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PHASE-1813【三分】
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「もういっちょだ。おらっ!」
「頑張れ兄ちゃん」
「おうさ!」
構える。二振りに力を宿す。
で、ここで二振りを近づける。近づければ炎と風が触れ合って激しく炎が逆巻き、マラ・ケニタルの方が制御できなくなって風が周囲へと拡散。連動するように炎を撒き散らし、爆ぜる音と共に俺が尻餅をつくという流れ。
――……さっきからこればっかりだ……。
慣れるまでとはいえ、何かしらのコツを掴まないとどうにもならない。
この世界だと魔法を生み出すのはイメージが大事。
そんな事は百も承知なのでイメージはしているんだけどな。
「上手くいかねえな……」
「兄ちゃんポーション飲む?」
「こんな事で要塞の物資を消費したくないからいいよ。そこまで痛みがあるって訳でもないし」
炎は問題ないとしても風が爆ぜるように散れば、かまいたちに似た現象が発生。
それが原因で頬から顎へと向かって伝う温かい感覚。
「痛み無くして進歩なし。経験無くして前進なし」
「よい心構え」
ジージーの称賛を背に受けて立ち上がり、もう何度目か数えるのも面倒になったことを繰り返す。
ポーカーショットはいつでも発動できる。
ピリアとネイコスという内と外のマナを混ぜ合わせた技が発動できているんだから、ネイコス同士を混ぜ合わせる事はポーカーショットより難易度は低いと思うんだけどな……。
炎と風ってそもそも相性が良いはずだし。
風が吹けば火ってのは大きく広がるんだからさ。
風の力を得ることで火は炎となるもんだ。
「――なるもんだ!」
「なにやら思いついたようで」
「うむ! 何となくね」
「じゃあオイラ達にその閃きを見せておくれよ」
「刮目してくれ!」
――今までのイメージは炎と風を混ぜ合わせることにだけ傾倒していた。
マナの技量が高いならそれでも問題ないんだろうが、俺はペーペーみたいなもん。土台無理ってやつだ。
ならば――、
「風の力で火を炎に昇華させればいいだけのこと!」
左手に持つマラ・ケニタルに纏わせる風は今までどおり。
右手に持つ残火に纏わせるブレイズは――、
「弱火で!」
普段ならゴウゴウと音を立てるブレイズを弱火に調整。
カレーやシチューをコトコトと煮込むような火をイメージ。
猛る炎ではなく、刀身全体をラミネート加工させるようなイメージ。
からの、
「ゆっくりとゆっくりと」
イメージしつつ声にも出す。
残火をマラ・ケニタルへと近づける。
視認できる風の圧へと残火の刀身が触れそうになるところで、
「「おお!」」
背後から上がる声は、成功による喜びからのもの。
残火の刀身から細い糸状の火が伸び、マラ・ケニタルの風に巻き込まれるように流れていく。
視認できる風がほんのりとだがオレンジ系の色へと変わっていき、時間が経過するにつれて色味が増していく。
「いいよ兄ちゃん!」
「おう」
集中しているので短く返事をしつつ残火の火を風へと混ぜ込ませていき――成功!
糸状の火を時間をかけて纏わせ、炎と風が一つとなればゴウゴウとマラ・ケニタルが唸りを上げる。
上げるけども、
「なんか違うな」
俺のイメージは炎の竜巻だった。
だが現実は刀身に纏わせた風に炎が移動しただけ。
猛りはしているが破壊力があるという印象はない。
「ノコノコ」
と、ジージー。
俺の眼前で石床が盛り上がり、クレイマンが出現。
石床なのに粘土の眷属とはこれ如何に。
通常の人型デザインと違い、セミの幼虫が二足歩行しているタイプが一体、俺の前で佇む。
「それに振るってみてください」
「じゃあ有り難く!」
風と炎が混ざり合ったマラ・ケニタルを上段で構えてから、
「ふんすっ!」
大きく弧を描かせながら振り下ろす。
バフンッ! という大きな炸裂音と共にノコノコが派手に爆ぜる。
爆ぜるノコノコの破片には炎が付着。
刀身による斬撃と風の衝撃。その後くっついた炎によるスリップダメージ。
一度で三度のダメージを与える事が出来ている。
出来ているのだが……、
「火龍の時とはやはり違うな」
圧倒的な威力じゃない。
あれはベルの炎だからこそ出来たってことでもあるが、あれに届かなくてももっと派手で、あまりの威力に使用者も吹き飛ぶくらいじゃないと今後の戦いでは使い物にならない。
これならさっきまで尻餅をついていた時のほうが威力があった。
「一歩前進はしたけども、習得まではほど遠いな……」
「なによりも時間をかけすぎだよ」
「ミルモンの言は正しい」
いや本当……。
「集中していたから分からなかったけど、マラ・ケニタルにほっそい火を移すのにどのくらいかかってた?」
「カップラーメンが出来るくらいかな」
「全然ダメじゃん!」
ていうかカップラーメンって概念がミルモンにはあるのね。
モンモンはほぼ未プレイだから分からなかった。
そんなことは置いといて、
「ざっと三分か……」
「そうだね」
「目の前に敵がいようものなら――」
「命を奪っていいよって言ってるようなもんだね。サービスタイムだよ」
「だな。戦隊ヒーローの変身を待ってくれている心優しい怪人たちのような精神性を持っているのなんて普通はいないからな」
