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視線は南へ
PHASE-1799【直進行軍】
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――錐形陣形で無機質な進撃という異様さを見せつけるこっちサイド。
ただでさえ混乱が収拾していないのに、自分たちに恐怖を植え付けた者達が要塞から本格的に攻めに転じてきたとなれば、騎兵の恐ろしさだけでなく、何かしらの強力な力もあると思い込み更に恐怖することだろう。
実際ストライカーやJLTVとのエンカウントなんてこの世界だと稀も稀。
ビジョンで相対する方を見れば、顔をガードしていない兜を被るオークの表情は引きつったものだった。
忙しく首を左右に何度も振りながら仲間たちとどう対応するべきかを相談しているようだったが、周囲の連中も仲良く強張った表情で言葉を返すことは出来ないでいる。
恐れに支配されているから構えも全くなっていない。
槍衾による隊列もなければ、ただ手にした槍の柄を抱きしめて佇むだけ。
「これは容易いな」
高順氏がそう言えば、
「然り!」
ロンゲルさんが覇気で続く。
――更に接近。
ここで、
「弓騎兵」
指揮棒を持つ先生の声。
馬の群れが生み出す勇壮な蹄の音にも負けない声は大きいと例えるよりは、ベルのように静かでありながら良く届くというもの。
この先生の指示に対して高順氏は絶妙な時宜と称賛。
指揮棒を天へと向け、ここぞというタイミングを見計らうかのようにクルクルと円を描きつつ――、
「見事な騎射を披露して頂きたい」
と、下からな言い方。
でも振り下ろす指揮棒は力強く、近くでそれを目にする者達はその動きだけでも鼓舞されたようで、
「射かけるぞ!」
言いつつ角笛を短く一回吹くロンゲルさん。
全体への号令はロンゲルさんが担当。
角笛に合わせて一糸乱れることなく矢が放たれる。
弦の音が一つに聞こえるほどに整った騎射。
空へと向かって放たれた矢は放物線を描いて――、
「お見事」
弓矢に精通するジージーが騎射を阻害しないように俺の横へと移動してから褒め称える。
放たれた矢により、槍を大事そうに抱きかかえていた敵兵がバタバタと倒れていく。
鎧兜から矢が生える。
見事な貫通力。流石はアラムロス窟のドワーフ達が作った矢である。
「なんと脆い陣形か」
呆れるロンゲルさんの横で先生による第二射の指示から――一斉射。
二射目で倒れる者達は背から矢を生やす。
確かに脆い。
脆すぎて逆に怪しくなるくらいだよ。
「誘い込まれているというのは?」
「あり得ませんのでこのまま直進です」
即否定から進撃を維持するように指示する先生。
即答されるとなんかくるね……。
まあ、潜入しているハリエットからの報告が逐次ゲッコーさんへと届き、その報告が先生を護衛しているS級さんにも届いているんだろう。
「知者の発言どおりに進もう」
淡々と語りながらもワーグの脚の回転が増していく。
これに合わせて兵達を乗せる馬も速度を上げる。
「すげえな」
湿地の多い要塞周囲での騎兵による戦いは俺も経験している。
だが今回は速度が違う。
起伏は激しいが草原となれば湿地とは別次元の速さ。
速さから生まれる馬の勢いも凄い。
加速からの加速。
相手側は接近速度の速さに右往左往といったところ。ずっと右往左往はしているけど。
「喊声を上げろ」
これまで蹄の音だけが響いていたところに、高順氏の号令を受けて大気を震わせる叫び声が上がる。
大地と大気を震わせる七千からなる集団。
敵の兵力からしたら寡兵なんだろうが――、
「こちらの勢いに気圧されている相手には七千以上に見えてんでしょうね」
「主の考えは正しいですね」
ただでさえ自分たちに要塞で恐怖を叩き付けてきた騎兵たち。
そんな騎兵たちが及び腰になっている自分や周囲の仲間に向かって雄叫びを上げて真っ直ぐに突っ込んでくるんだからたまったもんじゃない。
後は背中を見せてる連中がそのまま後ろへと走り出してくれればここでも逃散って流れになるんだけども、
「怯む必要なし」
「おう」
こちらの喊声を打ち消すような声が向こうから上がる。
「出てきやがった」
混乱する連中の直上に現れる白銀の鱗の持ち主。
最前線へと現れれば、及び腰だった連中の姿勢はソイツの登場で落ち着きを取り戻し始める。
「メッサーラ」
「あれが四天王のメッサーラなる御仁」
先生は興味津々。
「聞いていた情報とは違い黒い鎧。特注が許されるのかな?」
と、考察している。
言われりゃ確かにそうだな。
デイライトってのは白と金の鎧に黒いマントって情報だった。
でもメッサーラは黒い鎧。
「と、そんな事は後でいいや! 先生。強烈な攻撃が来ます!」
俺達を迎え撃つように空中で腕組みするメッサーラ。
腕組みから大の字になるのと同時に、面長な口を大きく開く。
「カロリックレイって光線みたいな魔法がきます」
「なるほど。薙ぎ払われるように放たれれば甚大な被害が出ますね」
騎兵には防御魔法を展開できる存在はいないとのこと。
「鋒矢」
「畏まりました」
高順氏の短い言葉にロンゲルさんが手にした角笛をプゥ! っと、短く三回吹く。
角笛に従って騎兵が動く。
俯瞰で見れば高順氏が言ったように一本の矢のような形になっていることだろう。
「その陣形だと確実に一点で狙われるんだけど! 私の魔法でも防ぎきれるか自信ないよ」
直上で慌てるシャルナの言は正しい。
