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PHASE-1811【強力若本】
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「どうなのさトール!」
「頼りにしてるよ。俺たちが苦戦している中でもきっちりとフォローしてくれるから心強いよ。死にかけた時も救われてるし。これから先も頼らせてほしい」
「へ~頼りたいんだ」
「おうよ。頼らせてよ」
「ふんふん。いいですとも」
笹の葉のような長い耳がご機嫌に動いている。
凄く喜んでくれているようでなにより。
「きぃぃぃぃぃぃ! お尻と尻尾の付け根部分がムズムズするぅぅぅぅう!」
「本当に大丈夫なのかミルモン!」
「ここは、ここはなんとも気持ちの悪い場所だよぉぉぉぉぉぉお!」
「「ミルモン静かに!!」」
二人してミルモンに言うも、車座から離れて壁上の通路を転げ回るミルモンは体中が痒いとばかりに全身をカキカキしながら奇声を上げる。
「大丈夫か!? あれか!? 食べ物にアレルギーでもあったのか!?」
「違うよ。そうじゃないよ! そういった問題はないんだよ!」
元気に返事はしてくれるので大丈夫そうだが、
「静かにしてくれないと話ができないでしょ!」
「そうですよ。ミルモンは離席したほうがいいですよ」
なんだ? まだなんか話すことあんのか?
「しんどい、しんどいよ!」
「五月蠅いってばミルモン」
「静かにしなさい! ゆっくりトールと話が出来ないでしょう! こっちはまだ話したりないんですからね」
「はわわ……陽の気持ちが入ってくるよ! ひぎゅぃぃぃぃぃぃぃぃ……」
「本当に大丈夫かミルモン!?」
「ブ……」
「ブ?」
「――ヴラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!」
「「ミルモン五月蠅い!!」」
いつもの愛らしい声からかけ離れた強力若本を彷彿とさせる迫力ある雄叫びが夜空へと轟いたことで、何事か!? と、立哨の兵が集まってきた。
褒め称えたくなるほどに素早い現着だった。
その後も狂いっぷりが凄かったので要介護と判断し、立哨さん達にも迷惑だったので壁上での食事はお開きとなった。
――本当に急にどうしたってんだよ……。
なんか疲れた……。
――。
「おお!」
翌朝の壁上から北側を見る。
整然とした隊列で多くの兵達が要塞とその側に設けられた宿所へと入っていく。
俺たちが不仲兄弟の所へと攻めた時にも心の友とナブル将軍が励んでくれている後方から直ぐに要塞へと派兵されてきたけども、更なる兵が集結してくる光景を目にすればいよいよって感じだな。
「多くの兵や協力者を収容しても余裕のあるこの要塞って凄いよね」
「気分はどうだ?」
「大丈夫」
「なんだったんだあの叫びは」
「いや~。体中どころか心の中までたまらなくむず痒くなってね。あんなのは二度とゴメンだね」
「なにが?」
「兄ちゃんは一人だけを見とけばいいの。オイラは兄ちゃんの忠実な使い魔だからね。余計な繋がりは阻止するよ。まあ保険は必要って時もあるだろうけどね。全ては兄ちゃんのため。でもあのむず痒さだけは本当に勘弁だよ……」
「?」
何を言っているんだミルモン。
本人がすっきりしているならいいですけども。
「さて、先生は王都に帰ったし、ここに戻ってくる間なにをすべきか」
要塞の補強を手伝うってのもいいだろう。黒鍬を中心とした建築特化組が南へと向かったからその分、要塞の働き手が少なくなっているしな。
「兄ちゃんがすることじゃないよね」
「とはいえ、俺には頭を使うようなことは出来ないからな」
王様や先生、各地の頼れる面々が合流したら直ぐに南伐へと移行できるように少しでも手間を省くため、軍編制は高順氏やゲッコーさん、ベルが中心となって行ってくれている。
俺が横から口を出せるような場所じゃない。
となれば驚異の対処だが、この辺で驚異になりそうなモンスターはいないようだし、大型ワームのウォーターサイドなんかは要塞防衛のために利用するって考えもあるようだから討伐対象外。
――うむん。
「以外とやることがないな」
「休めってことだよ」
「そうだな」
ゆっくり出来るのはありがたいが、この世界に来てからずっと動き続けているせいか、何かしらをやっておかないと不安になってくるんだよな。
サラリーマンなんかが定年退職後にやる事がなくなって、心が病んでしまうのに近いのがあるな。
「時間があるならば、ここは鍛練でしょう」
「おうジージー」
飛行能力があるってのは重宝するね。
シャルナだけでなくジージーも空からの監視を担当してくれている。
要塞にとって早期警戒は重要だから大助かりだ。
「普通にグレートヘルム取るんだな」
中々にインパクトのある顔なんだよな。
「取って行動してもここの面々は気にしないようですので」
「いろんな種族が集まっているから顔が虫でも気にしないようだね」
「そういう事ですな」
無遠慮なミルモンの言葉を全く気にすることなく返すジージーの懐の深さよ。
正直トラウマを克服したとはいえ、まだまだジージーのセミの頭部を直視するってのは俺には難しい。
その点ではこの地の面々の受け入れていくスタイルを見習わなければならない。
「新しい技などの習得も今後の戦いには必要となるでしょう」
「そうなんだよな」
「ならば習得してみてはいかがでしょう。南への進軍が近いことから時間が限られ習得までは至らないかもしれませんが、天啓を得るきっかけになるかもしれません」
「なに言ってんのさジージー。兄ちゃんは勇者だよ。この短い期間でも強力な技を習得するさ」
「確かに!」
確かに! じゃないよ。
そんなに簡単にできたら苦労しないんだよ。
こちとら天才とはほど遠いTHE・凡人だぞ。
「頼りにしてるよ。俺たちが苦戦している中でもきっちりとフォローしてくれるから心強いよ。死にかけた時も救われてるし。これから先も頼らせてほしい」
「へ~頼りたいんだ」
「おうよ。頼らせてよ」
「ふんふん。いいですとも」
笹の葉のような長い耳がご機嫌に動いている。
凄く喜んでくれているようでなにより。
「きぃぃぃぃぃぃ! お尻と尻尾の付け根部分がムズムズするぅぅぅぅう!」
「本当に大丈夫なのかミルモン!」
「ここは、ここはなんとも気持ちの悪い場所だよぉぉぉぉぉぉお!」
「「ミルモン静かに!!」」
二人してミルモンに言うも、車座から離れて壁上の通路を転げ回るミルモンは体中が痒いとばかりに全身をカキカキしながら奇声を上げる。
「大丈夫か!? あれか!? 食べ物にアレルギーでもあったのか!?」
「違うよ。そうじゃないよ! そういった問題はないんだよ!」
元気に返事はしてくれるので大丈夫そうだが、
「静かにしてくれないと話ができないでしょ!」
「そうですよ。ミルモンは離席したほうがいいですよ」
なんだ? まだなんか話すことあんのか?
