お転婆令嬢の執事は天寿を全うする…「何故…儂が、お嬢様の弟なのじゃ?」爺やは転生し姉を教育する!

ke-go

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25 春に春

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 チュン…

モラフの部屋の窓枠に小鳥が姿を表した。

春だ!

雪解けが進み久しぶりに見た土から新しい芽が見え隠れしている。屋敷前の通りも通行人が増えた様に見える。

春だな!

窓から見える遠くの山はまだ白いけど…街には間違いなく春が訪れたんだ。

おや?

屋敷の正門から、声が聴こえてくる。正門と言えば…

やはり駄目門番のゴンタだ!

またトラブルか?…モラフは正門に急ぎ向かう。

「オラに女性は不要なんでい!」

ゴンタに抱き着く大きな影…あれは……あの人だ!

冬に行われた雪合戦でゴンタ達と対戦した相手の女性の人だ。名前は…覚えていないが覚醒ゴンタの餌食になったのは覚えている。

「お師匠!助けてくだせぇ~!」

あのゴンタが、しどろもどろしているぞ!何があったんだ?

「ゴンタ様…ワタスを…ワタスを手篭めにしてけろ!」

ゴンタの胸に顔を擦り付け涙を流す。体格の良い女性。

春だな!

正門の門柱の台座付近から芽を出す春草達。彼等は寒い冬を地中で我慢し春を待ちわびた。陽の光を浴びた彼等は今、どんな気持ちなのだろうか?

「ワタスはアンタ無しじゃ…いぎでいげね!」

鼻水をたらし、涙を流す体格の良い女性はゴンタの木製の胸当てを肩口から圧し折り、黄ばんた肌着の胸部当たりを強く握りしめている。

まるで引退直前の力士が、若手力士に土俵際まで一気に押し込まれ耐えながらも、自分の限界は今なのでは?と葛藤している様だ。………この世界に相撲が存在するかは不明だが。間違いなくゴンタは門番として屋敷内への侵入を防ごうと中年の身体に鞭打ち必死に耐え忍ぶ!

あ!

ゴンタの抵抗虚しく、体格の良い女性に力負けしたゴンタは正門を越えて屋敷内への侵入を許してしまった。背中から地面に倒れ込むゴンタ。雪解けまもない地面は、
ゴンタに泥水の飛沫をサプライズ演出してくれた。黄ばんだ肌着はブラウンカモフラージュした迷彩柄へと、様変わりしてしまう。

ゴンタが屋敷内へ通した…彼女は客人だな!

「マサエモン!後は頼むよ。」

正門にマサエモンを残して体格の良い女性と迷彩ゴンタを屋敷に案内する嫡子。

体格の良い女性へ簡単に庭などの造りを説明しながら屋敷までエスコートする姿は……気品に溢れ、微妙に濡れた地面に着かない尻尾は公爵家の威厳を醸し出していたのだった。

「さあ此方へ!」

部屋の扉を開けて二人を中に案内させる嫡子。体格の良い女性は見たことも無い芸術品が置かれている部屋を見て僧帽筋上部が膨らんでしまう。門番のゴンタでさえ、
早々屋敷に入れる事は無い。ましてや客間など初めての事だ。

バロック様式の椅子へ座らされる二人。背もたれや肘掛けに施された模様が驚く程、似合わない二人だが…ゴンタの肌着の迷彩柄だけは家具類の模様に微妙に合っている様にも見えなくはないが…どうだろ?他貴族達からは
非常識と、嘲笑われてしまうのがオチだろうか。

「初めまして、ダンドール公爵家のモラフです!」

使用人のレミアが入れたお茶がテーブルに置かれた。
二人は見るからに高価そうなカップを掴み、口を口縁につけるのだが味よりも、高価そうなカップを落とすまいと逆に小刻みに震えてしまった。

「貴女の、お名前をお聞きしたいのですが?」

カップを落とすまいと、小刻みに震えている体格の良い女性は、嫡子に話し掛けられて慌てて立ち上がる。見事にバンプアップした上腕二頭筋が緊張感を周囲に伝えている。

「ワ、ワタスは…ハナコ!今年で38になります!」

ハナコさん…。うん!春らしい名前だね。

母上より年上の女性は5歳児に名を褒められて自身の顔が赤面してしまったハナコ氏。

「ゴンタ君に用事があったのかな?」

この質問がハナコを熱くさせた。

この方は、こんな容姿のワタスを雪の中で…それも大勢の人達が見守る中で…無理矢理…だごうどすた!ワタスの純白を染めようど…すたんだ!ワタスは恐怖した。必死に抵抗したんだけども…あんなに無力だとは思わねがった!身体の中が…あっつくなったんだ。

あぁ~ワタスを…奪ってけろって。

冬の間はあんまり外さは出ねんだけども…会いたぐなった。ワタスはどうしてもゴンタ様さ…会いたくなったんだ!

雪っこ…早ぐ…とけれ!ワタスをゴンタ様さ合わせたぐねんだが!ワタスは…負けねど。

ちょっと…訛りが酷い気がするのだが、モラフはハナコの熱意に感銘を受けた。

「ゴンタ君!僕は君が責任を取るべきだと思うのだが?君はどうなんだ?」

ゴンタは下を向いたままだ。ハナコが慌てて投げてしまった高価なカップが、見事にゴンタの頭頂部に鎮座している。残念ながら中身はゴンタの顔へ流れてしまい。顔を迷彩柄へ変えてしまったのだが…。

「オラは女性と…付き合った事がねぇ…だから…嬉しいけど…」

なるほど、気はあるが態度で示せないんだな?

「二人に提案!友達からはどうだい?」

友達?それは…その先に期待しても良いのでは?

ビチャビチャのゴンタは立ち上がり、ハナコ氏のゴツい手を握る。

「オラたちは今日から友達だ!宜しくなハナコさん!」

十分だろう。今の二人には十分な結果だろう。

春に春が来たんだ!

師匠として…いや一人の友として、モラフは見つめ合う二人を見て喜んだのだった。

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