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PHASE-1814【綿飴を作るイメージ】
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三分も集中しないといけないこともそうなんだが……、
「……一度で三度の攻撃効果とは言え……」
「忌憚のない意見を」
「では――トール殿が普段、使用している攻撃の方が威力があるかと」
「だよね! 俺自身も思っていたけども、他者からも同意見をもらえると現状と向き合えるってもんだよ。ミルモンが言ってくれたけど時間もかかりすぎだしな。これなら力を練った時の烈火。刀技ならマラ・ケニタルのリーパー系のほうが圧倒的に上だよね」
「ええ。その通りかと」
時間がかかりすぎなのと、その時間に見合っていない低威力ってのが大問題すぎる。
パーティーと行動しているなら使用できるってことも脳裏に過ぎったけど、前衛が三分も時間をかけて烈火よりも火力が低い技を発動しようものなら、敵よりも先にコクリコにボコられちまう。
技としての片鱗を垣間見たばかりだから現状だと仕方がないんだけども。
「トライアル&エラーだな」
ひたすらに繰り返していくしかない。繰り返して発動速度を上げていく。
で、同時に火力も上げる。
最初が三分ならそれを縮めていって、最終的には秒単位にまで縮めたい。
――。
「うっし……」
練兵場に入ってかれこれ三時間。
「ダメダメだな……」
継いで情けない言葉を漏らす。
「些かですが、風に炎を纏わせるのが速くはなっているかと」
「でも縮めたのは一分くらいだからね。火力も変わってないみたいだし」
「ミルモンの言うとおりだな」
難しい……。
「でも三時間で一分縮めたからね。あと三時間やれば一分で使用可能になるよ」
と、単純計算でフォローしてくれる。
だがしかし、あと三時間やって一分縮める事が本当に可能なら次の三時間では即時発動まで漕ぎ着ける。
単純すぎるけどもそれをモチベーションにしてやっていくしかない。
――……とまあ、そうそう簡単に時間を縮めることなど出来るわけもなく。
二分の壁が高すぎる……。
大の字で天井を見ながらの小休憩。
端っから一日で習得できるなんて思ってはいない。
だからこそ修行をこなすしかない。
でも効率化も重要。この地が前線であるから鍛練に時間を割くにしても要領よくしないとね。
くそ! こんなことなら先生にはこの地に留まってほしかったな。
ユニークスキルである【王佐の才】があれば習得までスムーズだったかもしれない。
効果は先生が留まっている場所にいる者達の鍛練なんかが30パーセント向上ってやつだったよな。
ここにいてくれれば能力の向上が通常時よりも早くなるんだけどな。
ツッカーヴァッテに乗って帰ったからな~。
――ふむん。
ツッカーヴァッテか。
「ツッカーヴァッテ」
「どうしたのさ?」
「ツッカーヴァッテだな」
「本当にどうしたの?」
そうだよ!
「ツッカーヴァッテやんけ! ベル命名のツッカーヴァッテ!」
「ビックリしたよ!? 急に起き上がるんだもん」
大の字で寝転んでいた俺の直上でパタパタと羽を動かしていたミルモンは、矢庭に立ち上がる俺に対して緊急回避をしてみせる。
「ミルモン君。ツッカーヴァッテの意味って知ってるかい?」
「姉ちゃんが命名してたよね。確か――綿飴とかの意味だったような」
「白くてふわふわだったからそう命名したんだよな」
「そうだったよね」
「ちなみにミルモン君は綿飴は好きかね?」
「人並みにはね」
「作り方は知っているかな?」
「食べたことはあるけど分からないね」
うむ。モンモンの中にはカップラーメンだけでなく綿菓子の概念もあるんだな。
綿飴、綿菓子――手に入れるなら屋台が主なんだが、
「自分で作れたりする場所もあるんだよな」
中学の頃、剣道の春季大会の打ち上げで利用していた焼肉屋という名のアミューズメントパークで綿飴を作ってたもんだ。
割り箸でグルグルと糸状になった砂糖を絡め取っていくことでふわふわの綿飴が出来上がる。
「何を隠そう俺は作るのが上手くてな。小学生が列を作ってたくらいだ。次々と作って手渡す俺は正に職人だったね!」
「それは自分たちで作りたくて並んでたんじゃないの? それを邪魔してたんじゃ?」
「あ……、あの時の子供たちの作り笑いはそういう事だったのか……。小さな頃からあの作り笑い。将来、上司の顔色を窺いながら上手く立ち回って出世できることだろうな」
「何の話? 綿飴は!?」
「おう、そうだった! つまりはあの時に作っていた綿飴をイメージすればいいんだよ」
「イメージね~」
「まあ見ていてくれ」
――瞳を閉じて集中。
左手に握るマラ・ケニタルにイメージを加えて風を纏わせる。
残火の刀身にラミネート加工したような火を纏わせてから左側へと近づければ――、
「これは!」
背後から感心の声が上がる。
目を閉じて集中している俺の代わりにジージーが見てくれる。
声音からして俺のイメージは問題なさそう。
やおら目を開けば、
「よし! よっしゃ!」
マラ・ケニタルに纏った風は刀身を中心に回転させたもの。
回転する風が糸状に伸びる火を最初の頃よりも速く巻き取っていく。
風が徐々に淡いオレンジ色へと変わっていき、時間の経過と共に濃い色へと変化する速度が先ほどまでとは段違い。
「どうよ! まだまだ改良の余地があるけども、初手の三分、そして停滞していた二分の壁を越えて圧倒的に速くなっているだろう!」
「だね! 一分くらいになってると思うよ!」
ミルモンも興奮してくれる。
自己ベストを大幅に更新してやったぜ!
ありがとう! 焼肉のアミューズメントパーク!