「しんどい、しんどいよ!」
「五月蠅いってばミルモン」
「静かにしなさい! ゆっくりトールと話が出来ないでしょう! こっちはまだ話したりないんですからね」
「はわわ……陽の気持ちが入ってくるよ! ひぎゅぃぃぃぃぃぃぃぃ……」
「本当に大丈夫かミルモン!?」
「ブ……」
「ブ?」
「――ヴラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!」
「「ミルモン五月蠅い!!」」
いつもの愛らしい声からかけ離れた強力若本を彷彿とさせる迫力ある雄叫びが夜空へと轟いたことで、何事か!? と、立哨の兵が集まってきた。
褒め称えたくなるほどに素早い現着だった。
その後も狂いっぷりが凄かったので要介護と判断し、立哨さん達にも迷惑だったので壁上での食事はお開きとなった。
――本当に急にどうしたってんだよ……。
なんか疲れた……。
――。
「おお!」
翌朝の壁上から北側を見る。
整然とした隊列で多くの兵達が要塞とその側に設けられた宿所へと入っていく。
俺たちが不仲兄弟の所へと攻めた時にも心の友とナブル将軍が励んでくれている後方から直ぐに要塞へと派兵されてきたけども、更なる兵が集結してくる光景を目にすればいよいよって感じだな。
「多くの兵や協力者を収容しても余裕のあるこの要塞って凄いよね」
「気分はどうだ?」
「大丈夫」
「なんだったんだあの叫びは」
「いや~。体中どころか心の中までたまらなくむず痒くなってね。あんなのは二度とゴメンだね」
「なにが?」
「兄ちゃんは一人だけを見とけばいいの。オイラは兄ちゃんの忠実な使い魔だからね。余計な繋がりは阻止するよ。まあ保険は必要って時もあるだろうけどね。全ては兄ちゃんのため。でもあのむず痒さだけは本当に勘弁だよ……」
「?」
何を言っているんだミルモン。
本人がすっきりしているならいいですけども。
「さて、先生は王都に帰ったし、ここに戻ってくる間なにをすべきか」
要塞の補強を手伝うってのもいいだろう。黒鍬を中心とした建築特化組が南へと向かったからその分、要塞の働き手が少なくなっているしな。
「兄ちゃんがすることじゃないよね」
「とはいえ、俺には頭を使うようなことは出来ないからな」
王様や先生、各地の頼れる面々が合流したら直ぐに南伐へと移行できるように少しでも手間を省くため、軍編制は高順氏やゲッコーさん、ベルが中心となって行ってくれている。
俺が横から口を出せるような場所じゃない。
となれば驚異の対処だが、この辺で驚異になりそうなモンスターはいないようだし、大型ワームのウォーターサイドなんかは要塞防衛のために利用するって考えもあるようだから討伐対象外。
――うむん。
「以外とやることがないな」
「休めってことだよ」
「そうだな」
ゆっくり出来るのはありがたいが、この世界に来てからずっと動き続けているせいか、何かしらをやっておかないと不安になってくるんだよな。
サラリーマンなんかが定年退職後にやる事がなくなって、心が病んでしまうのに近いのがあるな。
「時間があるならば、ここは鍛練でしょう」
「おうジージー」
飛行能力があるってのは重宝するね。
シャルナだけでなくジージーも空からの監視を担当してくれている。
要塞にとって早期警戒は重要だから大助かりだ。
「普通にグレートヘルム取るんだな」
中々にインパクトのある顔なんだよな。
「取って行動してもここの面々は気にしないようですので」
「いろんな種族が集まっているから顔が虫でも気にしないようだね」
「そういう事ですな」
無遠慮なミルモンの言葉を全く気にすることなく返すジージーの懐の深さよ。
正直トラウマを克服したとはいえ、まだまだジージーのセミの頭部を直視するってのは俺には難しい。
その点ではこの地の面々の受け入れていくスタイルを見習わなければならない。
「新しい技などの習得も今後の戦いには必要となるでしょう」
「そうなんだよな」
「ならば習得してみてはいかがでしょう。南への進軍が近いことから時間が限られ習得までは至らないかもしれませんが、天啓を得るきっかけになるかもしれません」
「なに言ってんのさジージー。兄ちゃんは勇者だよ。この短い期間でも強力な技を習得するさ」
「確かに!」
確かに! じゃないよ。
そんなに簡単にできたら苦労しないんだよ。
こちとら天才とはほど遠いTHE・凡人だぞ。
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