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24 いっけね〜・不正には不正を
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「良くやるわね…」
広場に招待された公爵一家。街は夏とは違い一面雪に支配されている。その広場に無数に有る焚き火達が、辛うじて柔らかい温もりを周囲に届けている。
(皆にはすまんが…儂には加護があるのじゃ!)
一人、雪の中で快適に過ごすモラフ。
「よっしゃ~!」
広場の中心で旗を掲げて喜んでいる子供達。何かの勝負に勝った様だ。
「さあ、続きまして混合の部が開催されます!今年の、雪ングは、どのチームに微笑むのでしょうか?」
どうやら、今年で20回目を迎える。ベルモンド公爵領内の冬の風物詩。「雪に負けるな雪合戦大会」が行われている様だ。
ルールは3対3で互いの陣地に赤と青の旗を差し、時間内に先に相手の旗を奪った方が勝ち。武器は雪球と己の肉体のみ。
実にシンプルなゲームだ。
朝方に降っていた雪も止み。新雪も広場一帯は踏み潰されている。寒い時期なのに本当に娯楽が好きな領民達は
屋台でお酒や食べ物を買い歓声を上げて楽しんでいる。
「お師匠様!」
快適珍獣モラフに近づいてくる。前歯が一本無い男と、
二人の少年。
ゴンタと魚屋のマグカツ兄弟だ。
「ゴンタ君!しっかり戦うんだよ。あと…暴走禁止!」
雪に片膝を付くゴンタ達。どうやら混合の部にエントリーした様だ。
「必ず!お師匠様に相手の首を持ってきますぜ!行くぞおまえ達。我らの初陣ぞ!」
「はっ!御身のままに。」
3人は、モラフや公爵家の面々に深々と御辞儀をし、激戦が繰り広げられる死地へ向かって行った。
「あの人…ルール解ってるのかしら?」
クレア夫人の心配は1時間後に的中する形となってしまった。
広場の片隅の焚き火に身を寄せて、僅かな温もりを分け合う三人。その顔には、悔しさが滲み出ていた。
「ゴンタ君!途中までは良かったのに!」
暖を取り意気消沈中の三人の背後から、聞き覚えのある声がする。
「お師匠…止めてくれ。結果が全てなんです。」
ゴンタ達は、自身の試合を振り返る……
「前回の優勝チームとか関係ねぇ!!お前ら!奴らに敗北の文字を身体の心に植え付けてやろうぜ!」
ゴンタ達、夜な夜な組は1回戦で前回大会覇者のチーム
「暖炉に愛を!」と対戦する事になった。二人のデカい男達と、それに負けず劣らずな筋肉質な女性の混合チーム。
「それでは開始します!」
序盤は作成通りだったんだ!
カツオンが左翼へ展開し、マグロンが右翼へ向かった。
そしてオラは、正面に構えたんだ!
後ろに控える赤旗は絶対に渡さん!
「うん。見事な采配だったよゴンタ君!!」
あの二人は良くやってくれた!左右からの雪球投げは、
縦一例に隊列を組んだ奴らを分断するには実に効果的だったんだ。
兄弟ならではの連携…まるで魚を捕まえるかのような、
網目に交差する連続雪球投げは…今大会1番の球筋だったんだ!!
「良くやった…お前ら!」
焚き火の前で二人の肩に手を当て抱き寄せるゴンタ。
二人の頬に雪の結晶より美しい何かが流れていた。
「そうだね!間違いなく今大会1番の球筋だね!」
モラフも二人の連携には、感心している。それ程完成された網目投法だったのだ。
奴らの隊列は完全に分断された。先頭の男が孤立したんだ。先頭の奴も其れを理解した上でオラに一騎討ちを挑んで来やがった!
流石…前回覇者!!
巧みな腰さばきでオラの攻撃を躱しやがる。しかしオラにも一番隊隊長の意地があるんだ!
デカい男を投げ飛ばし、新雪で衣を纏わせる程の転がりをさせたゴンタ。村一番と言われた力が炸裂した。
「ゴンタ君の長所が随所に見えた投げだったね!」
奴らは自陣近くまで後退した。間違い無く俺達が押したんだ!