ありがとう! 作り笑いで俺の綿飴を受け取ってくれた小学生たち!
「……一度で三度の攻撃効果とは言え……」
「忌憚のない意見を」
「では――トール殿が普段、使用している攻撃の方が威力があるかと」
「だよね! 俺自身も思っていたけども、他者からも同意見をもらえると現状と向き合えるってもんだよ。ミルモンが言ってくれたけど時間もかかりすぎだしな。これなら力を練った時の烈火。刀技ならマラ・ケニタルのリーパー系のほうが圧倒的に上だよね」
「ええ。その通りかと」
時間がかかりすぎなのと、その時間に見合っていない低威力ってのが大問題すぎる。
パーティーと行動しているなら使用できるってことも脳裏に過ぎったけど、前衛が三分も時間をかけて烈火よりも火力が低い技を発動しようものなら、敵よりも先にコクリコにボコられちまう。
技としての片鱗を垣間見たばかりだから現状だと仕方がないんだけども。
「トライアル&エラーだな」
ひたすらに繰り返していくしかない。繰り返して発動速度を上げていく。
で、同時に火力も上げる。
最初が三分ならそれを縮めていって、最終的には秒単位にまで縮めたい。
――。
「うっし……」
練兵場に入ってかれこれ三時間。
「ダメダメだな……」
継いで情けない言葉を漏らす。
「些かですが、風に炎を纏わせるのが速くはなっているかと」
「でも縮めたのは一分くらいだからね。火力も変わってないみたいだし」
「ミルモンの言うとおりだな」
難しい……。
「でも三時間で一分縮めたからね。あと三時間やれば一分で使用可能になるよ」
と、単純計算でフォローしてくれる。
だがしかし、あと三時間やって一分縮める事が本当に可能なら次の三時間では即時発動まで漕ぎ着ける。
単純すぎるけどもそれをモチベーションにしてやっていくしかない。
――……とまあ、そうそう簡単に時間を縮めることなど出来るわけもなく。
二分の壁が高すぎる……。
大の字で天井を見ながらの小休憩。
端っから一日で習得できるなんて思ってはいない。
だからこそ修行をこなすしかない。
でも効率化も重要。この地が前線であるから鍛練に時間を割くにしても要領よくしないとね。
くそ! こんなことなら先生にはこの地に留まってほしかったな。
ユニークスキルである【王佐の才】があれば習得までスムーズだったかもしれない。
効果は先生が留まっている場所にいる者達の鍛練なんかが30パーセント向上ってやつだったよな。
ここにいてくれれば能力の向上が通常時よりも早くなるんだけどな。
ツッカーヴァッテに乗って帰ったからな~。
――ふむん。
ツッカーヴァッテか。
「ツッカーヴァッテ」
「どうしたのさ?」
「ツッカーヴァッテだな」
「本当にどうしたの?」
そうだよ!
「ツッカーヴァッテやんけ! ベル命名のツッカーヴァッテ!」
「ビックリしたよ!? 急に起き上がるんだもん」
大の字で寝転んでいた俺の直上でパタパタと羽を動かしていたミルモンは、矢庭に立ち上がる俺に対して緊急回避をしてみせる。
「ミルモン君。ツッカーヴァッテの意味って知ってるかい?」
「姉ちゃんが命名してたよね。確か――綿飴とかの意味だったような」
「白くてふわふわだったからそう命名したんだよな」
「そうだったよね」
「ちなみにミルモン君は綿飴は好きかね?」
「人並みにはね」
「作り方は知っているかな?」
「食べたことはあるけど分からないね」
うむ。モンモンの中にはカップラーメンだけでなく綿菓子の概念もあるんだな。
綿飴、綿菓子――手に入れるなら屋台が主なんだが、
「自分で作れたりする場所もあるんだよな」
中学の頃、剣道の春季大会の打ち上げで利用していた焼肉屋という名のアミューズメントパークで綿飴を作ってたもんだ。
割り箸でグルグルと糸状になった砂糖を絡め取っていくことでふわふわの綿飴が出来上がる。
「何を隠そう俺は作るのが上手くてな。小学生が列を作ってたくらいだ。次々と作って手渡す俺は正に職人だったね!」
「それは自分たちで作りたくて並んでたんじゃないの? それを邪魔してたんじゃ?」
「あ……、あの時の子供たちの作り笑いはそういう事だったのか……。小さな頃からあの作り笑い。将来、上司の顔色を窺いながら上手く立ち回って出世できることだろうな」
「何の話? 綿飴は!?」
「おう、そうだった! つまりはあの時に作っていた綿飴をイメージすればいいんだよ」
「イメージね~」
「まあ見ていてくれ」
――瞳を閉じて集中。
左手に握るマラ・ケニタルにイメージを加えて風を纏わせる。
残火の刀身にラミネート加工したような火を纏わせてから左側へと近づければ――、
「これは!」
背後から感心の声が上がる。
目を閉じて集中している俺の代わりにジージーが見てくれる。
声音からして俺のイメージは問題なさそう。
やおら目を開けば、
「よし! よっしゃ!」
マラ・ケニタルに纏った風は刀身を中心に回転させたもの。
回転する風が糸状に伸びる火を最初の頃よりも速く巻き取っていく。
風が徐々に淡いオレンジ色へと変わっていき、時間の経過と共に濃い色へと変化する速度が先ほどまでとは段違い。
「どうよ! まだまだ改良の余地があるけども、初手の三分、そして停滞していた二分の壁を越えて圧倒的に速くなっているだろう!」
「だね! 一分くらいになってると思うよ!」
ミルモンも興奮してくれる。
自己ベストを大幅に更新してやったぜ!
ありがとう! 焼肉のアミューズメントパーク!
ありがとう! 作り笑いで俺の綿飴を受け取ってくれた小学生たち!
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