異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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俺、異世界に来たんだってよ

PHASE-07【ファーストコンタクト】

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 炎を纏えば、エメラルドを思わせる瞳でオークを睨み、眉根を寄せる。

「熱い……」
 声が漏れる。炎を纏うベルヴェットから熱が伝わってくる。
 警告で地に向けていた切っ先を振り上げ――――、振り下ろす。

「ぷぎぃぃ!?」
 一振りで真っ先に詰め寄っていた、俺を襲ったオークが激しく炎に包まれ、断末魔を上げる。が、それは一瞬だった。
 瞬時に炭へと姿を変えた。
 手にしていた鉈だけが残った。
 シュゥゥゥ――っと音を立て、柄は焼け落ち、剣身は真っ赤に染まり、煙を上げている。

「今一度警告する、女性を下ろして去れ」
 見たこともない現象だったのか、オーク達は明らかに狼狽していた。
 逡巡しながらも、ゆっくりと女性たちを解放し、後退りを数歩おこない、踵を返して逃げ出していった。

「ふん、人の言葉は理解できるようだな」
 キンッと小気味のいい金属音をたてて、レイピアが鞘に納まり、装飾が素晴らしい護拳が付属した柄から手が離れると同時に、紅蓮の炎も消滅した。

「皆、無事のようだな」
 縛られて、猿轡さるぐつわをされていた女性たちを解放。
 って、いつまでも倒れ込んでいるわけにはいかないな。
 つと立って、俺も女性たちを自由にする。
 別段なにもしなかったけど、俺は皆からお礼を言われた。
 ――俺もお礼を言わないとな。

「こんにちは。そして、ありがとう。助かったよベルヴェット」
 初めての挨拶も含めて、笑顔で感謝を述べたのに、再びレイピアが抜かれた……。
 切っ先は俺の喉元、数センチ手前だ。
 条件反射で諸手を上げて降参のポーズ。

「なぜ私の名を知っている。服装もここの住人とは違うな。何者だ?」
 ちょっとまて! 召喚する能力だろ。俺がマスター的な存在じゃないのかよ!? 
 てっきり絶対服従かと思ったのに。回数限定の絶対命令権タイプなのか?
 上げた手の甲に令呪でもあるのかと、確認のために見てみる。無論そんなものはない。

「俺だよ、俺!」
 詐欺っぽい発言になってしまったが……。

「貴様など知るか」
 ええ……、マジかよ…………。なんて冷めた言い方……。
 どうすりゃいいんだよ。

「「「「うわあぁぁぁぁぁぁぁ」」」」
 ――――なんだ? 今度は何が起こった。
 声の方向に視線を向ければ、逃げ惑う人々。中には鎧を装備した兵士もいる。
 我先に、住人と思われる人達を押し倒してまで逃げてる……。兵士、だせぇ……。

「情けない……。腰に下げている利器は飾りか」
 ベルヴェットが逃げる兵士を炯眼で睨み、逃げている人達とは逆の方向に駆けだしていく。

「はやっ!」
 というか、ぜんぜん俺の指示に従わないんだけど。勝手に動くぞ。
【めいれいさせろ】って選択はないのか?
 こんな所に一人でいるのも怖いから、辺りを見回し、消し炭になったオークが手にしていた鉈――――にはもちろん手を伸ばさず、先ほど落とした棒を手にして、ベルヴェットの後を追いかける。
 ――――城門の近くで佇んでいる赤髪がよく目立つ。

「――はあ、追いついた」

「遅い足だな」

「お前が速いんだよ」

「お前とは生意気な言い様だ。だが、逃げずに挑もうとする心意気は褒めてやる」

「どうも」
 俺が手にした棒切れを目にして、戦う気概があると判断したようで、感心している。
 というか、主従関係が逆転しているような……。
 だがそれ以上に、問題は目の前だ……。
 ――……来なきゃよかったな……。
 開かれた門の外にはオークの群れだ。さっき逃げた奴らが本隊に助けを求めたんだろう。
 ざっと見ただけで百以上はいる。
 オーク達とは別のもいる。体長が五メートルはありそうな、体毛のない灰色の肌をした力士体格の化け物だ。 
 ファンタジー作品でよく見るトロールだと思われる。
 丸太を簡単に加工した棍棒を肩に担いでこちらに向かってくる。あんなもんで殴られたらミンチになってしまう。
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