「問題ありませんよ。こちらには対応できる御方がいらっしゃいます。なので速度は落とさないように」
余裕ある先生が目を向ける先は――黒馬に乗ったベル。
ただでさえ混乱が収拾していないのに、自分たちに恐怖を植え付けた者達が要塞から本格的に攻めに転じてきたとなれば、騎兵の恐ろしさだけでなく、何かしらの強力な力もあると思い込み更に恐怖することだろう。
実際ストライカーやJLTVとのエンカウントなんてこの世界だと稀も稀。
ビジョンで相対する方を見れば、顔をガードしていない兜を被るオークの表情は引きつったものだった。
忙しく首を左右に何度も振りながら仲間たちとどう対応するべきかを相談しているようだったが、周囲の連中も仲良く強張った表情で言葉を返すことは出来ないでいる。
恐れに支配されているから構えも全くなっていない。
槍衾による隊列もなければ、ただ手にした槍の柄を抱きしめて佇むだけ。
「これは容易いな」
高順氏がそう言えば、
「然り!」
ロンゲルさんが覇気で続く。
――更に接近。
ここで、
「弓騎兵」
指揮棒を持つ先生の声。
馬の群れが生み出す勇壮な蹄の音にも負けない声は大きいと例えるよりは、ベルのように静かでありながら良く届くというもの。
この先生の指示に対して高順氏は絶妙な時宜と称賛。
指揮棒を天へと向け、ここぞというタイミングを見計らうかのようにクルクルと円を描きつつ――、
「見事な騎射を披露して頂きたい」
と、下からな言い方。
でも振り下ろす指揮棒は力強く、近くでそれを目にする者達はその動きだけでも鼓舞されたようで、
「射かけるぞ!」
言いつつ角笛を短く一回吹くロンゲルさん。
全体への号令はロンゲルさんが担当。
角笛に合わせて一糸乱れることなく矢が放たれる。
弦の音が一つに聞こえるほどに整った騎射。
空へと向かって放たれた矢は放物線を描いて――、
「お見事」
弓矢に精通するジージーが騎射を阻害しないように俺の横へと移動してから褒め称える。
放たれた矢により、槍を大事そうに抱きかかえていた敵兵がバタバタと倒れていく。
鎧兜から矢が生える。
見事な貫通力。流石はアラムロス窟のドワーフ達が作った矢である。
「なんと脆い陣形か」
呆れるロンゲルさんの横で先生による第二射の指示から――一斉射。
二射目で倒れる者達は背から矢を生やす。
確かに脆い。
脆すぎて逆に怪しくなるくらいだよ。
「誘い込まれているというのは?」
「あり得ませんのでこのまま直進です」
即否定から進撃を維持するように指示する先生。
即答されるとなんかくるね……。
まあ、潜入しているハリエットからの報告が逐次ゲッコーさんへと届き、その報告が先生を護衛しているS級さんにも届いているんだろう。
「知者の発言どおりに進もう」
淡々と語りながらもワーグの脚の回転が増していく。
これに合わせて兵達を乗せる馬も速度を上げる。
「すげえな」
湿地の多い要塞周囲での騎兵による戦いは俺も経験している。
だが今回は速度が違う。
起伏は激しいが草原となれば湿地とは別次元の速さ。
速さから生まれる馬の勢いも凄い。
加速からの加速。
相手側は接近速度の速さに右往左往といったところ。ずっと右往左往はしているけど。
「喊声を上げろ」
これまで蹄の音だけが響いていたところに、高順氏の号令を受けて大気を震わせる叫び声が上がる。
大地と大気を震わせる七千からなる集団。
敵の兵力からしたら寡兵なんだろうが――、
「こちらの勢いに気圧されている相手には七千以上に見えてんでしょうね」
「主の考えは正しいですね」
ただでさえ自分たちに要塞で恐怖を叩き付けてきた騎兵たち。
そんな騎兵たちが及び腰になっている自分や周囲の仲間に向かって雄叫びを上げて真っ直ぐに突っ込んでくるんだからたまったもんじゃない。
後は背中を見せてる連中がそのまま後ろへと走り出してくれればここでも逃散って流れになるんだけども、
「怯む必要なし」
「おう」
こちらの喊声を打ち消すような声が向こうから上がる。
「出てきやがった」
混乱する連中の直上に現れる白銀の鱗の持ち主。
最前線へと現れれば、及び腰だった連中の姿勢はソイツの登場で落ち着きを取り戻し始める。
「メッサーラ」
「あれが四天王のメッサーラなる御仁」
先生は興味津々。
「聞いていた情報とは違い黒い鎧。特注が許されるのかな?」
と、考察している。
言われりゃ確かにそうだな。
デイライトってのは白と金の鎧に黒いマントって情報だった。
でもメッサーラは黒い鎧。
「と、そんな事は後でいいや! 先生。強烈な攻撃が来ます!」
俺達を迎え撃つように空中で腕組みするメッサーラ。
腕組みから大の字になるのと同時に、面長な口を大きく開く。
「カロリックレイって光線みたいな魔法がきます」
「なるほど。薙ぎ払われるように放たれれば甚大な被害が出ますね」
騎兵には防御魔法を展開できる存在はいないとのこと。
「鋒矢」
「畏まりました」
高順氏の短い言葉にロンゲルさんが手にした角笛をプゥ! っと、短く三回吹く。
角笛に従って騎兵が動く。
俯瞰で見れば高順氏が言ったように一本の矢のような形になっていることだろう。
「その陣形だと確実に一点で狙われるんだけど! 私の魔法でも防ぎきれるか自信ないよ」
直上で慌てるシャルナの言は正しい。
「問題ありませんよ。こちらには対応できる御方がいらっしゃいます。なので速度は落とさないように」
余裕ある先生が目を向ける先は――黒馬に乗ったベル。
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