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俺、異世界に来たんだってよ

PHASE-08【鎧袖一触】

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「でも、この城壁の規模からして、百は少ないような」

「いい着眼点だ。だが、ここの兵士の逃げ惑う無様さから、この城壁を守る兵はあれを止められない程に、寡兵で惰弱なのだろう」
 戦略ゲームも好きでやってるからな。このくらいの事は分かったりする。
 でも、あの規模を防げるほどの力もないとはね……。

「どん詰まりだな。人類にとってこの場所は」

「随分と余裕だな」

「一回、死んでるからな」
 疑問符を浮かべているって表情だな。
 改めて見ると、見入っちゃう美人だな。

「何を惚けている!」

「いてっ!」
 長い足でゲシリと蹴られた……。

「にしても……」
 どうすんだあれ。数の利があるのが分かっているからか、圧力をかけるように、雄叫びをあげつつ、ゆっくりとした歩調で城門に近づいて来る。

「フッ、数に頼り驕っている。驕兵必敗きょうへいひっぱいを経験させてやろう」

「あっつい!」
 いきなり俺の横で炎を纏うなよ! しかもさっきより熱いし。明らかにさっきより上の威力だ。

「灰燼と化せ、人ならざる者たちよ」
 居合いのように剣を振り抜くと、炎が扇状に広がっていき、迫り来るオークとトロールの軍勢を飲み込んでいく――――。
 ――……後に残ったのは影だけ……。
 俯瞰から見たなら、炎は敵隊列の前線から中央部分の辺りまで襲っているだろう。
 右翼、左翼、後方にいたオーク達は、ベルヴェットの一振りに、大いに慌てて混乱している。
 先ほどの住人たちみたいだ。
 一体が背を見せて走り出すと、連鎖するようにその行動を模倣していった。

「たったの一振り……」
 こんなのと、ゲーム内の主人公たちはどうやって戦うんだろうな。完全にオーバーキルのドチートキャラじゃねえか……。
 炎の化身の前では、オーク達の命は羽毛のように軽かった。

「さて、追い打ちでもかけてやろうか――――」
 淡々としてるな。事務的だよ。
 戦いにおいては冷酷な存在なんだろうか? 人格面はゲーム雑誌なんかでは掲載されてないしな。
 これは……、どえらい人物を召喚してしまったかもな…………。

「壊走だな」
 独白する。
 一振りで多数の命が消滅した。発言どおり追撃を実行するのだろうか? 一人で……。

「ふん」
 と、侮蔑し、炎を消すと、レイピアを鞘へと納剣。
 他愛ないから、追撃は馬鹿馬鹿しいと思ったのだろうか?
 オーク達を追う事をせず、俺にゆっくりと歩み寄って来る。

「――で、貴様は何者だ」
 先ほどの続きか……。下手なことを言うと、炎が俺に見舞われるのかな?

「どうした? 答えられないのか。ならば、その手にしている物は何だ?」
 棒じゃないよな。もう片方だよな。
 左手に握っているゲーム機、プレイギア。
 ディスプレイを見れば、ベルヴェット・アポロのパラメーターが表示されてる。
 このゲームにこんな機能あるのか? あったとしても主人公とその仲間だろう。
 ――――ピコン♪
 明らかにメールの音だ。棒を捨てて、両手でプレイギアを持ち、ディスプレイを凝視する。

「おい、何をしている? 質問に答えろ」
 ちょっと待ってと、手を向けて待ってもらう。
 イラッとしたんだろう、「チッ」って、舌打ちが耳朶に届いた。
 でも一応、待ってくれるみたいだ。
 ディスプレイにあるメールマークを食指でタッチ。
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