前衛で戦う中で三分もその場を動かずに力を集中していたら殺される。
「頑張れ兄ちゃん」
「おうさ!」
構える。二振りに力を宿す。
で、ここで二振りを近づける。近づければ炎と風が触れ合って激しく炎が逆巻き、マラ・ケニタルの方が制御できなくなって風が周囲へと拡散。連動するように炎を撒き散らし、爆ぜる音と共に俺が尻餅をつくという流れ。
――……さっきからこればっかりだ……。
慣れるまでとはいえ、何かしらのコツを掴まないとどうにもならない。
この世界だと魔法を生み出すのはイメージが大事。
そんな事は百も承知なのでイメージはしているんだけどな。
「上手くいかねえな……」
「兄ちゃんポーション飲む?」
「こんな事で要塞の物資を消費したくないからいいよ。そこまで痛みがあるって訳でもないし」
炎は問題ないとしても風が爆ぜるように散れば、かまいたちに似た現象が発生。
それが原因で頬から顎へと向かって伝う温かい感覚。
「痛み無くして進歩なし。経験無くして前進なし」
「よい心構え」
ジージーの称賛を背に受けて立ち上がり、もう何度目か数えるのも面倒になったことを繰り返す。
ポーカーショットはいつでも発動できる。
ピリアとネイコスという内と外のマナを混ぜ合わせた技が発動できているんだから、ネイコス同士を混ぜ合わせる事はポーカーショットより難易度は低いと思うんだけどな……。
炎と風ってそもそも相性が良いはずだし。
風が吹けば火ってのは大きく広がるんだからさ。
風の力を得ることで火は炎となるもんだ。
「――なるもんだ!」
「なにやら思いついたようで」
「うむ! 何となくね」
「じゃあオイラ達にその閃きを見せておくれよ」
「刮目してくれ!」
――今までのイメージは炎と風を混ぜ合わせることにだけ傾倒していた。
マナの技量が高いならそれでも問題ないんだろうが、俺はペーペーみたいなもん。土台無理ってやつだ。
ならば――、
「風の力で火を炎に昇華させればいいだけのこと!」
左手に持つマラ・ケニタルに纏わせる風は今までどおり。
右手に持つ残火に纏わせるブレイズは――、
「弱火で!」
普段ならゴウゴウと音を立てるブレイズを弱火に調整。
カレーやシチューをコトコトと煮込むような火をイメージ。
猛る炎ではなく、刀身全体をラミネート加工させるようなイメージ。
からの、
「ゆっくりとゆっくりと」
イメージしつつ声にも出す。
残火をマラ・ケニタルへと近づける。
視認できる風の圧へと残火の刀身が触れそうになるところで、
「「おお!」」
背後から上がる声は、成功による喜びからのもの。
残火の刀身から細い糸状の火が伸び、マラ・ケニタルの風に巻き込まれるように流れていく。
視認できる風がほんのりとだがオレンジ系の色へと変わっていき、時間が経過するにつれて色味が増していく。
「いいよ兄ちゃん!」
「おう」
集中しているので短く返事をしつつ残火の火を風へと混ぜ込ませていき――成功!
糸状の火を時間をかけて纏わせ、炎と風が一つとなればゴウゴウとマラ・ケニタルが唸りを上げる。
上げるけども、
「なんか違うな」
俺のイメージは炎の竜巻だった。
だが現実は刀身に纏わせた風に炎が移動しただけ。
猛りはしているが破壊力があるという印象はない。
「ノコノコ」
と、ジージー。
俺の眼前で石床が盛り上がり、クレイマンが出現。
石床なのに粘土の眷属とはこれ如何に。
通常の人型デザインと違い、セミの幼虫が二足歩行しているタイプが一体、俺の前で佇む。
「それに振るってみてください」
「じゃあ有り難く!」
風と炎が混ざり合ったマラ・ケニタルを上段で構えてから、
「ふんすっ!」
大きく弧を描かせながら振り下ろす。
バフンッ! という大きな炸裂音と共にノコノコが派手に爆ぜる。
爆ぜるノコノコの破片には炎が付着。
刀身による斬撃と風の衝撃。その後くっついた炎によるスリップダメージ。
一度で三度のダメージを与える事が出来ている。
出来ているのだが……、
「火龍の時とはやはり違うな」
圧倒的な威力じゃない。
あれはベルの炎だからこそ出来たってことでもあるが、あれに届かなくてももっと派手で、あまりの威力に使用者も吹き飛ぶくらいじゃないと今後の戦いでは使い物にならない。
これならさっきまで尻餅をついていた時のほうが威力があった。
「一歩前進はしたけども、習得まではほど遠いな……」
「なによりも時間をかけすぎだよ」
「ミルモンの言は正しい」
いや本当……。
「集中していたから分からなかったけど、マラ・ケニタルにほっそい火を移すのにどのくらいかかってた?」
「カップラーメンが出来るくらいかな」
「全然ダメじゃん!」
ていうかカップラーメンって概念がミルモンにはあるのね。
モンモンはほぼ未プレイだから分からなかった。
そんなことは置いといて、
「ざっと三分か……」
「そうだね」
「目の前に敵がいようものなら――」
「命を奪っていいよって言ってるようなもんだね。サービスタイムだよ」
「だな。戦隊ヒーローの変身を待ってくれている心優しい怪人たちのような精神性を持っているのなんて普通はいないからな」
前衛で戦う中で三分もその場を動かずに力を集中していたら殺される。
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