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PHASE-1806【撤収】
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「怒りのままに追いかけてきますけど迎撃とかするんですか? 釣り野伏せとか?」
「主、異な事をおっしゃいます。それを実行したくてもあの者達を打ち倒す伏兵などこちらにはおりませんよ。悲鳴を上げて全力で逃げているのが全員なのですから」
「ですよね」
それじゃあこのまま逃げ切るって事か。
騎乗レベルならこちらが上だけども逃げるとなればここから相手を撤退させるってのは――、
「頃合いですね」
心底で考えていたことを口に出して質問しようとしたところで
先生が一言。
言葉を発しながら角笛を持つロンゲルさんへと指揮棒を向ければ直ぐさま角笛を吹く。
と、同時に――ドゴォォォォォォォォォオン!!
巨大な爆発音。
背後を見れば、炎が混ざった煙が空へと向かって勢いよく伸びていく。
「これは――」
間違いなく潜入しているハリエットの仕事だな。
角笛での合図はゲッコーさんへと伝えるものだったようだ。
で、ゲッコーさんを経由してハリエットへと指示。
角笛から爆発までが速かった。
角笛と無線が見事にかみ合っている。
でもなんで一々と経由したんだ? 先生の周囲を護衛するS級さんから直接でも良かっただろうに。
思案する中、指示を出したであろうゲッコーさん達が初手で抑え込んでいた方角からこちらへと向かってくる。
爆発を合図に自分たちも下がってきた。
ゲッコーさん達の車両を追っているのは俺たちを追ってくる連中と一緒。
目にしたことのない鋼鉄の乗り物だからか、こっちと比べると警戒から距離を空けての追撃。
徐々にこちら側へと寄ってきて、ゲッコーさん達が最後尾についてくれたとシャルナからの報告。
ここぞとばかりにまたも先生がロンゲルさんへと指揮棒を向けると、小気味よく角笛を吹く。
「煙が鼻の長い乗り物から出てきた」
と、シャルナ。
見れば爆煙とは違った煙。
空へと伸びるのではなく、濃霧を思わせる白い煙が一帯に広がっていく。
ソレが俺たちと追っ手側を遮る。
「白煙殿と呼ばせてもらっているが、今回の白煙は普段とは比べられないほどの量だな」
「あれが受動喫煙に含まれるなら、ショゴスの瘴気の方がまだ可愛げがありそうですけどね」
「確かにな」
カラカラと笑ってくれる高順氏。
意外と受けたようだ。
俺たちと追撃部隊を遮ってくれたのはスモークディスチャージャーってやつかな?
鼻が長いって言っていたからストライカー・ドラグーンが使用したようだな。
派手にぶちまければ相手側は迂回を選択。
毒と判断したのかもしれない。
迂回を選択した時点でこちらの馬には追いつけないけどね。
程なくして追跡は中断されたようで、爆発した箇所へと急ぎ反転したとのこと。
「あの爆発は?」
「段取り通りです」
「狙った場所は?」
「兵糧を保管していた天幕の悉くですね」
「てことは、あの十二万は?」
「後方から物資が届かない限り、拠点に留まることは出来ないでしょうね」
とのこと。
十二万を食わせるってなると後方からの兵糧輸送はかなりの量になりそうだな。
ただでさえ混乱の中で部隊編制をしていたところに強襲を受けて精神はもうボロボロ。
ここに生きる糧である食糧もなくなったとなれば――、
「今の拠点を捨てて下がるしかないだろうな。今回の主目標は達成したと言っていい」
「お疲れ様」
ベルの帰還。
一人でメッサーラの足止めをしてくれた事に感謝。
「必要ないと思うけど、怪我は?」
「ない」
「どうだった。メッサーラの強さは」
「素晴らしい強者だった。我々の動きに不振さを抱いてからは背後の主殿が心配だったのか動きに繊細さを欠いたが、それでも前に残らなければならないという使命感から私と戦ってくれた」
武人として見事な御仁だった。と、ベルが褒めるほどに優秀な存在。
俺たちもそこは理解している。
「手傷を負わせましたか?」
「直ぐに回復できる程度です」
先生の質問に軽く返すベル。
あのメッサーラに手心を加えて軽くあしらうってのはベルにしか出来ない芸当。
ベルが手心を加えた相手に、俺とコクリコは手心を加えられてたんだよな……。
ベルとの差がまったく縮まらねえや……。
そんなベルの活躍を耳にして先生はお見事と満足していた。
手心を加えて強者を残す意味か。
戦力として大きな存在を倒さないってのは、今後の布石として利用するってところかな?
――ベルも見事だけども、何よりもお見事なのは、
「誰一人として死者が出てないってことか」
信じられないんですけど。
七千で十二万の中に飛び込む。
これで死者なしとか。
「十二万を相手にすれば死傷者は多く出ただろう。だが我々が相手にしたのは混乱の中、拙速で展開された前衛とその後の騎獣隊のみだったからな」
実際のところ相手にしたのは自分たちとさほど変わらない数だったと高順氏。
混乱し及び腰の連中を相手にしていれば死者は出ないと言いきって見せた。
王都と要塞の職人、アラムロス窟のドワーフ達が作った武具と馬甲。
腰の引けた攻撃でどうにかなるものではないと継ぐ。
これに加えて高順氏のユニークスキルと通常スキルがかみ合いすぎているのもデカいよな。
戦いとなれば犠牲者が出るのは当たり前なんだが、こういった奇跡的な全員生還も高順氏が指揮をすれば可能となるか。
奇跡が続くって事はないけど、全員が生還したことは本当に喜ばしかった。
それは先生も一緒だったようで、要塞へと戻る道中ずっと褒めちぎっている。
それを耳にする高順氏もまんざらじゃなかった。
「主、異な事をおっしゃいます。それを実行したくてもあの者達を打ち倒す伏兵などこちらにはおりませんよ。悲鳴を上げて全力で逃げているのが全員なのですから」
「ですよね」
それじゃあこのまま逃げ切るって事か。
騎乗レベルならこちらが上だけども逃げるとなればここから相手を撤退させるってのは――、
「頃合いですね」
心底で考えていたことを口に出して質問しようとしたところで
先生が一言。
言葉を発しながら角笛を持つロンゲルさんへと指揮棒を向ければ直ぐさま角笛を吹く。
と、同時に――ドゴォォォォォォォォォオン!!
