドレア。でも違うの私は望んでないの!
声が出たのは、お湯が私の疲れを外に出してくれたからなんだ。ユッカの身体のせいじゃないのよ!
でも…どうしてよ!
ユッカのせいじゃない…でも私の腕が彼女を離したがらないの…私って…おかしいの?
お姉ちゃんが、アタシに抱きついてくれた!
田舎者でも出来るんだから!
浴槽の中で二人は肌を寄せ合う。
クレア夫人の後ろを歩くユッカ。
彼女の前には右手で掴まれたドレアと左手で掴まれたモラフが、仲良く手脚をバタつかせて運ばれる姿が見えている。
そして…以前、侯爵家と濃い食事会を催した広間に入っていくと見慣れた顔の男女が椅子に座っていた。
「お父さん…お母さん!」
広間に居たのはユッカの両親だった。森の前のユッカの家では会えなかったが…どうやら行き違いだった様だ。
「おう!ユッカ。元気か?」
小さく頷くユッカ。突然、目の前に現れた両親に戸惑っている。
「ほら…あれだ!娘が公爵様ん所で働かせてもらっているのに…挨拶もしないってのは失礼だろ?」
ドレアとモラフは椅子に座って居るのだが…静かだ。
ユッカの両親よりも、全力が全く通じなかったクレアの事ばかり考えてしまう。
人類最強なんじゃ…ないかと。
「挨拶って言っても、俺達はハッキリ言って貧乏だ!」
そう言いながら、テーブルに置いていた風呂敷包みを開く。
僕は…そいつのおかげで、お尻に穴を開けたんだ!
テーブルの上には、山盛りのランの実が現れた。
「大体…ランの木、5本分はあります。食べてください公爵家の皆様。」
山の恵…。
ユッカの仕事ぶりを聞いて笑顔になる両親。娘の事を良く言われて嫌になる親などいないものだ。
暗くなる前に帰りますと、両親達は屋敷を後にした。その後ろ姿は、頑張る自慢の娘を誇らしく思っている様に見える。
「流石ね、山を熟知しているだけの事はあるは!」
大量の希少実を見るクレア。モラフ達が命の危険まで晒して採れなかった実が、今は簡単に口に頬張る事が可能になった。
チャポン…
「アタシの家より広いかも…」
公爵家屋敷内の離れにある大浴場で湯船に浸かっているユッカは、その広さに驚いている。
同じ屋敷に住むのよ。遠慮しないの!
クレア夫人の言葉を思い出すユッカは、浴槽で1人笑顔になる。
「へへ…アタシ、頑張るんだから!」
浴槽のお湯を手に集めて、自分の顔に浸けるユッカ…
今日の仕事の疲れを癒やすには最高の環境だ。
「誰か来たらどうするのよ!」
「大丈夫!この時間は何時も誰も…居ないのよ!」
浴槽の中でノビノビと腕を伸ばし寛ぐユッカの後ろから聞こえてくる複数の声…
ユッカは、家族以外の人と一緒にお風呂に入った事が無い。
「ちょっと…緊張するかも…。」
せっかくの大浴場なのに、恥ずかしくなり浴槽の角に移動し、身を潜める様に小さく縮こまりながら周囲の浴槽を伺っている。
「知らなかった!」
アタシは田舎者だ…知らない事が沢山有るのは自覚してるよ。
でも…あれは何なのかな?
湯気と暗めの照明がユッカの視界を少し遮るのだが、それでもユッカが見た靄の中の影は印象深い記憶となり、脳裏に残る事となる。
どうして…二人は重なり合っているのかな?
影が雑木林の様に多種雑多に混じり合っている。
あんなに絡まないといけないのかな?
「ねぇ…あっ…ココ…あそこに誰かいない?」
「居ないわよ…そう言って…我慢出来ないんでしょ!」
二人の影を、いつの間にか凝視していたユッカ。
都会でのお風呂は、少女に妖艶さを見せつけた。
アタシも、あの影みたいにしないと…田舎者って馬鹿にされるのかしら?
頑張らないと!
「ユッカ!!私も誘いなさいよ!」
大浴場の湿気にあてられた扉が勢いよく開く。
ドレアが何も纏わぬ姿で、ユッカに近づいて来る。
あ!影が消えた…
ドレアの登場。それは即ち使用人の二人にとっては、非常事態だ。逃げる様に脱衣所に向かって行く。
(危ない!また弱みにつけこまれちゃう…)
二人が消えた空間で、ユッカはお嬢様と二人きりになってしまう。ユッカの隣りでお湯に浸かるドレア。
今日は内容が濃い一日だったと、水滴が滴る天井を見ている。
「えい!」
アタシは田舎者!……でも都会に馴染んでやるんだ。
先程見た影の様にドレアに身体を重ねて混じり合う様に腕や脚をドレアの身体の隙間に絡めて行く。
アタシの誠意は…お姉ちゃんに伝わっているかな?
幼い少女の何とも言えぬ柔肌が、必死にドレアの身体を刺激する。
「あっ…」
咄嗟に声が出るドレア。でも違うの私は望んでないの!
声が出たのは、お湯が私の疲れを外に出してくれたからなんだ。ユッカの身体のせいじゃないのよ!
でも…どうしてよ!
ユッカのせいじゃない…でも私の腕が彼女を離したがらないの…私って…おかしいの?
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