しかし、恐らく奴らは作戦を変えたんだ。体格の良い三人組の雪球での遠距離攻撃に!
正に砲弾の雨霰!!
オラ達も対抗するに陣形を変えた。中央に集まり雪球で応戦した。
おかしい?…あれは不正行為だ!
相打ちになった雪球がオラ達のだけ砕けるんだ。
同じ雪…しかも力勝ちしたオラの雪球だ!
負けるはずが無いんだ…
「痛い!」
ゴンタの鼻から血が流れる。
あいつら…雪球の中に氷入れてやがる!
審判に不正行為だと訴えたんだが…認められなかった。
雪の中に消えて行く氷…手に持って見せたが身体から放たれる熱で直ぐに溶け出した。
卑怯だ!何が…前回覇者だ!
こんな汚ねぇ大人の姿なんぞ、コイツらには見せたくねってオラは思った。
オラ…一人で殺る!
不正雪球を全身で浴びながら中央で一人立ち尽くすゴンタ。顔中が赤く腫れ上がる。
ゴンタの仁王立ち…。
勝ち負け以上の感動を群衆に見せつけたのに…
「やっぱり出てしまったね!」
全身に痛みが走る中で、ゴンタの中のゴンタが囁いた。
(壊せよ!壊しちまえ!こんな試合なんか。)
敵陣に異様な形相で突撃したゴンタ。その禍々しい気に触れた三人組は散り散りに逃げ出した。
「遅ぇ~!!」
一人を捕まえて、振り回すだけ振り回し地面に叩き付けて服を破こうとするゴンタの耳に聞き覚えがある声が入ってきたんだ。
「ゴンタ!!その人は女性だ!」
女性?…服に触れた手が止まる。荒々しい筋肉を纏う女が瞳から涙を流しオラを見ながら震えていたんだ。
「いっけね~!まただ!」
女性暴行疑惑での…反則負け。
途中までは、前回覇者を押していた夜な夜な組。
しかし、どんな世界でも女性に暴行するのは許されない事なんだ。
もし全員男だったら…ゴンタ達は勝ったのだろうか?
どうだろ…ルールを守らない者に、勝利の女神は微笑まないのではないだろうか?
広場に招待された公爵一家。街は夏とは違い一面雪に支配されている。その広場に無数に有る焚き火達が、辛うじて柔らかい温もりを周囲に届けている。
(皆にはすまんが…儂には加護があるのじゃ!)
一人、雪の中で快適に過ごすモラフ。
「よっしゃ~!」
広場の中心で旗を掲げて喜んでいる子供達。何かの勝負に勝った様だ。
「さあ、続きまして混合の部が開催されます!今年の、雪ングは、どのチームに微笑むのでしょうか?」
どうやら、今年で20回目を迎える。ベルモンド公爵領内の冬の風物詩。「雪に負けるな雪合戦大会」が行われている様だ。
ルールは3対3で互いの陣地に赤と青の旗を差し、時間内に先に相手の旗を奪った方が勝ち。武器は雪球と己の肉体のみ。
実にシンプルなゲームだ。
朝方に降っていた雪も止み。新雪も広場一帯は踏み潰されている。寒い時期なのに本当に娯楽が好きな領民達は
屋台でお酒や食べ物を買い歓声を上げて楽しんでいる。
「お師匠様!」
快適珍獣モラフに近づいてくる。前歯が一本無い男と、
二人の少年。
ゴンタと魚屋のマグカツ兄弟だ。
「ゴンタ君!しっかり戦うんだよ。あと…暴走禁止!」
雪に片膝を付くゴンタ達。どうやら混合の部にエントリーした様だ。
「必ず!お師匠様に相手の首を持ってきますぜ!行くぞおまえ達。我らの初陣ぞ!」
「はっ!御身のままに。」
3人は、モラフや公爵家の面々に深々と御辞儀をし、激戦が繰り広げられる死地へ向かって行った。
「あの人…ルール解ってるのかしら?」
クレア夫人の心配は1時間後に的中する形となってしまった。
広場の片隅の焚き火に身を寄せて、僅かな温もりを分け合う三人。その顔には、悔しさが滲み出ていた。
「ゴンタ君!途中までは良かったのに!」
暖を取り意気消沈中の三人の背後から、聞き覚えのある声がする。
「お師匠…止めてくれ。結果が全てなんです。」
ゴンタ達は、自身の試合を振り返る……
「前回の優勝チームとか関係ねぇ!!お前ら!奴らに敗北の文字を身体の心に植え付けてやろうぜ!」
ゴンタ達、夜な夜な組は1回戦で前回大会覇者のチーム
「暖炉に愛を!」と対戦する事になった。二人のデカい男達と、それに負けず劣らずな筋肉質な女性の混合チーム。
「それでは開始します!」
序盤は作成通りだったんだ!