巨大な爆発音。
背後を見れば、炎が混ざった煙が空へと向かって勢いよく伸びていく。
「これは――」
間違いなく潜入しているハリエットの仕事だな。
角笛での合図はゲッコーさんへと伝えるものだったようだ。
で、ゲッコーさんを経由してハリエットへと指示。
角笛から爆発までが速かった。
角笛と無線が見事にかみ合っている。
でもなんで一々と経由したんだ? 先生の周囲を護衛するS級さんから直接でも良かっただろうに。
思案する中、指示を出したであろうゲッコーさん達が初手で抑え込んでいた方角からこちらへと向かってくる。
爆発を合図に自分たちも下がってきた。
ゲッコーさん達の車両を追っているのは俺たちを追ってくる連中と一緒。
目にしたことのない鋼鉄の乗り物だからか、こっちと比べると警戒から距離を空けての追撃。
徐々にこちら側へと寄ってきて、ゲッコーさん達が最後尾についてくれたとシャルナからの報告。
ここぞとばかりにまたも先生がロンゲルさんへと指揮棒を向けると、小気味よく角笛を吹く。
「煙が鼻の長い乗り物から出てきた」
と、シャルナ。
見れば爆煙とは違った煙。
空へと伸びるのではなく、濃霧を思わせる白い煙が一帯に広がっていく。
ソレが俺たちと追っ手側を遮る。
「白煙殿と呼ばせてもらっているが、今回の白煙は普段とは比べられないほどの量だな」
「あれが受動喫煙に含まれるなら、ショゴスの瘴気の方がまだ可愛げがありそうですけどね」
「確かにな」
カラカラと笑ってくれる高順氏。
意外と受けたようだ。
俺たちと追撃部隊を遮ってくれたのはスモークディスチャージャーってやつかな?
鼻が長いって言っていたからストライカー・ドラグーンが使用したようだな。
派手にぶちまければ相手側は迂回を選択。
毒と判断したのかもしれない。
迂回を選択した時点でこちらの馬には追いつけないけどね。
程なくして追跡は中断されたようで、爆発した箇所へと急ぎ反転したとのこと。
「あの爆発は?」
「段取り通りです」
「狙った場所は?」
「兵糧を保管していた天幕の悉くですね」
「てことは、あの十二万は?」
「後方から物資が届かない限り、拠点に留まることは出来ないでしょうね」
とのこと。
十二万を食わせるってなると後方からの兵糧輸送はかなりの量になりそうだな。
ただでさえ混乱の中で部隊編制をしていたところに強襲を受けて精神はもうボロボロ。
ここに生きる糧である食糧もなくなったとなれば――、
「今の拠点を捨てて下がるしかないだろうな。今回の主目標は達成したと言っていい」
「お疲れ様」
ベルの帰還。
一人でメッサーラの足止めをしてくれた事に感謝。
「必要ないと思うけど、怪我は?」
「ない」
「どうだった。メッサーラの強さは」
「素晴らしい強者だった。我々の動きに不振さを抱いてからは背後の主殿が心配だったのか動きに繊細さを欠いたが、それでも前に残らなければならないという使命感から私と戦ってくれた」
武人として見事な御仁だった。と、ベルが褒めるほどに優秀な存在。
俺たちもそこは理解している。
「手傷を負わせましたか?」
「直ぐに回復できる程度です」
先生の質問に軽く返すベル。
あのメッサーラに手心を加えて軽くあしらうってのはベルにしか出来ない芸当。
ベルが手心を加えた相手に、俺とコクリコは手心を加えられてたんだよな……。
ベルとの差がまったく縮まらねえや……。
そんなベルの活躍を耳にして先生はお見事と満足していた。
手心を加えて強者を残す意味か。
戦力として大きな存在を倒さないってのは、今後の布石として利用するってところかな?
――ベルも見事だけども、何よりもお見事なのは、
「誰一人として死者が出てないってことか」
信じられないんですけど。
七千で十二万の中に飛び込む。
これで死者なしとか。
「十二万を相手にすれば死傷者は多く出ただろう。だが我々が相手にしたのは混乱の中、拙速で展開された前衛とその後の騎獣隊のみだったからな」
実際のところ相手にしたのは自分たちとさほど変わらない数だったと高順氏。
混乱し及び腰の連中を相手にしていれば死者は出ないと言いきって見せた。
王都と要塞の職人、アラムロス窟のドワーフ達が作った武具と馬甲。
腰の引けた攻撃でどうにかなるものではないと継ぐ。
これに加えて高順氏のユニークスキルと通常スキルがかみ合いすぎているのもデカいよな。
戦いとなれば犠牲者が出るのは当たり前なんだが、こういった奇跡的な全員生還も高順氏が指揮をすれば可能となるか。
奇跡が続くって事はないけど、全員が生還したことは本当に喜ばしかった。
それは先生も一緒だったようで、要塞へと戻る道中ずっと褒めちぎっている。
それを耳にする高順氏もまんざらじゃなかった。
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