カツオンが左翼へ展開し、マグロンが右翼へ向かった。
そしてオラは、正面に構えたんだ!
後ろに控える赤旗は絶対に渡さん!
「うん。見事な采配だったよゴンタ君!!」
あの二人は良くやってくれた!左右からの雪球投げは、
縦一例に隊列を組んだ奴らを分断するには実に効果的だったんだ。
兄弟ならではの連携…まるで魚を捕まえるかのような、
網目に交差する連続雪球投げは…今大会1番の球筋だったんだ!!
「良くやった…お前ら!」
焚き火の前で二人の肩に手を当て抱き寄せるゴンタ。
二人の頬に雪の結晶より美しい何かが流れていた。
「そうだね!間違いなく今大会1番の球筋だね!」
モラフも二人の連携には、感心している。それ程完成された網目投法だったのだ。
奴らの隊列は完全に分断された。先頭の男が孤立したんだ。先頭の奴も其れを理解した上でオラに一騎討ちを挑んで来やがった!
流石…前回覇者!!
巧みな腰さばきでオラの攻撃を躱しやがる。しかしオラにも一番隊隊長の意地があるんだ!
デカい男を投げ飛ばし、新雪で衣を纏わせる程の転がりをさせたゴンタ。村一番と言われた力が炸裂した。
「ゴンタ君の長所が随所に見えた投げだったね!」
奴らは自陣近くまで後退した。間違い無く俺達が押したんだ!
しかし、恐らく奴らは作戦を変えたんだ。体格の良い三人組の雪球での遠距離攻撃に!
正に砲弾の雨霰!!
オラ達も対抗するに陣形を変えた。中央に集まり雪球で応戦した。
おかしい?…あれは不正行為だ!
相打ちになった雪球がオラ達のだけ砕けるんだ。
同じ雪…しかも力勝ちしたオラの雪球だ!
負けるはずが無いんだ…
「痛い!」
ゴンタの鼻から血が流れる。
あいつら…雪球の中に氷入れてやがる!
審判に不正行為だと訴えたんだが…認められなかった。
雪の中に消えて行く氷…手に持って見せたが身体から放たれる熱で直ぐに溶け出した。
卑怯だ!何が…前回覇者だ!
こんな汚ねぇ大人の姿なんぞ、コイツらには見せたくねってオラは思った。
オラ…一人で殺る!
不正雪球を全身で浴びながら中央で一人立ち尽くすゴンタ。顔中が赤く腫れ上がる。
ゴンタの仁王立ち…。
勝ち負け以上の感動を群衆に見せつけたのに…
「やっぱり出てしまったね!」
全身に痛みが走る中で、ゴンタの中のゴンタが囁いた。
(壊せよ!壊しちまえ!こんな試合なんか。)
敵陣に異様な形相で突撃したゴンタ。その禍々しい気に触れた三人組は散り散りに逃げ出した。
「遅ぇ~!!」
一人を捕まえて、振り回すだけ振り回し地面に叩き付けて服を破こうとするゴンタの耳に聞き覚えがある声が入ってきたんだ。
「ゴンタ!!その人は女性だ!」
女性?…服に触れた手が止まる。荒々しい筋肉を纏う女が瞳から涙を流しオラを見ながら震えていたんだ。
「いっけね~!まただ!」
女性暴行疑惑での…反則負け。
途中までは、前回覇者を押していた夜な夜な組。
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